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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾捌章 反抗乃刻
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拾捌之拾 乙女の祈り

「わ、わたしは、い、いいです、よ」

 自分でもわかるほど震えた声で返事をする自分が恥ずかしくて仕方なかった。

 一方で、東雲先輩が望んでくれたことが嬉しくてたまらない。

 東雲先輩はどう返してくれるのだろうという思いを込めて、私はタブレットに視線を向けた。

『そ、それなら、よ、予約させて、くれ』

 カメラから視線をそらしながら頬を掻く仕草がとても愛らしく思えて、私は無意識に「はい!」と答える。

 東雲先輩の反応の余韻で、口元が緩んでニヤニヤしてしまいそうになった私は、慌てて口を押えた。

 そのタイミングで、花ちゃんが「ずるいですよ、凛花ちゃん! 平等に私にも予約させてください!」と口にしながら舞花ちゃんの反対から抱き着いてくる。

「は、花ちゃん!?」

 驚く私に花ちゃんは「私の予約を受け付けてくれないなら、離ししませんよ!」と言って、私に回した腕に力を込めてきた。

「すでに抱き着いているじゃないですか!」

 思わずツッコミを入れた私に対して、花ちゃんは「それはそれ、予約は予約に決まっているじゃないですか!」と無茶苦茶を言い出す。

 ギュウギュウと抱きしめるハナちゃんの手に力が籠るのを感ながら、私はこれ以上拒否してもいい方向には転がらないと諦めた。

「わかりました。予約します」

「ほんとですか!? さすが凛花ちゃん! 那美ちゃん救出作戦頑張りますね!!」

 とても嬉しそうに言う花ちゃんを見ていると、この程度のことで喜んでくれるならいくらでもしてあげたいと思ってしまう。

 けど、それが伝わったのであろうリンリン様が『主様! 己の安売りは良くないのじゃ! 褒美とはここぞの時に与えてこそ、家臣はついてくるというものじゃぞ』と言い出した。

 言いたいことはわからなくはないけど、さすがに問題のある表現だったので、私は即座に「家臣じゃないからいいの!」と返す。

 すると、舞花ちゃんが「もう、リンちゃん」と何故か呆れたような顔をして私を見てきた。

「え?」

 何かやってしまったんだろうかと思いっていると、舞花ちゃんが耳を寄せてくる。

 舞花ちゃんの耳打ちに気持ちが伝わっている状態なのに、本当だろうかと思いながら、私は言われた言葉を基にリンリン様に声を掛けた。

「リンリン様が嫌じゃなかったら……ギュっとするからね」

 効果があったのか、リンリン様はそれまで動かしていた尻尾もピタリと動きを止めて硬直していまう。

 さすがに私の内面まで知っているだけに、気味が悪かったのだろうかと思っていると、再起動したリンリン様はゆらゆらと尻尾を振りながら『まあ、それが主様からの褒美なら、されてやってもよいのじゃ』と返してきた。

 少し意地っ張りというか、ひねくれた部分があるリンリン様に可愛いなって思っていると、それが伝わってしまったのかリンリン様の尻尾がまたピタリと止まってしまう。

 リンリン様はプライドが高いので、皆の前で恥をかかすわけにはいかないと、その反応で思い至った私は「リンリン様を抱きしめたいので、作戦が終わったら抱きしめさせてください」と伝えた。

 すると、リンリン様は再び嗣歩を揺らしながら『うむ』とだけ答えて、結花ちゃんの脇に移動し、魔よけの鈴の発動待機状態に入る。

 急な転化絵に驚いた志緒ちゃんが『わっ!』と声を漏らした。

 その後で、ドローンの方に視線を向けて、志緒ちゃんは『リンリン様が準備に入ったので、このまま始めますね』と言う。

 ここで急なリンリン様の行動を詫びた方がいいのかなとも思ったのだけど、こじれそうだなと思った私は「志緒ちゃん、結花ちゃん、東雲先輩、きらりちゃん、ぴかりちゃん、シャー君、オリジンとドローン……リンリン様、気を付けて頑張ってくださいね」とみんなの無事を祈りながら声を掛けた。

 直後、私が名前を挙げた皆の体が淡く輝きを放つ。

「あれ?」

 間の抜けた声を出した私の耳に、志緒ちゃんから『これ、リンちゃんからのバフみたいですね』という驚きの籠った声が聞こえてきた。

「バフ?」

 志緒ちゃんの言葉の中で理解の追い付かなかった言葉を口に出すと、すぐに志緒ちゃんからの解説が飛んでくる。

『リンちゃんはRPGとかやったことんばいかな? バフって言うのはプラスの効果だね。移動速度が上がるとか、攻撃力が上がるとか……ちなみに反対派デバフだね』

 スラスラと言う志緒ちゃんの説明を聞いて、私は瞬きをしながら「プラス効果があるんですね」とホッと胸を撫で下ろした。

 その後で、私は「ちょっと待って下さい。なんで()()()なんですか!?」と志緒ちゃんがシレッと認定していたおかしな事実に気付く。

 対して志緒ちゃんは『え?』と驚いた様子で目を瞬かせた。

 それから少し間を開けて『リンちゃん、無事を祈ってくれたじゃない? これ多分、リンちゃんの『乙女の祈り』の効果だと思うよ』と志緒ちゃんは両腕を大きく広げて、光る前進を見せるようにクルリとその場で回転する。

 ピタリと回転を止めた志緒ちゃんは『RPGとかのゲーム風に言うと、リンちゃんのスキル『乙女の祈り』は名前を挙げたりイメージした相手に対するバフ効果って感じだね』と言って、何度も頷いて見せた。

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