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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之玖 新たな

 モニターに映し出されたのは、工事現場のような光景だった。

 ヘルメット姿、作業服の数人の大人の男性が、地下に向かう階段に立って、恐らく防水布で作られたと思われるパイプを囲んでいる。

 これまでの記憶をつなぎ合わせて考えると、恐らく生コン、効果前のコンクリートを流しているんだと思われた。

 つまり、私は自分の中で出た結論をすぐに声に出す。

「これって『黒境』の部屋までコンクリートを流し込んでるってことですよね?」

 それは『地下の『黒境』に触れられない』と同義であると理解した上で、私は那美ちゃんの反応を窺った。

 やはりというか、予想通りというか、私が辿り着けた推測だけに、那美ちゃんも予測していたんだろう。

 表情は硬いものの、動揺や困惑の色は感じられなかった。


「リンちゃんの言うとおりだと思うよ。普通の人間が入り込めないようにしているし、あちらからも出てこられないようにしているって『オリジン』も考えてる」

 志緒ちゃんの言葉を聞いて、私は入口を封じられているのに、那美ちゃんはどうするつもりだったんだろうと思って再び様子を見てみた。

 タイミング良く那美ちゃんもこちらに視線を動かしたところで、バッチリと目線が交わる。

 直後盛大な溜め息を吐き出されてしまった。

 内心で『なんで!?』と思う私を、残念な子を見るような生暖かい間差しで見た後で、那美ちゃんは視線を志緒ちゃんに向け直して「しーちゃん。コンクリートで固められているだけなら『球魂』で通り抜けられるよね?」と質問する。

 私は『そういうことか!』と球魂が壁を抜けられるという事実を思い出して、心の中で手を打った。

 その後で、那美ちゃんが封印される事実を知って、『黒境』を潜るために、『球魂』を出せる子供の身体に戻ることを選んだんじゃ無いかと閃く。

 実際、那美ちゃんの行動力と思いの強さなら、あり得る……というより、それしか無いと思った。


「この写真を見て貰えるかな」

 志緒ちゃんが少し間を置いてから新たな写真をモニターに映し出した。

 作業現場である地下に向かう作業品の人たちが、何本も束ねた金属の棒らしものを運んでいる。

「ぱっと見は鉄筋だけど、ちょっと違うんだよ」

 志緒ちゃんがそういった直後、一人の作業員の人が持っている鉄筋の束がズームされた。

 それを目にした那美ちゃんが「やっぱりね」と低い声で呟く。

 どういうことだろうと思って那美ちゃんを見たところで、花ちゃんが「この金属の棒は結界紋という紋様が刻まれていますね」と口にした。

 そんな花ちゃんの発言に続いて、那美ちゃんが「この金属の棒を四隅に立てると結界ができあがってね……球魂や穢……肉体を持たない存在が立ち入れなくさせることが出来るの」とどこか投げやりな口調で言う。

 言い終えた那美ちゃんはゆっくりと目を閉じて、渋い顔をしたまま黙り込んでしまった。


「んーと、じゃあ、なっちゃんが通ろうとしていた『黒境』は使えないってこと?」

 ストレートな舞花ちゃんの問い掛けに、那美ちゃんはどこか悲しそうな顔で「そうなるわ」と頷いた。

 対して、舞花ちゃんは「じゃあ、別の入口を作る必要があるね、リンちゃん」と私に話を振ってくる。

「え、あ、そうですね」

 思わず頷いてしまった私に代わって花ちゃんが「こちらから『黒境』の繋ぐ神世界にゲートを通すのは……」と口にした。

 続く言葉は『できない』か、『無理』かはわからないけど否定的な言葉に違いない。

 舞花ちゃんもそれは感じ取ったようで、少し悩んでから「それじゃあ」と斜め上を見上げて考えを巡らせてから、改めて私を見た。

「リンちゃんにお箸をパワーアップして貰えば良いんじゃないかな?」

 首を傾げながら言う舞花ちゃんに対して、私は何も考えずに「なるほど」と返す。

 直後、那美ちゃんがかなりボリュームを抑えた声で「ちょっと、アンタ、なに簡単に同意してるのよ」と顔を近づけて睨んできた。

 私は那美ちゃんに迫られながら、観察した表情や態度はチグハグに見える。

 怒っているのに、どこか期待するような何かがあった。

 那美ちゃんの複雑な心理に応えられるように、私は「ちょっと試してみるので、少し時間をください」と那美ちゃんに伝える。

「何を……」

 那美ちゃんはそこまで言ったところで、私がしようとしていることを読み取ってくれたようで、ゆっくりと近づけていた顔を離した。

 遠ざかっていく那美ちゃんの顔を確認してから、私はゆっくりと目を閉じて意識を集中する。

 世界を繋ぐ四季の箸は量産したお陰で、カードさえあればすぐにイメージして作り替えられるレベルになっていた。

 ただ、あくまで四季の箸は白い鳥居から続く桃源郷と現実世界を結ぶ道具なので、今のままでは使えないだろうという漠然とした感覚がある。

 那美ちゃんの生徒が取り残された神世界へと繋がる扉を作り出せるように、四季の箸に新たな能力を付与する必要があった。

 試してみるほか手が無いので、私は取り出したカードを手に、四季の箸への変化をイメージする。

 脳内でスムーズに形を変え、具現化を始めた四季の箸に、私は新たに『黒境』が結ぶ神世界への扉を開く機能を追加するイメージを送り込んだ。

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