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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾捌章 反抗乃刻
716/814

拾捌之弐拾 完了

「お腹と腕が痛い」

 右手でお腹を押さえ、日照り手で右おの二の腕をさすりながら、志緒ちゃんは不満そうな顔を浮かべていた。

 普段志緒ちゃんがやらないことで、洗脳状態を確認するつもりだったんだけど、東雲先輩が自分のトレーニングというか、感覚の把握に使えるんじゃ無いかと考えてテンションを上げてしまったことで、多少当初の目的から脱線した気がしなくも無い。

 ただ、東雲先輩も満足してくれたし、ちゃんと、本人が望まないこともさせられたので、志緒ちゃんには少し申し訳ないけど、実験は成功ということで結論づけた。

「志緒ちゃんの協力で、蜂型ドローンと洗脳役の効果はバッチリだって確認出来ました。それに、洗脳解除も、私が『洗脳状態を解除』と言うだけで解除出来るのも確認出来たし、成果は上々ですよ!」

 つい弾んでしまった私の報告に対して、志緒ちゃんは長い溜め息を吐き出す。

 続けて志緒ちゃんから放たれた言葉は「じゃあ、まあ、作戦会議を再開しましょう」と言う、どこか呆れの混じった様に感じられるものだった。


 作戦を改めて話し合った結果、志緒ちゃんが「じゃあ、問答無用作戦でいこう」と会議を締めた。

 名称の理由は単純で、那美ちゃんを待ち伏せして、問答無用でゲートに連れ込む。

 そのタイミングで球魂が抜けるであろう那美ちゃんの身体も押し込んで、これも桃源郷に運び込むというどこまでも力業な作戦だ。

 何故、こうなったかと言えば、ゲートの開放時間の問題が大きい。

 現場での時間が無いのなら、説得や交渉は桃源郷ですれば良いという暴論に基づいた作戦だけど、実際効率的でもあるので反対の声は上がらなかった。

 一方、洗脳されてるか、協力者なのかわからない林田先生は、洗脳状態にしてその場で放置される。

 正直なところ、志緒ちゃんの身体では有効だった蜂型ドローンの薬が効かない可能性もあるし、林田先生自体が神格姿を獲得しているかわからないという点も、新たな問題を引き起こす可能性を考えて、放置となった原因だ。

 ある程度詳細を知っている私や花ちゃん、そして『オリジン』も林田先生の正体に関する情報を皆に公開していないので、未知数な存在となってしまっている。

 結果、不確定な要素が強いのでその場に放置して、後から追いつく雪子学校長と月子先生に回収を依頼する方向で話が進んだ。

 放置は少し可愛そうかなと思ったところで、私は自分が林田先生を自分の分身ではなく、本当に学校の先生のような親しい他人のように思っていることに気が付く。

 私の意識が今の体に引き摺られているのか、それとも、林田先生を自分とは別の人間と思い込みたいからか、理由はわからないけど、今、自分の中で心配なのは那美ちゃんの方だった。

 とはいえ、一応私の半身でもある林田先生を、森の中に放置というわけにもいかないので、次善の策は決めてある。

 リンリン様とシャー君のコンビによる監視と護衛体制を取ることになった。

 魔除けのすずを使えるリンリン様と飛行能力で周囲警戒が出来るシャー君の組み合わせなら『穢』を相手にしても対処しきれるという『オリジン』の予測もある。

 更に状況が悪化するようであれば、新たにゲートを開いて、不確定要素が多いけど、林田先生を緊急避難させるということに決まった。


「それじゃあ、四季の箸の量産ですね」

 私はカードの束を手に、作戦指揮を執る志緒ちゃんに確認した。

 ここからは作戦に必要なモノを整えていく。

 志緒ちゃんは私に頷きで応えた後で「可能なら蜂型ドローンも4機くらい追加で用意して貰えるかな?」と尋ねてきた。

 予備を用意するのは当然なので「わかりました、作った後で『オリジン』に動かせるか試して貰いますね」と返す。

「お願い」

 志緒ちゃんはそう言うと、校舎の方向を振り返った。

 そちらには花ちゃんと東雲先輩、舞花ちゃん、結花ちゃんが向かっている。

 車医師をもう一台、身体を横たえるためのブルーシートの追加を取りに行ってくれていた。

 桃源郷に持ち込んで、那美ちゃんを寝かしたり運んだりするのに使うのだけど、可能性として、林田先生も回収するので、その分の追加もある。

 カメラ付きのドローやリンリン様達ヴァイアは全員メンテナンスというか、自己診断に入っていた。

 機能停止をして、自身の機能の不具合や損傷を確認するモードが搭載されており、特殊能力である『魔除けの鈴』の反動などが無いかを確かめている。

 各々が本番に向けて、準備をしている光景を見ながら、私は那美ちゃん救出作戦に向けて、気持ちを高めた。

 その結果、自分でも驚く程の速度で、四季の箸と蜂型ドローンが完成していく。

 自分の気持ちのあり方が能力にダイレクトに反映されるのを実感する。

 校舎から必要なモノを運んできたところで、花ちゃんは雪子学校長へ連絡を取り始めた。

 皆で考案した立てた作戦を伝えつつ、雪子学校長と交渉を進めてくれた花ちゃんが、皆に見えるように親指を立てる。

 いよいよその時が来たのだと理解した私たちはお互いにお互いの顔を見合ってから、同時に頷き合った。

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