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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之拾参 自問

「えっと、感覚というか、イメージだけなので、断言……は、できないんだけど、この四季の箸を使えば、那美ちゃんの友達が閉じ込められている神世界に入るゲートを作れると思います」

 目の前に並べた四膳の四季の箸を指し示しながら、そう説明すると、皆がほぼ一斉に頷いた。

 その後で、志緒ちゃんが「他にわかることはある?」と問うてくる。

 報告を終えたつもりでいたので、私は一瞬戸惑ってしまった。

 それでも、志緒ちゃんの問い掛けに答えなきゃと思い目を閉じて自分の中を探ってみる。

 頭の中で『使い方』『条件』『効果』と単語を思い浮かべて、必要な情報を絞り込んでいこうと試みた。

 すると、それが上手く作用したらしく、重要な情報が浮び上がる。

「志緒ちゃん! この箸は……桃源郷……白の鳥居の世界で使うみたいです」

 私の報告に対して、志緒ちゃんは「なるほどね」と一端受け止めてから「座標……どの位置で使えば良いか、わかるかな?」と新たな問いを口にした。

 新たにすべきことを示された私は「待ってください、探ってみます!」と返して、再び意識を内面に向ける。

 早速、座標の決め方を意識してみたモノの、私の中に確たるイメージが浮かばなかったからか、内側から浮かび上がってくるモノはなかった。

 とはいえ、この方法の模索は、救出作戦の肝でもあるので、一度ダメだったくらいで引き下がるわけにはいかない。

 どうすれば必要な情報を得られるだろうか考えてみることにしたところで、グニッと鼻が押されて、思わず「ふぇっ!」と間抜けな声を上げてしまった。


「一人でダメだったら、皆に相談……でしょう?」

 鼻を突かれながら那美ちゃんにお叱りを受けた私は「そうでした」と素直に謝った。

 その上で、具体的なイメージが浮かばなかったことを伝えて、どうしたら良いか敏夫ちゃんに相談してみる。

 すると、志緒ちゃんは「単純な質問を投げてみるのはどうかな?」と即座に案を出してくれた。

 もっとも、理解の遅い私ではピンとこず「単純な質問?」と首を傾げてしまう。

 明らかに那美ちゃんが残念そうな目を私に向けて来たけど、ここではわからなかったんだから仕方ないと開き直ることにして、居直った。

 すると、私の態度に那美ちゃんは溜め息を吐き出し、舞花ちゃんが「はいか、いいえみたいな感じで聞いたら良いって事だと思うな」とかみ砕いて教えてくれる。

「なるほど」

 舞花ちゃんに大きく頷いた後で、志緒ちゃんに「それで、なんて聞けばいいかな?」と甘えてしまった。

 那美ちゃんの目が鋭く突き刺さってきたけども『そもそもこうしなさいって教えてくれたのは誰だったかな?』と心の中で思うことで押し切る。

 その間にも質問内容を考えてくれた志緒ちゃんが「神世界を繋いでいる『黒境』の座標と重ねた方がいいのか、どうか……かな?」と首を傾げながら一案を披露してくれた。

 私は素直に「ありがとう、試してみるね」と志緒ちゃんにお礼を言ってから、自分の内なるモノに問うてみる。

 すると、流石と言うべきか、志緒ちゃんの質問に対してすぐに『しないほうがいい』という答えが浮かんできた。


「重ねない方が良いって事だね……リンちゃん、1メートル、2メートル、3メートルって感じで、離す距離を1メートル刻みで、問題が起きなそうな距離を探ってくれるかな?」

「わかった」

 わかりやすく質問の内容も指定してくれた志緒ちゃんに感謝しながら、言われたとおりに少しずつゲートを開く位置を探ってみた。

 結果、二メートル離すのが良いことがわかる。

 改めてそれを伝えると、志緒ちゃんは「早速、白い鳥居の神世界に行こう!」と立ち上がってブルーシートに寝そべった。

 更に志緒ちゃんは「シャー君、場所を割り出すから、私がアチラに入ったらすぐに『魔除けの鈴』を発動して!」と指示を出して目を閉じる。

 シャー君は『了解シャー!』と快諾して、その場でしばらく待機してからふよふよと白い鳥居を潜っていった。

 恐らく、志緒ちゃんの身体から抜け出た『球魂』を追い掛けて行ったんだと思う。

 それを肯定するように、モニターにはシャー君の目線の光景として、神格姿の姿になった志緒ちゃんと桃源郷の風景が映し出された。

 モニターを確認した舞花ちゃんは「じゃあ、お姉ちゃん、舞花達も行こう」と呼びかけ、結花ちゃんが「そうね」と同意する。

 声を掛ける間もなく志緒ちゃんの横に横たわった二人はそのまま目を閉じた。

 二人の動きを見て、那美ちゃんが「それじゃあ、私も」と後に続こうとしたけど、私はその手を掴んで引き留める。

「何、リンちゃん?」

 止められたことが不満だったのか、こちらを見た那美ちゃんの表情に怒りの色が見えた。

 とはいえ、ここで怯むわけにはいかないので「皆で行くのは、問題じゃ、ないかな?」と言ってみる。

 対して那美ちゃんは「私が、生……友達を助けに行くのは自然だと思うんだけど?」と睨まれてしまった。

 確かに那美ちゃんの目的は生徒を助け出すことだけど、だからって暴走してしまうかもしれない那美ちゃんを生かせるのはダメだと思った私は勇気を振り絞る。

「まずは、情報! 情報収集して、作戦を立てるのが、救出の成功率を上げると思う!」

 私はどうにか絞り出した那美ちゃんを引き留める理由を大きめな声で訴えた。

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