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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之弐拾 混乱

 狐雨を降らすことに成功したものの、その直後、状況に急激な変化が起きた。

 舞花ちゃんの能力を見た影響か、場所を限定したからか、降った雨が限定した空間に留まり、水球を形作りながら底から溜まり始めている。

『何というか、主様は期待や予想を裏切る達人じゃの』

 頭の上から届いたリンリン様の感想が降ってきた。

 私としても想定していなかったので、そう言われても仕方ないかなと苦笑してしまう。

 その間も水を注がれた水風船の如く溜まり続けた狐雨は、球体の頂点まで達しつつあった。

「あれ……これ、一杯になったらどうなるんだろう?」

『ま、待て、主様』

「ひょっとして、爆発したりして?」

 そう言った直後、リンリン様の『ぬしさまーーーーっ!』という大声が響き、私が()()()()()()()狐雨の水球が爆発する。

 水球が破裂したことで、横から、もの凄い勢いで水を浴びせかけられて、私とリンリン様は全身の至る所から水が滴る濡れ鼠とかしていた。

 私の身体の乗る車椅子や雪子学校長達は、距離があったお陰で被害を被らなかったようで、安堵の息を吐き出す。

 だが、被害者として道連れになってしまったリンリン様は、私の頭の上で右前足を何度も振り下ろして『ぬしさまめ!』と不満を吐き出していた。

 直後、頭に重大な問題が閃く。

 頭に手をやって抱き上げ、私の目の前に降ろすと、急に目が合ったことに驚いたのか、リンリン様が『な、なんじゃ?』と聞いてきた。

「えっと、リンリン様って……生活防水?」

 真剣な私の質問に、リンリン様は動きを止める。

 閃いた嫌な予測のように、リンリン様は故障してしまったんじゃ無いかと心配に思っている私のおでこに、大きく振りかぶった右前足が振り下ろされた。

『今更じゃが、ほれ、この通り、無事じゃ!』

 ポコポコとおどこに放たれる右前足には、水が滴っているせいで、腕の動きに合わせて私の顔に細かな水滴が飛んでくる。

「あの……り、リンリン様……水が、微妙に鬱陶しいのですが……」

 私の不服申し立てにもリンリン様は右足アタックを止めてはくれなかった。

『主様は、自らの意識が能力に影響を与えることを忘れすぎなのじゃ! 何で濡れたか、よぉく考えるのじゃ!』

 リンリン様にそう言われて、私は「ああ」と理解した。

「なるほど、弾けると思ったから弾けたんなら、水球自体の体積が増えて容量が増えるとか、もう一個新たな水球に溜まると考えれば、そのようになったということですね!」

 もの凄くウキウキした気持ちで、正解か否かを確認したというのに、リンリン様から返ってきた反応は、微妙な表情と『そうじゃな』というどこか投げやりな言葉で、少し面白くない。

 私はここで内に秘めるのは良くないと考えて「正解ならもう少し明るく肯定してくれてもいいと思うんですけど!」と抗議してみた。


『主様……わらわは濡れ鼠にされているのに『よくやったの!』と褒めると思うてか!?』

 至極もっともな返しに、私は素直に「こんなことになるとは思わなかったので……」と前置きをしてから「でも、濡れ鼠にしてゴメンなさい」と抱き上げたままのリンリン様の顔より下になるように、頭を下げた。

 私が頭を下げたままにしていると、リンリン様から『こうなることには思いが至ってなかったのじゃ空、仕方が無いの。能力の発展の方向性まで思いつけるようになったのは、主様の成長の表れじゃの』という優しい言葉と共に、ゆっくりと優しい手つきの右前足が頭に触れる。

 それを合図に顔を上げた私と目が合ったところで、リンリン様はスッと顔を逸らした。

 嫌われたのかもと思った瞬間、また、リンリン様の右前足が頭に触れる。

 今度は勢いが籠もっていて鈍い痛みが走った。

「リンリン様、痛いんですけど?」

 私の抗議に対してリンリン様は『つまり、主様は未だ実態を保っておる。もう少し能力を消費せねばならん……ならば、この濡れた身体を乾かしてくれぬかの?』と切り返してくる。

 神格姿だからか、体温が失われているわけではない上に、湿った衣服の張り付く感じもしなかったので、それほど気にはならなかったけど、私の衣装もリンリン様も濡れてしまったままだ。

 確かにいつまでも濡れたままでいるのは良くない。

 特にリンリン様は精密機械なのだから、生活防水といえど濡れたままが良いわけが無いと考えた私は提示されたばかりの課題に挑むことにした。

 リンリン様から出された課題は私の能力を使って、身体を乾かす。

 すぐに思い浮かぶのは狐火だけど、森の中で火を使うのは危険と判断して、魔除けの鈴のエネルギー消費の対象から外していた。

 でも、ここで考えを改めて見る。

 水球が弾けたのは、私が口にした……イメージしたからなので、私が狐火が燃え映らない炎……熱の塊みたいに考えたらいけるんじゃ無いかと思い至った。

 そのまま、実行してみようと思いたったところで、私は自分自身に急ブレーキを掛ける。

「あの、リンリン様、どうでしょうか?」

 自分の考えが伝わっている前提で、そうお伺いを立ててみると、リンリン様は『行動に出る前に相談できるようになっただけ、大幅な成長じゃの』と評価してくれた。

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