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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第参章 下地構築
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参之弐拾伍 更衣室へ

 お昼ご飯を終えた後で行われる午後の授業は体育だった。

 一応、教室棟に男女ごとに更衣室があるけど、昼食で学生寮の棟に戻ってきているので、自室で着替えて校庭や体育館代わりの講堂、もしくはプールに向かうのが通常らしい。

 私は自室は未だ無く、花子さんの部屋に間借りさせて貰っている上に、体操服はくじ引きに使った体操着袋に入れたまま、教室に置いてきたので戻る必要もあった。

 結局教室まで戻るので、そのまま更衣室を借りるために、花子さんに使い方を確認したら、まず志緒さんが「使い方も場所も私が案内します!」と申し出てくれる。

「流石に、悪いですよ。教室棟まで戻らないといけないですから……」

 迷惑になるし、そもそも一緒に着替えることに多少の抵抗があったので、やんわりと断ろうとしたのだが、ここで那美さんが「あら、リンちゃんは一緒に着替えるのが嫌なタイプ?」と横やりを入れてきた。

 そういう尋ね方をされてしまうと、私は「そんなことはないですよ」と首を振るしか無い。

「じゃあ、私も一緒に着替えるわ」

「あ、舞花も!」

「ユイも行くわよ」

 なし崩し的に、全員参加になってしまったけど、一応私は普通の女子生徒というわけではないので、確認のために花子さんに視線を向ければ、頷きも首を振ることも無かった。

 雪子学校長も同様で、自分で判断しろと言うことだと思う。

 最後に東雲先輩に視線を向ければ「お、オレは部屋で着替える」と残して、さっさと食堂を出て行ってしまった。


 着替えを自室から取って戻ってきた志緒さんは、私の手を取って一本の大きな鍵を手渡してきた。

「更衣室の鍵は、今後はリンちゃんが持っててください」

 志緒さんにそう言われて、私は首を傾げる。

「私がですか?」

 そんな私の疑問に答えをくれたのは、着替えを抱きかかえて戻ってきた那美さんだった。

「リンちゃんは学級委員だから、ね」

「なるほど……」

 と、頷き掛けたところで、私の脳裏に過去の記憶が蘇る。

 席替えが盛り上がったせいで、委員会決めの話は流れていたので、学級員は決まってなかった。

「って、委員会って決めてませんよね!?」

 私の言葉に、那美さんはチロリと舌を出してみせる。

 そんな那美さんに、私は思わず苦笑してしまった。

 とはいえ、勝手に決めて良いことではないので、そこを指摘する。

「学級委員を引き受けるのは構いませんが、ちゃんと皆の意見を聞いた上で決めないといけませんよ」

 後でもう一度話し合いましょうと続ける前に、結花さんに「ユイはリンちゃんが学級委員で良いわよ?」と切り出されてしまった。

 続いて舞花さんが、私に抱き付きながら「舞花も、リンちゃんが良い~」と言いだし、志緒さんも賛同してしまう。

「リンちゃんは経験者ですしね!」

 那美さんは笑みを深めて「皆同意だから、良いでしょ?」と首を傾げた。

 完全に那美さんの思惑通りに動いていることに、私の何かが抵抗しようと動く。

「し、東雲先輩の意見を聞いてないですし」

 けど、那美さんの方が私よりも上手だった。

「じゃあ、女子の学級委員はリンちゃんと言うことで、よろしくね~」


 更衣室は教室棟の空き教室を利用していた。

 教室の真ん中に仕切りがあるらしく、半室ずつで男女が別れている。

 志緒さんから預かり花子さんに所持を許可して貰った鍵を、女子更衣室のドアに差し込むと、思ったよりも軽く回転して、鍵が外れた。

 先頭で更衣室に入ると、廊下と違って部屋の中はかなり暖かかく、思わず「あ、暖かい」と感想が口をついて出る。

 そんな私に、志緒さんが天井の空調を指さしながら「花子さんが暖房入れてくれてたんだと思う」と教えてくれた。

「流石花子さん」

 私は志緒さんの言葉にしみじみとそう言いながら更衣室に置かれた机の一つに、体操着袋を置く。

「一応、ロッカーもあるけど、机の上に置いておく子もいるわね」

 那美さんはそう言いながら男子更衣室との仕切りに取り付けられた木製のロッカーを指さした後で、舞花さん、結花さんの双子コンビを見た。

「なによ、なっちゃんだってロッカー使ってないでしょ!」

「そうだよー、なっちゃんも仲間だよね?」

 結花さんと舞花さんの抗議からして、志緒さんは違うんだなと察した私は、確認のために視線を向ける。

 周りの喧噪を他所にロッカーを開けて、ハンガーを取り出していた志緒さんが、私の視線に気付いて恥ずかしそうに「私着替え遅いから」と口にした。

 私はそんな志緒さんになんと返したら良いかなと少し考えてから「ハンガーがついているんだね」と視線を向ける。

「うん。私は畳むの苦手だし、全部掛けちゃうの」

 またも気恥ずかしそうに言う志緒さんに「私もロッカーを借りようかな」と笑みを返すと、その口元が笑みに変わった。

「え、リンちゃんもロッカー使うの?」

 いつの間にか私の横に来ていた舞花さんが私を見ながらそう尋ねてきたので、私は「そのつもり」と頷く。

 ブラウスやブレザーはともかく、スカートはプリーツがついていて、変に畳むと皺が出来そうだったので、ハンガーに掛けられるならその方が良いかなと私は考えていた。

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