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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之参拾伍 推測と結果

『リンちゃん、このスーツスゴイ、ニャ!』

 何故か、志緒ちゃんは私の名前を呼んだ上で、興奮気味に言った。

 パワーアップには、私の影響があるんじゃ無いかと期待する舞花ちゃんと結花ちゃんの目に輝きが増した気がするので、本当にやめて欲しい。

 本当に影響があるならいいけど、無かった時に二人の期待を裏切ってしまうんじゃないかと思うと、期待の視線を受け続けるのが辛かった。

「ど、どこが、スゴいんですか?」

 ともかく状況を変えようと、志緒ちゃんからの説明を求めてみる。

 シャー君を経由して伝わった私の言葉に、志緒ちゃんは弾む声で『あ、知りたいニャ? 知りたいよニャア!?』と返してきた。

 私は即座に「知りたいですって伝えてください、ぴかりちゃん」と中継役になってくれているぴかりに伝える。

 すると、タブレットの中の志緒ちゃんが『かしこまりぃっ!』と答え、バイザーから覗く口を笑みの形に引き結んだ。


『まずは移動距離とか、腕の振りの角度、ジャンプした高さが即座に数値化されるニャ!』

 テンション高めに言う志緒ちゃんだけど、正直、どこが刺さっているのかわからなかった。

『更に! 計測したデータを元に、身体に再現させることが出来るニャ!』

 数値測定が何の役に立つのかと思ったけど、正確に同じ動きが出来るとしたらそれはスゴイと直感でわかる。

 機械でも、達人でもないのに、寸分違わぬ動きが出来るのは、これからやろうとしていることには最適なんじゃないかと思われた。

 桃源郷をワープトンネルに使う為には、正確に箸を打ち込む位置を計算し、そこに打ち込まないといけない。

 もちろん多少の誤差は許されるかもしれないけど、誤差はあるよりも、無い方が良いのは明らかだ。

 そこまで考えを進めてみると、志緒ちゃんがもの凄く燥いでいるのもちょっとは理解出来る。

 機械に詳しくない私からしても、その有用性がわかるのだから、志緒ちゃん目線で見たらもっとスゴイ何かを感じているに違いなかった。


『最初の箸を打つ地点は、白い鳥居を起点におよそ0.7メートルの地点ニャ。ここに刺せば、計算上、そっちの鳥居から500メートルのグラウンドの中心に、箸の先が出現する計算にゃ!』

 志緒ちゃんは手に何も持たない状態で、空中に箸を指す動作を二度繰り返した。

 最初は動きの測定、二度目はそれを踏まえて、動きに調整を加えたものを再現しているらしい。

 きっちりと『オリジン』と連携しているらしく、タブレットの動画には補足情報として、今の説明がきっちり表記されていた。

 リアルタイムでやっているはずなのに、解説動画みたいになっている。

 スゴいことなのはわかるんだけど、知識がないせいでその凄さを今ひとつ実感出来ていないのが少し申し訳なかった。


『それじゃあ、冬の箸、刺してみるニャ!』

 志緒ちゃんは冬の箸を手に宣言すると、何の躊躇も無く空中に手にした箸を突き立てた。

 その直後、志緒ちゃんは後方に飛んで、突き立てられた箸だけがそこに残る。

『無事、不死の橋を指せたニャ! 皆頼むニャ!』

 志緒ちゃんからの言葉を受けてから、探索担当であるきらりが飛び出していった。

 もう一人の探索担当であるステラの方は、計算で出現地点が予測されていたので、そこで待機している。

 その予測が正しかったことを示すように『皆ぁ~冬の箸の先端の出現を確認したよ!』という報告が、自らの視線映像付きでステラから(もたら)された。

 やや遅れて、こちらから飛んで行ったきらりの視点映像も、同じ箸を捉える。

 志緒ちゃんとオリジンの計算が正しかったことがこれで実証された。


『どうやら、箸の地表からの高さは現実世界と、神世界で変わらないみたいニャね』

 自身の計測したデータと、ステラ、きらりからの情報を比較確認した志緒ちゃんは、そう言って大きく頷いた。

 一人で納得している志緒ちゃんだったけど、タブレットには『オリジン』のフォローで解説文章が付与されている。

 それに寄れば、最初の冬の箸の出現位置である森の中と、今冬の箸が出現したばかりのグラウンドの中心では2メートル前後、標高に差があるらしく、出現位置までの距離は鳥居との関係性で決まると断定していた。

 一方で不確定だったのが、地表に対する箸の出現位置だったらしく、地中や上空に主T現する可能性もあったらしい。

 志緒ちゃんが興奮気味に声を弾ませたのは、箸の出現位置が地表を基準に決まることがわかったからで、出口が地中や空中にはなら無いと確定出来たことが嬉しかったみたいだ。

 私としても安全度が増すのは大歓迎であるので、志緒ちゃんが喜ぶのも理解出来る。

 着実に実験が成功し、那美ちゃんの背中が見えた気がして、私は思わず大きく息を吐き出した。

 そんな私の溜め息に気が付いた舞花ちゃんが「どうしたの、リンちゃん?」と少し心配そうな顔で尋ねてくる。

 私は舞花ちゃんの心配を拭えるように笑みを浮かべて「那美ちゃんの背中が見えてきたような気がして、そうしたら胸が一杯になってきて溜め息が出ちゃいました」と素直に身上のままを説明した。

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