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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾捌章 反抗乃刻
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拾捌之拾伍 林田先生

「林田先生がリンちゃんから持っていったのは、想像した物を創造する能力と神世界のエネルギーを動力源に変える力……かな?」

 私がどのように分離させられたのか、自分自身でしっかり把握出来ているわけじゃ無いけど、志緒ちゃんの上げた二つは確かに奪われてしまったと確信があった。

 実際、その能力を使えないので、過去に具現化したモノをエネルギーを変換して、別の形に作り直す形で代用している。

 私は頷きながら「たぶん……もっとあるかもしれないですけど……」と返した。

 志緒ちゃんは、ジッと私を見てから「……リンちゃん自身はどの能力を奪われたか、わからないのね?」と聞いてくる。

 改めて頷きながら「使えなくなっている能力は、持っていかれてしまったと思うんですけど……」と返すと、志緒ちゃんは「じゃあ、ちょっと厄介かも」と呟いた。

「それは……」

 どういうことかと聞く前に、志緒ちゃんは「リンちゃんが使えない能力は持って行かれた可能性が高いけど、使える能力も持って行かれてる可能性があるってことだよ」と言う。

 確かに、奪われた能力がわからないなら、使えなくなった能力以外も対象になっていてもおかしくはないと思った。

 そのタイミングで頭に閃いた疑問を私は素直に言葉にしてみる。

「あれ、でも、持って行かれたと思っている能力も奪われていない可能性もあるんじゃ無いですか?」

「可能性はあると思う……けど、まあ、リンちゃんに出来たことは全部出来ると思って対応策を考える方が安全だよ」

 志緒ちゃんに正論で言い切られた私はその通りだなと思って「確かに」と大きく頷いた。


「なっちゃんがリンちゃんの能力を使える林田先生を操っている場合は、なっちゃんを林田先生から引き離せば、林田先生は我に返る……のかな?」

 皺ができる程眉を寄せた志緒ちゃんは唸りながら首を傾げた。

「我に返るっていうのは、林田先生が洗脳されていた場合ってことですよね?」

 花ちゃんからの問いに頷きつつ、志緒ちゃんは「そう。なっちゃんが魔法で操ってる場合の話で、林田先生が自分から協力している場合は、我にも返ったりしないよねー」と苦笑する。

 その後で溜め息交じりに「それどころか、敵に回るかも」と言い加えた。

 花ちゃんも困り顔で「皆と戦いになる可能性があるということですね」と言う。

 志緒ちゃんは私に視線を向けながら「リンちゃんよりは引き出しが少なそうだけど……」と呟いて「うーーーん」と唸りだしてしまった。


 しばらく唸ってた志緒ちゃんが、不意に私に視線を向けた。

 質問が来るんだなと身構える私に、志緒ちゃんは「林田先生って、操られてたと思う?」と思ったよりもストレートな問いがやってくる。

 正直なところ、私は林田京一を分離されたことが、あまりにも衝撃だった事もあって、。明確には覚えていなかった。

 なので、余計な考えは交えずに「正直、林田先生の様子までは見ていない……というよりは、頭に残っていません」と答える。

 私の答えはある程度予想出来ていたのか、志緒ちゃんは「だよねぇ」と苦笑した。

 ポリポリと頭を掻きながら「流石にお風呂に防犯カメラは付けられていないから、カメラ映像ってワケにもいかないしね」と志緒ちゃんは溜め息を吐き出す。

 ただ私は、この学校なら、お風呂場にカメラが設置されていてもおかしくないと思い、こっそりと花ちゃんに視線を向けた。

 花ちゃんは私の視線に気付いて苦笑を浮かべてから「一応、お風呂場の入口、お手洗いの入口にはカメラが設置されていますし、それぞれの外周にもカメラが設置されていますけど、お手洗いの個室、シャワー室、脱衣場、浴場には付けていませんよ」と言う。

 ただ、そこで終われば良かったのだけど、花ちゃんの言葉は続いてしまった。

「……まあ、私の知る限りでは……ですけど……」


 花ちゃんのダメ押しの一言に、私も志緒ちゃんも、すぐに発言をすることが出来なかった。

 非情に嫌な沈黙を挟んだ後、一つ小さく咳払いをした花ちゃんは「凛花ちゃんが能力を奪われた瞬間を捉えた映像は存在しない……そうですよね、オリジン?」と声を掛ける。

 すると、タブレットから『肯定します』というオリジンの返事が聞こえてきた。

 花ちゃんはある程度権限を持っている人の筈なので、オリジンの答えが本当かどうかはわからないものの、少なくとも能力が那美ちゃんたちに奪われた瞬間を映像で確認することは出来ないのは間違いない。

 状況を客観的に見ることが出来れば対策も絞れたかもしれないけど、それは無理ということだ。

 私はそのことで難易度が上がったなと思って、どうしようという気持ちで一杯になって、思考が止まってしまう。

 一方で志緒ちゃんは「一番厄介なのは、林田先生が自分でなっちゃんに協力してて、その上で那美ちゃんを連れ戻そうとするのを邪魔してくる場合かな」と最悪のケースを想定していた。

 志緒ちゃんは「そうなると……」と呟いて一人頷きを繰り返す。

 その後で、何かを閃いた様子で晴れやかな表情を見せた志緒ちゃんはとんでもないことを口走った。

「なっちゃんが林田先生を洗脳しているかはわからないけど……こっちは林田先生を確実に洗脳しよう」

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