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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之肆拾 再始動

「……でも……」

 会心の切り返しだと思っていたのは私だけだったらしく、志緒ちゃんは戸惑いの表情で迷いを見せた。

 これ以上、どうしたらいいんだろうと、次の言葉を思い浮かべることが出来ない私に代って、花ちゃんが声を掛けてくれる。

「しーちゃんなら大丈夫だと、凛花ちゃんは信じてるってことですよ」

 花ちゃんの言葉を聞いた志緒ちゃんが、上目遣いで「ホント?」と私に尋ねてきた。

 ちゃんと志緒ちゃんが出来ると思っているのは間違いなく、上手く言葉は出なかった代わりに大きく頷いて答える。

 そこから数回地面と私の間で視線を上下させてから志緒ちゃんは、私を上目遣いで見ながら「やってみても良いかな?」と不安げに問い掛けてきた。

 私は志緒ちゃんが迷っている間に、随分余裕を取り戻せたのもあって、今度はしっかりと頷きで応えてから、言葉を添えることに成功する。

「失敗は無かったことには出来ないけど、次の行動で挽回することは出来ると思うし……正直、やらかし葉私の方が多いわけで……誰にも被害の出ていない失敗でそんなに悩まれちゃうと、私が困るかなぁ……将来的にも」

 初めは少し指導でもするつもりで勢いよく言い始めたのに、気付けばかなり辿々しくなってしまった自分が情けなかった。

 それでも、言いたいことは伝わったようで、志緒ちゃんは笑みを深めると「次は失敗しないから、見ててね」と微笑む。

「う、うん」

 少しぎこちない頷きを返した私は、軽やかにブルーシートに書けだした志緒ちゃんの背中に軽く手を振って応援の気持ちを込めた。


 今度はリンリン様の『魔除けの鈴』によって、志緒ちゃんは黒猫スーツの姿に変身を遂げた。

 シャー君からリンリン様に変わったのは、術者……『魔除けの鈴』の使用者が変わった場合で性能に差が出るかどうかの検証も兼ねているが、一番大きいのは、シャー君の損耗がリンリン様より大きかったことが挙げられる。

 普段から常に空中を泳いでいるシャー君に対して、移動も私の頭の上で回避する傾向のあるリンリン様とでは、駆動部や動力など機械的な部分でも損耗に差があるようだ。

 ついリンリン様は楽しているからなんて気楽に考えたら、頭を前足で叩かれた上に『わらわはいざという時のために力を蓄えているだけじゃ』と怒られてしまう。

 実際、ここぞという時に働くからこそ、リンリン様は損耗を減らしているので、実に説得力があった。

 更に『サメの小僧は働き者が故に損耗しているだけで、背陰謀でわらわに劣っているわけでも無いぞ』と付け加えるあたり、リンリン様は仲間意識も強いらしい。

 とっても微笑ましくて、なんだか嬉しかったのだけど、そこは気に食わなかったのか、またもリンリン様からは前足の一撃が飛んでくることとなった。


 クレーターの底に立った志緒ちゃんは、その場で計測を開始した。

 ゲートの出現位置の基準となる白い鳥居との距離は二種類考えられるらしい。

 クレーター分、白い鳥居の地面よりも下に、志緒ちゃんは立っているわけだけど、高さを考えずに水平方向に測った距離がまず一つ距離の基準になる可能性があって、スーパーコンピューター並みの演算能力を誇る『オリジン』はこちらの可能性が高いと判断していた。

 もう一つが、その水平方向の地点から垂直に志緒ちゃんの立つクレーター底まで直線を引くと、白い鳥居の地面との三点で直角三角形ができあがる。

 その斜面に当たる部分、クレーターの底と鳥居の地面との直線距離が距離の候補の二つ目だ。

 ここを明らかにしておくのは安全を確保する上で重要なので『オリジン』も推奨している。

 加えて、可能性という意味で言うと、クレーターの底で四季の箸を使った場合、地面の中に出現する事もありうるので、この検証は欠かせないのだ。

 ちなみに、志緒ちゃんの立つクレーターの底までは、水平方向に7メートル、底までの直線距離は8メートルちょっとで、これを1メートルにつき、729メートル離れるというこれまでで得た情報を加味すると、5~6キロも離れるということになる。

 ステラときらりを派遣したものの、学校からの距離、方角が森の奥ということで、辿り着くにはもうしばらく掛かるのが現状だ。

 山奥とはいえGPSが有効らしく、発信機能のあるタグをステラ、きらりの両者が持ち『オリジン』の誘導で現場に向かっている。

 ステラが水平距離を基準にした側、きらりが斜線に当たる直線距離を基準にした側という担当ワケとなっていた。

 きらりの方が遠距離となった理由としては、姉妹機ゆえか、ぴかりときらりは通信とはまた違った繋がりでお互いの状況を認識し合う能力がある為で、生還率が高いと判断されたのである。

 作戦としては、先に四季の箸でゲートを作り出して潜って見る案もあったのだけど、あまりにも考えがなさ過ぎるということで却下された。

 まあ、完全却下というわけでは無く、箸の出現を、ステラときらりが観測出来なかった場合の予備作戦には採用されている。

 こちらの山の中で位置が確認出来なかった場合、ゲートが開いたのを確認すると、GPSタグを装備したドローンが、ゲートを抜けて位置を測定するというわけだ。

 那美ちゃんの件があるわけだし、そんなに悪い作戦では無いと思う。

 少なくとも、考えがなさ過ぎるは言い過ぎだと、私は作戦の成り行きを見守りながら唇を尖らせた。

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