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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之肆 再接触

 結花ちゃんが舞花ちゃんに変わって四季の箸で『ゲート』の作成を担当することになり、新たな開放位置に志緒ちゃんと共に移動を終えた。

 既に時間が無いのを全員が認識しているのもあって、新たなゲート開放地点に移動を終えるなり、結花ちゃんは指示に従って四季の箸を空中に突き刺し始める。

 その後方には、既に突撃態勢で、舞花ちゃん、東雲先輩が陣取り、追加で投入されるドローンときらりもすぐそばに待機していた。

 更に、現場で那美ちゃんたちを追跡しているリンリン様に代わって、ステラが『魔除けの鈴』の発動準備状態で控えている。

 モニターの設置されている白い鳥居の前に残るのは私と花ちゃん、そして連絡係を兼ねるぴかりだ。

 作戦は東雲先輩の提案したまま、ともかく足を止めさせて、那美ちゃんごと林田先生を確保する。

 かなりの力業だけど、詳細を詰める余裕は精神的にも時間的にもなく、仕方が無いとしか言い様はなかった。

 ただ、不思議なことに、細かく手順を決めていないのに、今回の方が上手くいきそうな予感がある。

 一回目の失敗で、意識が強まったのもあると思うけど、直感に優れた皆だからこそ、出たとこ勝負の方が変な意識がない分、成功を掴み取れる気がしていた。


『最後、いくわ!』

 そう言い切った結花ちゃんは、皆からの反応を待たずに最後の一膳を空中に突き刺した。

 同時に横へと飛びのくと、箸同士の間に光る直線が出現し、遅れて枠取られた黒い長方形が現れる。

 ゲートが開かれたのを、現場上空のシャー君の視界カメラが捉えると同時に、舞花ちゃんがゲートを潜って飛び出てくるのが映った。

 迷い無く身体を回転させた水色のバレリーナ姿の舞花ちゃんは、すぐさま空中に無数の水球を出現させる。

 出現した水球は、すぐさま同じ方向に飛んで行った。

生い茂った木々が邪魔で飛来する先は上手く映っていないけど、恐らくそこに那美ちゃんと林田先生がいるのだろう。

 その予測を肯定したのは、」新たにモニター映像に加わったドローンのカメラ映像だった。

 巧みに木々の間を抜けながら距離を取って、ドローンは広角映像で。飛来する水球とその先で身構える林田先生の姿を捉える。

 一回目、東雲先輩の横を擦り抜けた時のように、グッと体勢を落としつつ那美ちゃんを抱き寄せた林田先生が、地面を蹴って駆けだした。

 自分に向かって駆け出した林田先生に、一瞬怯みながらも舞花ちゃんは新たな水球を放つ。

 それすらも左右のステップで躱す林田先生は、舞花ちゃんにあと一歩で届くかと思われる距離まで近づくと、そこで直角に軌道を変えて一気に距離を取ろうとした。

 だが、見抜いていたのか、そこには東雲先輩が待ち構えている。

 刀の柄は握っていないものの、明らかに抜刀術とわかる姿勢で待機していた東雲先輩は重心を下げて回転しながら右手を林田先生の向けて繰り出した。

 林田先生は、これまでの軽いステップから、もの凄く力が込めたとわかる力強い踏み込みで、地面に足を突き立てて、無理矢理その場で移動の勢いを殺し切る。

 急制動を駆けた林田先生の目前を東雲先輩の腕が通り抜けた。

 回避成功を確信したのであろう林田先生は、次の瞬間には、後ろに向けて飛び去ろうと上半身を前掲させながら足を屈伸させる。

 飛び退くのに十分なエネルギーを溜めたのであろう林田先生の足が一気に伸ばされ、そのからだが後方へと遠ざかった。

 また逃げられる。

 そう直感した食後、後ろに飛んだ林田先生と那美ちゃんの身体が、巨大なジェル状の物体に飲み込まれた。

『ちょっと、寒いけど、ごめんね!!』

 舞花ちゃんの声が響くと共に、林田先生と那美ちゃんを包み込んでいたジェル状の物体が凍結し始める。

 想定外の状況に林田先生は抜け出そうともがくが、その腕の中に抱きかかえられた那美ちゃんはピクリとも動かなかった。

 脱出を試みる林田先生だったが、必死の抵抗はは全てジェル状の塊に吸収されていく。

 その間にも身体を覆い尽くすジェルの塊は氷塊へと姿を変えてしまった。

 那美ちゃんと林田先生が呼吸出来るように、顔は露出しているけど、それ以外は氷の中に封じ込められている。

 二人を窒息させない配慮が、ジェル状の物体が舞花ちゃんのコントロール下にあることを物語っていた。


 舞花ちゃんが『えい!』と口にすると、なんと氷塊の中から、ポンと那美ちゃんの身体だけが飛び出してきた。

 しかも、全身は氷で固められていて、モニター越しでも動けそうに無いのがわかる。

 東雲先輩はその那美ちゃんの氷漬けを抱き上げると、問答無用でゲートの中へと放り込んだ。

 滑りながらゲートをくぐり抜けた那美ちゃんの身体を志緒ちゃんが受け止めて、結花ちゃんがその氷を解凍し始める。

 一方、現場の舞花ちゃんはエネルギーの限界を迎えたようで、その姿が一気に球魂へと変化してしまった。

 すぐにゲートを潜った舞花ちゃんに代わり、東雲先輩が『間もなくゲートが閉じる、身体と魂が離れるのは危険だ。一端オレ達についてきてくれ』と林田先生に告げる。

 東雲先輩の行動は那美ちゃんが憑依しているという前提に則ったモノだけど、その推測が正しかったと示すように、林田先生の身体から球魂が一つ現れ出た。

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