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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾捌章 反抗乃刻
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拾捌之漆 緊急と対処

『まずい! 『オリジン』、ドローンを戻して!』

 志緒ちゃんの声が響いた直後、もの凄い速度でドローンがゲートに飛び込む映像が流れた。

 これまでと違って、ドローンの動きを客観的に捉えるカメラは無い。

 当然ゲートに飛び込む映像も、ドローン自身の視点なのでもの凄く迫力があった。

 ゲートを抜けた瞬間、ドローンのカメラの前には、身構える東雲先輩とリンリン様の姿が映る。

 もの凄くスピードが出ているので、ぶつかりそうだと思った瞬間、ドローンのカメラが急に回転した。

 東雲先輩達から、地面、そして消え去りつつあるゲート、上空とめまぐるしく変わる。

 その中で、私は一瞬とはいえ、見逃せない映像を見た。

「ゲートが消えかけてる!?」

 思わず声を上げた私に続いて舞花ちゃんが「リンちゃん、箸が無くなっちゃってる!」とタブレット上で二本の指を広げて、画面の一部を拡大表示させる。

 大写しになったゲートの隅、舞花ちゃんの言葉通り箸が消えかかっていた。

 実体の部分がボロボロと崩れ落ちるようにして欠け、崩れ落ちら部分は光る粒子に変わった直後、消え去る。

 中に解けるという表現が合いそうな変化は、箸全てが消え去るまで続き、消え去ると同時にゲートの黒い長方形も消え去ってしまった。


 一方、ドローンが不思議な挙動を見せたのは、東雲先輩達に激突するのを避けるためだった。

 無理矢理前方二つのプロペラを逆回転させ、後方二つのプロペラは過電圧で回転速度を上げさせることで、縦回転を引き起こし、激突を回避したらしい。

 ドローンの操作を『オリジン』がになっていたからこそ出来た滅茶苦茶な回避方法だったけど、東雲先輩達にぶつからず、目的を達することは出来た。

 けど、そんな無茶苦茶な運用をして無事に済むわけは無く、ドローンの被った代償は消して小さくない。

 後方のプロペラのモーターは白い煙を上げてしまっているし、バランスを保てず地面に落ちたせいで、フレームもかなり歪んでしまっていた。


「リンちゃん、ごめんね」

 パワーアップした猫スーツ状態だったこともあって、私の前に神格姿のままドローンを抱きかかえて現れた志緒ちゃんは今にも泣きそうな顔をしていた。

「なんで、志緒ちゃんが謝るの?」

 志緒ちゃんの表情からドローンが壊れたことを悔やんで、申し訳なく思っているのは想像がついたので、あなたのせいじゃないよという意味を込めて尋ねてみる。

「ドローンに無理をさせて壊しちゃったから……」

「でも、志緒ちゃんのせいじゃないでしょう?」

 私の言葉に、志緒ちゃんは首を左右に振って「私がもっと早く、異変に気付いていれば『オリジン』がドローンに無茶な動作をさせることは無かった」と言い切った。

 自分を許せなくなってしまっている志緒ちゃんの頑なな態度に、どうすればいいのだろうと困ってしまう。

 そんな状況で、東雲先輩がフォローに入ってくれた。

「志緒、あの状況で異変に気づけたのはお前だけだ。だからアレが最善だった。それに、だ。ドローンが無理をしてくれたお陰で、オレ達に怪我は無かったんだ。感謝しか無い」

 東雲先輩の言葉に、多少思い詰めた表情はゆるんだものの、それでも志緒ちゃんは納得出来ない。

「でも……ドローン君、もう飛べなくなっちゃった……し」

 志緒ちゃんが何を一番悔やんでいたのか、その一言で私にも理解出来た。

 機械であるからこそ、志緒ちゃんには、ドローンが、もう元に戻れそうに無いことが、わかってしまったんだと思う。

 だからこそ、とても悲痛な表情を浮かべていたのだ。

 私が志緒ちゃんの心情を読み取れたタイミングで、リンリン様が『それはどうかの』と口にしつつ私の身体を駆け上がり、頭の上に座り込む。

 その状態で『そやつも、主様が無から生み出したものじゃ……主様なら直せると思わぬか?』と続けた。

 直後、志緒ちゃんの表情が明らかに輝き出す。

「リン……ちゃん」

 期待を込めて名前を呼ばれた私が返す言葉は一つしか無かった。

「ドローンも大事な仲間。リンリン様が直せるって言うなら、直せると思う。自身は無いけどやってみるよ!」


 私がドローンを再生する間、志緒ちゃんたちは短時間とはいえ、そのドローンが集めた情報を精査して、本番の準備を調えることとなった。

 現状わかっていることは、四季の箸が使用される度に欠けが発生しており、那美ちゃんの目的地である『黒境』周辺にゲートを開いた今回、欠けの速度が異様に早まったということである。

 問題は、それが距離によるものなのか、それとも、開いた先の環境の影響なのかという新たな疑問が生まれた点だ。

 これに対しては最早試してみるしか無いということで、那美ちゃんたちの向かう『黒境』と同距離の別の場所にゲートを開くことになる。

 方角を変え、市街地では無く人の入らない山中などで、しかも私有地で無い場所と条件は多かったものの、案外、候補地は複数ピックアップすることが出来た。

 私がドローンの治療をしている間に、複製してあった四季の箸と、最初に白い鳥居の先の世界『桃源郷』の調査に使った機材を使い実験を行う。

 引き続き、結花ちゃん、東雲先輩、志緒ちゃん、リンリン様、シャー君、きらりとぴかりがそのメンバーとなった。

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