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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之漆 黒境へ

「というわけで、皆も協力してくれる……よね?」

 振り返りながら、ちょっとドキドキしながら、背後に立つ皆に確認してみた。

 すぐに言葉が返ってこないので、勝手に話を進めてしまったことで、怒らせてしまったかなと背中に冷たいモノを感じる。

 大丈夫なのか、そうじゃないのか、判断がつかない製で生きた心地がしなかった私を救ってくれたのは東雲先輩の「今更だな」という苦笑交じりの言葉だった。

 それに続いた舞花ちゃんは「救出作戦だもんね。次はなっちゃんのお友達を救出するよってことでしょ?」と何でも無いことのように言う。

「じゃあ、とりあえず、なっちゃんが目指してた『黒境』の状況確認しないとだね」

 志緒ちゃんは既に次の手を打つための情報収集に入る姿勢を見せた。

 四季の箸を手にした結花ちゃんは、志緒ちゃんに「ねえ、しーちゃん。状況確認するなら、ドローンに行って貰うのが良いんじゃ無い?」と先を見越した提案をしてみせる。

 誰一人異を唱えず、次の準備に入った事に、那美ちゃんは「こんな簡単に協力されたら、一人暴走してた私が馬鹿見たいじゃ無い」と呟いた。

 私は大きく頷いて「うん。バカだね!」と言い切る。

「アンタ……」

 何か言いたそうな那美ちゃんに「私も、一人で抱え込んでいたので、最近気付いたばかりのバカ仲間ですよ」と、ここ数時間のことを思い消しながら言ってみた。

 那美ちゃんにはそれだけで、私の考えたこと、思ったことが伝わったのだろう。

「……私もアンタも、皆を見くびってたってことね」

 そう言って那美ちゃんは改めて溜め息を吐き出した。


 白い鳥居を抜けて一端学校に戻ってきた私たちは、モニター前に集合していた。

 林田先生の方は、雪子学校長と月子先生が合流して確保してくれたので、ドローンを送り出すために開いたゲートで、入れ替わりにリンリン様がこちらに戻ってきている。

「なっちゃん」

 花ちゃんに声を掛けられた那美ちゃんは、バツの悪そうな顔で「……はい」と返事をした。

 そんな那美ちゃんに対して、花ちゃんは落ち着いた口ぶりで「雪子お姉ちゃんから許可を得ました。お説教は後できっちりしますけど、今は全力でお友達を助けに行きましょう」と声を掛ける。

 内心ではいろいろと思うところがあるのであろう那美ちゃんは「よろしくお願いします」と深く頭を下げた。

 その後で、那美ちゃんは私を含めた皆を見渡しながら「皆も……お願いします」と改めて頭を下げる。

「もちろん! 舞花、全力で頑張るよ!」

 最初に返した舞花ちゃんに続いて、東雲先輩も「学校は違うが『種』と戦う仲間だからな……助けられるなら全力を尽くす」と胸を叩いて見せた。

 心を読める那美ちゃんだけど、やはりちゃんと言葉にされると、強く心に響くモノがあるんだろうなと思う。

「マイちゃん、まーちゃん……」

 上手く隠しているけど、那美ちゃんの目は僅かに潤んでいた。

 そんな那美ちゃんに、志緒ちゃんは揶揄うような表情を浮かべて「なっちゃんが水くさいのは知ってたけど、リンちゃんと変わらないからね」と言い出す。

「待って、リンちゃんよりは、マシだわ!」

「ちょっ!」

 どさくさに紛れてとんでもないことを言い出した那美ちゃんに、私は「私の方がマシだから! 訂正して」と要求した。

 顔を付き合わせることになった私と那美ちゃんに、結花ちゃんが「どっちもどっちなくらいそっくりよ、お二人とも」と言い放つ。

 同時に振り返った私と那美ちゃんを前に、結花ちゃんは「今もユイを見るのにタイミングバッチリ一緒だし、大人な振る舞いしてるクセに、皆に相談しないで行動して行き詰まっちゃうし、ね」とにこやかに微笑んだ。

 結花ちゃんの指摘に、思わず顔を見合わせた私と那美ちゃんは、同時に肩を落とすことになった。


「皆、ドローンが目的地付近に着いたよ」

 志緒ちゃんからの報告に、皆がほぼ同時にモニターに視線を向けた。

 そして、言葉を失う。

 私たちが目にしたのは、元は鉄筋の校舎だとわかる作りの廃墟だった。

 言葉を失った私たちの中で、唯一、那美ちゃんだけは()()()()()()()()、真剣な表情でドローンを誘導し始める。

「そう! そのまま通路の奥を右に曲がって! そこにある地下に続く階段の先に、この学校の『黒境』があるわ!」

 那美ちゃんの言葉に従って、校舎の中を進むドローンが通路の奥に対し、右に曲がった。

 が、そこでドローンのカメラが捉えたのは、真っ平らなコンクリートの床で、階段の姿はどこにも無い。

 それがどういうことなのか、その場に崩れ落ちながら那美ちゃんが発した言葉で、私たちは理解した。

「……『黒境』ごと……埋められてた……なんて……」

 震えるような掠れた声で呟いた那美ちゃんは、最早身体に力が入らないようで、慌ててしゃがみ込んだ花ちゃんが、抱きしめるようにしてその身体を支える。

 私はせめてもの可能性を信じて、頭に浮かんだママを言葉にして問い掛けた。

「ね、ねえ『オリジン』……こ、このコンクリートは、入口を塞いでる……だけ……だよね?」

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