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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之参拾漆 反省

 志緒ちゃんの放った一撃は、凄まじい威力を発揮した。

 あまりにも大きすぎる破壊音は、タブレットの音声を飛ばしてしまう。

 それだけで無く、巻き上げられた土と砂埃が画面を白く、そしてすぐに黒く塗りつぶしてしまった。

 視界を隠してしまう程の土砂の目隠しが時間経過で落ち着いてくると、今度は舞い上げられていた草の緑や桃の花のピンクや白が混じり始める。

 学校の上空から急降下して、グラウンドを破壊するかと思われた志緒ちゃんは、もの凄いエネルギーを纏ったままで、ゲートをくぐり抜けて、桃源郷の地面に大きなクレーターを作り出したのだ。

 テンションが上がりすぎて、学校のグラウンドに穴を開けてしまうんじゃ無いかと思っていたので、桃源郷は大変なことになっているのにも拘わらず、やっぱり学校施設が壊れたとなると、影響が大きいのは間違いないので、ついホッとしてしまう。

 身勝手だなと感じて罪悪感を抱きながら、舞い上がったもののほとんどが地面に落ちた桃源郷の姿を見た。


 志緒ちゃんの神格姿は、既に黒一色だった衣装から普段の装いに戻っていて、一撃が繰り出された結果であるクレーターの中心部に立っていた。

 唯一、桃源郷側に残っているドローンのカメラ映像から判断すると、志緒ちゃんの作ったクレーターはその身長くらいの深さがあるように見える。

 とんでもない威力なのは間違いなかった。

 実際、画像に注釈で加えられた『オリジン』の推定数値でTNT換算での二桁キログラムの重さが表示されている。

 余り詳しくないけど、1キログラムで木造の家くらい壊せてしまう威力なので、それが二桁ということは木造校舎も木っ端微塵だったということだ。

 特殊な学校なので、木造に見えるだけでも、もっととんでもない建材を用いられているのかもしれないけど、ともかく直撃してはマズイ威力だと思う。

 流石にそう思ったのは私だけじゃ無かったようだ。


 四季の箸を回収して、こちらに戻ってきた志緒ちゃんに、志緒の目先輩から雷が落ちた。

「志緒、アチラの世界で爆発させたから問題ないと思っているんだろうが、もしゲートをくぐれなかったら皆を危険に擦らしていたんだぞ!」

 いつになく迫力のある東雲先輩のお叱りの言葉に、志緒ちゃんは「でも」と反論を口にしようとする。

 が、東雲先輩ははなたれるであろう志緒ちゃんの主張を先回りしてみせた。

「パワーアップしたスーツの機能で計算は完璧だったと言うんだろうが、もしも不測の事態、計算を狂わす現象が起こったら、結果は違ったものになっていた! そうだろう?」

 ビシッと言い切られた東雲先輩の発言に、志緒ちゃんも反論出来ず押し黙ってしまう。

「力を試したい気持ちはわかるし、俺も試した。どの程度のエネルギーを消費すれば、魔除けの鈴で得たエネルギーが消費され切るのかを調べるのも意味がある……が、仲間にも被害が及ぶかもしれない大技を、こちらの世界で使うのは流石にダメだ」

 東雲先輩の言葉が重なる度に、志緒ちゃんが小さくなっていった。

 流石に可愛そうかなと思うけど、ここでしっかりと叱っておくのも大事だと思うので、ハラハラしながら成り行きを見守ることにする。

「こちらの世界で力が使えるという事態は、ほぼ記録に残っていない。どんな影響が出るかわからない。危険だ」

 そこで言葉を止めた東雲先輩は、おもむろに志緒ちゃんの座るブルーシートに上がり正座した。

「俺もパワーアップの高揚感に呑まれて、技を不用意に使ってしまった。志緒と同罪だ。だから、先に皆に謝罪しておく」

 塩野の目先輩はピンと背筋を伸ばしてそう言い切ると、両手を地面に付ける。

「皆危険にさらすような行動をしてしまなかった」

 そのまま頭を下げた東雲先輩を見て、志緒ちゃんも同じように正座で両手をついて頭を下げた。

「私もゴメンなさい……や、やるにしても、皆の許可を取ってから、説明してからやるべきだった……本当にごめんなさい!」

 謝り方一つで、本気かどうか伝わってくるもので、被害も無かったこともあり、頭を下げられた私たちに謝罪を拒否しようというものはいない。

 とはいえ、どう納めるのがいいかという思いで、私、舞花ちゃん、結花ちゃんはお互いに視線を交わし合うことしか出来なかった。

 ここで動いてくれたのは、責任者であり、表向きは最年長者である花ちゃんである。

「二人が反省しているのはわかりました。被害も……まあ、アチラの世界は大変なことになってますけど……こちらにはないので、罰は作戦が終わってからということにしましょう」

 花ちゃんはそこで一拍を置いてから、謝罪する二人だけで無く、私たちも見渡してから「これから先、自己判断で何かを決めなければならないタイミングがあるかも知れません。その時に皆のことを考えていては命に関わることもあるかもしれない……だから、直感に従って行動してください……でも、こうして後になってから反省出来るとは限りません。取り返しのつかないことを起こしてしまうかも知れません……もしも、それを背負う覚悟が無いのなら、この先の作戦への参加は辞退してください」と抑揚の無い声で告げた。

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