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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之壱 カウントダウン

「作戦開始は13分後、一分ごとに『オリジン』が残り時間を報告してくれます。開始、五分前からは10秒ごと、一分前からは秒読みに変わります」

 この場の責任者である花ちゃんから皆に、作戦時間とカウントについての説明が入り、皆が了解して頷いた。

「現場指揮は、パワーアップしたネコさんスーツモードのしー……志緒くんが担当します」

 普段の愛称で呼びかけた花ちゃんは、途中で言い換える。

 作戦なので、雪子学校長風の言い方に切り替えたみたいだ。

「私がサポートするので、マイちゃんは指示通りの場所に箸を刺してゲートを開いてください」

「わ、わかりました」

 志緒ちゃんの指示に、少し緊張した様子で舞花ちゃんは敬礼する。

 舞花ちゃんが緊張しているせいか、少し身体の力が抜けた私は、その様子を微笑ましく見詰めることが出来た。

「ユイちゃんは、花ちゃんとリンちゃんの護衛をお願いします」

 結花ちゃんは心配なのだろう。

 チラリと妹である舞花ちゃんを見てから、少し躊躇いがちに「了解よ」と返した。

 そんな結花ちゃんに、東雲先輩は「舞花も那美も俺が護る……あ、林田先生も」と言いながら前に出る。

「流石に担任の先生をついでにするのは、まーちゃんでも問題ありじゃないかしら?」

 澄まし顔で指摘する結花ちゃんが、東雲先輩が護るといったタイミングで小さく笑みを浮かべたのを私は見逃さなかった。

 やっぱり、皆からの信頼は絶大なんだなと、東雲先輩のことなのに、私はとても誇らしい気持ちになる。

 私が勝手に良い気持ちになっている間に、志緒ちゃんは東雲先輩に「まーちゃんは、ゲートが開いたタイミングでリンリン様と一緒に切り込んで、なっちゃんを確保、林田先生を無力化してください」と指示を出した。

「任せてくれ」

 大きく頷く東雲先輩はやっぱり凜々しいなと思ってしまう。

 私も見習わねばと気持ちを新たにしたところで、志緒ちゃんから「リンちゃん」と名前を呼ばれた。

「はい!」

 ちゃんと話を聞いていたことを示すように、きっちりと返事をする。

 志緒ちゃんは、何故か噴き出しそうな顔を見せてから、咳払いで真面目な顔を取り戻してから「『オリジン』が蜂型ドローンで林田先生に薬を投与したら、すぐに動きを止めるよう指示を出してください。マイクは後で渡します」と言いながら手にしたハンドマイクをくるりと回転させた。

 私の配置は、この学校のまま、変更は無い。

 洗脳のために、出向く必要があると訴えたのだけど、声だけで催眠相手に命令を下せることを既に証明されてしまった。

 証明の際の実験台は東雲先輩で、私の声をドローン経由で聞かせた結果、問題なく東雲先輩に念願の片手腕立て伏せやら、片手倒立やらをさせることに成功している。

 東雲先輩的には身体に感覚が残っているらしくて感謝されたのは良いのd咲けど、結果として、私自身が現場に出向く必要が無いとされた。

 一応切り札扱いなのと、不用意に林田先生に接触した場合、何が起こるかわからないという花ちゃん経由で月子先生に指摘されてしまってもいるので、ここで現場に挑むことを強く訴えるわけにもいかず、甘んじて受け入れるしかない。

 現場に行きたい気持ちを抑え、私は「頑張ります」と志緒ちゃんに返した。


 状況がどう変化するかわからないこともあって、白い鳥居のそばには三台の大型モニターが設置された。

 校舎からはもの凄く頑丈そうなケーブルが繋げられている。

 ヴァイアの皆やドローン、各自の持つタブレット類は、常時『オリジン』を含めた学校のネットワークと無線通信をしているので、作戦遂行中に干渉し合って通信が途絶えないように、チャンネルを開けるためにも、映像データは有線でモニターに送ることになったのだ。

 私もそんなに詳しいわけじゃ無いけど、多くの人が同時に送信するとネットワークが混雑して、パフォーマンスが低下してしまう。

 ここでは映像データもやりとりしており、混雑する可能性が高くなっているため、戦闘などの緊急事態に通信の喪失が起こらないようにという保険的な意味もあった。

 三台のモニターにはそれぞれ桃源郷で突入組と一緒にいるシャー君、ドローン、私達待機組と一緒のステラの視界映像が表示され、全ての画面の右下には突入時間までのカウントが表示されている。

 数字が減っていくのを見ると、自然と緊張が強まってきた。


 結花ちゃんはパワーアップした姿に変身してからこちらに戻ってくるので、作戦開始直前までは桃源郷で待機していた。

 この場には未だ私と花ちゃんしか居ない。

 そんな状況もあってか緊張感に包まれた私は、いつの間にか「大丈夫……でしょうか……」と呟いていた。

 私の弱気な言葉に、花ちゃんからの答えは無い。

 その事が私の不安をより強めた直後、背中に猛烈な痛みが走った。

「いっ」

 声が出た直後、息が詰まる。

 それが背中を叩かれたからだと察したタイミングで、花ちゃんは私に「『大人』(わたしたち)が信じなくてどうするんですか? 成功以外無いと自信を持っていないと、突発的な事態に対処出来ませんよ」と気持ちを上げる言葉をくれた。

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