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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第参章 下地構築
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参之弐拾陸 お着替え

 ロッカーを開けると、中には金属製の棒が横に渡されていて、木製のハンガーが四つ、フックが二つ掛かっていた。

 フックに体操着袋の紐を掛けてから、ハンガーを一本取りだして、脱いだばかりのブレザーを掛けていく。

 私の横についた舞花さんが、私の動きを真似てブレザーを掛けている姿は、まるで妹が出来たようで、とても可愛く思えてしまった。

 ブレザーをロッカーに収めた私は、くるりと向き直って、ロッカーの反対側に置かれた机に、フックから外した体操着袋を置いて、紐を緩めて中身を取り出す。

 上着をいったん置いておいて、スカートを履くに当たって花子さんから指導されたとおりに、膝丈のハーフパンツを手に、片足ずつ脚を通した。

「あれ、リンちゃんスカート履いたまま、ハーパン履くんだ!」

 結花さんにそう言われて、私の真似をしている舞花さん以外が普通にスカートを脱いでいることに気が付く。

 確かにスカートを履いたまま、ハーフパンツを履くと、スカートの裾を巻き込みそうになったりして、意外に難しく、皆が脱いでしまうのも頷けた。

 私は花子さんの指導もあって、無意識にスカートを履いたままだったけど、皆の不思議そうな顔を見るに何か納得出来る答えを示す必要があるかも知れない。

 そう思った私は、自分の……小学生時代の京一としての実体験を交えつつ、当時の女子の態度などを思い出して、それらしいことを言うことにした。

「えっと、前に通っていた学校は、男女同じ教室で着替えていたから……」

 私がそこまで口にしたタイミングで、既にブレザーにスカートを脱いで、ブラウスのボタンを外す那美さんが「男子がいたなら、そうなりますね」と頷きながら、平然と着替えを進めていく。

 舞花さんは私に習って悪戦苦闘しながら、ハーフパンツに挟まれたスカートの裾を引っ張り出しながら「まーちゃんが居ても別に気にならないよ?」とよたよたしながら首を傾げた。

 私は倒れそうな舞花さんを支えつつ「まーちゃん?」と口にしてから、東雲先輩の名前が『雅人』だったのを思い出す。

「東雲先輩のことですか?」

「あ、うん。まーちゃんは、雅人だから」

 推測は間違ってなかったと確認したところで、結花さんが「まーちゃんは、あっちでは女の子になるから、どっちかっていうと女子だよね?」と言い放った。

 その評価は東雲先輩にとっては嬉しくないだろうなと思いつつ、反応に困っていると、既にハーフパンツと半袖の上着を着て、着替え終わりつつある志緒さんが「リンちゃん、やっぱり普通の男子って怖い?」と上目遣いで質問してきた。

 正直なところ、男子目線で言うと、女子の方が怖いというイメージがあるけど、きっとお互い様なんだと思う。

 なので、玉虫色な答えを返すことにした。

「男子でも女子でも乱暴な子はいるし、男子だから女子だから怖いって言うより、怖い子が怖いって感じかな?」

「それって、怖くないってこと?」

 流石に濁しすぎたのか、舞花さんは首を傾げてしまう。

 男子が怖くないと断言するのも良くないかと考えた私は、実際の状況を想像しながら、私なりの答えを伝えることにした。

「ん~~。わからないってことかも……この学校は人数が少ないから東雲先輩とも普通にお話しするけど、私が通っていた小学校だと、それなりにクラスに人数が居て、男子は男子、女子は女子で集まるから、あんまり男子と女子で話したりってしなかったかなー」

「そっかー。確かにお話ししなかったらわからないかも……」

 スカートのホックを外して脱いだ私を真似ながら、舞花さんはそう言って頷く。

 元々の質問を口にした志緒さんは「相手による……から、決めつけちゃダメって事だね」と私を見ながら深く頷いた。

「うん! 皆、別の人だからね。先入観は一番ダメだと思う。怖い男子もいるかも知れないけど、優しい男子だっているしね」

 実際、那美さんを見誤っていたところなので、自分への戒めの意味を込めて私はそう返す。

 舞花さんがこちらに合わせてスカートを脱いだのを確認した私は、ヒダが皺にならないように気をつけつつ、半分に畳んでから新たなハンガーに掛けた。

 私に続いて、同じようにハンガーを手にした舞花さんを手伝っていると、那美さんがとんでもない爆弾発言を放り込んでくる。

「でも、リンちゃんは可愛いから、視線が気になってたんじゃ無いの?」

 振り返ってみた那美さんの目には心配の色が見えるので、単純に気を遣ってくれているようだ。

 となると、変な返しは出来ないので、おかしくない範囲で答える。

「あ、一応同じ教室で着替えてはいたけど、教室の真ん中にカーテンが引けるようになってて、それが仕切りになってて、男女別だったから、大丈夫でしたよ?」

 思いっきり早口になってしまったけど、伝えるべき事は伝えたと、私は自己満足した。

 けど、那美さんからの返しは、想定外だったために、私は言葉を失って固まってしまう。

「あら、リンちゃんなら、同じ女子でも注目するんじゃ無い?」

 どう答えたらいいのか、まったくプランが出てこない私は、パチパチと瞬きを繰り返すしか無かった。

 そんな私に対して、那美さんは悪戯っぽく笑うと「花子さんとか」と具体的な名前を挙げる。

 私としてはその名指しされた人物の視線には思い当たる節があるので「あははは」と乾いた笑いを漏らしてしまった。

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