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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之捌 緩和

 私の問いに対しする『オリジン』からの返事は『しばらくお待ちください』だった。

 入口を塞いでるだけで、その下には空間が広がっていると思い込みたい私は、ドローンのカメラに意識を集中する。

 ドローンは周りを確認するように回転しながら周囲の光景ヲ映し出していった。

 一周し終わるかどうかのところで、ドローンは回転した位置から移動を開始する。

 ややあって、ドローンのカメラの先に、赤いライトを点灯させている建物に設置された監視カメラが映し出された。

 弧を描いて回り込むような軌道を描きつつ、起動中と思われる監視カメラに接近したドローンはそこで動きを止める。

『ネットワークに鑑賞します』

 モニターから流れてきた『オリジン』からと思われる報告を聞いた私は、説明が欲しくて、志緒ちゃんに視線を向けた。

 それは私だけでなかったらしく、皆も志緒ちゃんを見詰めている。

 志緒ちゃんは、自分に視線が集まったことに苦笑してから「埋めた地下階段を監視しているカメラのコードから、繋がっている先にアクセスして、アーカイブにある動画を探ってるみたい」と説明してくれた。

 私は思わず「あのドローンって、そんなことも出来るんですか!?」と声を上げてしまう。

 そんな私に向かって、那美ちゃんから「なんで、アンタが驚いてるのよ!?」とツッコミが飛んできた。

「いや、だって、その、具現化はしたけど、機能を全部把握しているわけじゃ無くてですね」

 強く問われてシドロモドロになってしまった私を見て那美ちゃんは大きな溜め息を吐き出す。

 その後で「凛花ちゃんを見てると、嫌でも実感するわ。一人では気付きもしないことが、皆の協力を得れば、出来てしまうかもしれないって……」と那美ちゃんはぐったりした表情で呟いた。

 那美ちゃんの呟きを聞いて、嬉しくなって締まった私は「理解してくれたんですね!? 一人で抱え込んでも限界があるって!」と声を弾ませる。

 対して那美ちゃんは、私をジト目で見て、私の鼻を指で何度も突きながら「は・ん・め・ん・きょ・う・し……ってやつね」と言い放った。

 更に那美ちゃんは「もしくは『人の振り見て我が振り直せ』かしら」と続ける。

 明らかに私のだめっぷりを見て学び取ったという那美ちゃんに対して、残念ながら反論できない私は、せめてもの抵抗で頬を膨らませるしかなかった。

「ぶふぉっ」

 膨らませた頬を、那美ちゃんが右手で鷲掴みにしたせいで、口から溜めていた空気が押し出されて変な音が出る。

「教えになっているんだから、良いでしょ。センセ」

 目を細めながら言い放つ那美ちゃんからは、合流した時に纏っていた暗い影の気配が消えていて、ホッとした私は思わず笑ってしまうった。

「アンタ、何、笑ってるの!? 気持ち悪いわね」

 ジト目を向けてくる那美ちゃんに、私は「絶対、お友達を助けようね!」と切り返す。

 そんな私の発言に、溜め息を撒き散らしながら那美ちゃんは「……アンタ、マイちゃんみたいになってきて……幼女化が進んだんじゃ無いの?」と言い放った。

 直後、舞花ちゃんが「なに!? 舞花のお話?」と割り込んでくる。

「ま、マイちゃん!? り、リンちゃんがマイちゃんに似てきたんじゃ無いかなって言ってただけよ」

 いつもの間延びしたしゃべり方ではないものの、私に向けての話し方とはまるで違う柔らかな口ぶりで、那美ちゃんは舞花ちゃんに応えた。

 使い分けが面白かったのもあるけど、那美ちゃんが私を気を遣わない相手として認識してくれてるんだなと思い、思わず笑ってしまう。

「何、笑ってんのよ!」

 頬を僅かに赤らめて私に聞こえる程度の声で怒りをぶつけてくる那美ちゃんに、私は笑いを止められなくなってしまった。

「なになに? もしかして、リンちゃん、舞花に似てて嬉しかった?」

 好奇心いっぱいの顔をこちらに向けて尋ねてくる舞花ちゃんに、私は「そうだね」と頷く。

「舞花ちゃんと似てて嬉しいって思ったよ」

 そう答えながら、嬉しいって思ってしまうと『幼女化』という煽りが無意味になってしまうなぁと余計なことを考えたところで、那美ちゃんからの余り力の入っていない右ストレートが、私の左脇に突き刺さった。


「私と『オリジン』が一生懸命調べてるのに、三人で遊んでズルイよ!」

 志緒ちゃんのお叱りに、私、那美ちゃん、舞花ちゃんの三人は「「「ごめんなさい」」」と、素直に謝罪した。

 地下へ続く階段が封じられていた事実を前に、ほんの少しのことで崩れてしまいそうな那美ちゃんの気持ちを和らげられたらという思いもあったけど、燥ぎすぎてしまったという実感もある。

 いくら那美ちゃんに気持ちを立て直してほしかったとはいえ、調査を任せている時にやり過ぎてしまった。

 不満を口にする志緒ちゃんと叱られる私たちという構図は、東雲先輩の「それで、結果はどうだったんだ?」という問い掛けで崩れる。

 志緒ちゃんは東雲先輩の質問で、表情と態度を切り替えると「階段跡を記録しているカメラの映像は、各種ネットワークから切り離されたサーバールームに送られていて、記録されていた……お陰で、状況はかなり正確に掴めたと思う」と言ってから、皆の視線を誘導するようにモニターに顔を向けた。

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