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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之参拾肆 更なる

『それじゃあ、行きますシャー』

 宣言と共に『魔除けの鈴』の待機状態に入ったシャー君の全身がリンリン様が纏っていたのと同じオーラに包まれた。

 頭の上のリンリン様に「シャー君も問題なく発動出来そうですか?」と聞いてみる。

『わらわが使った際の記録は『オリジン』経由で共有情報になっておるからの。どうにかなると思うがの』、

 リンリン様はさも興味なさそうな口調で言うものの、きっちりと必要な情報は織り交ぜてくれるのがなんとも微笑ましかった。

 そんな私の受け止め方は不満だったらしく、怒りの前足がテシテシと頭に振り下ろされる。

 私がそんな風にリンリン様と戯れている間に、発動に十分なエネルギーが溜まったのであろうシャー君がより強いオーラを放ちながら、清らかに響く鈴の音を辺りに響かせた。


 東雲先輩のパワーアップは、属性の強化といった感じだったけど、志緒ちゃんのパワーアップは、完全に想像してなかった方向への変化で、正直予想外なものだった。

 これまでは活動的な、野性味を感じる出で立ちだったのが、一転してSFチックになっている。

 全身は光沢のあるエナメルのような半袖ミニスカートスーツに替わり、顔にはその多くを隠すようなメカメカしいバイザーが出現していた。

 その口元には、バイザーから繋がるマイクと思われる繭状の物体があって、よく見るとネコミミの頭部付近には円形のイヤホン……のような何かが出現している。

 両手両足は、指先から二の腕、つま先から太ももまでを、スーツと同じ、黒く光沢のあるエナメルのような素材が包んでいた。

 その中で左腕だけが少し特殊で、腕の部分に四角く縁取られたアルファベットや数字が刻印されている。

 直感でキーボードを連想したけど、どうやら間違ってなかったようで、志緒ちゃんが左腕に刻まれたキーを右手で触れた直後、その背中に単色の電光掲示板を思わせる光の点で構成された文字が表示された。

『パワーアップ・ダイ・セイコウ! ヽ(´ー`)ノ』

 きっちり顔文字まで表示されているのは流石だけど、わざわざ文字入力して表示する必要があるかは、きっと触れてはいけない領域のことだろうと思う。

 私がそんなことを思っている間に志緒ちゃんは、シャー君を巧みに誘導しながら、自分の姿を確認することに没頭し始めた。


「なんか、全然印象が違うね、しーちゃん!」

「そうね。そういう変化もあり得るのね」

 黒の衣装と機械味の強いバイザーという組み合わせは、確かにパワーアップ前のワイルドな雰囲気とは真逆な洗練された印象だ。

 パワーアップ前は猫科動物のしなやかさ、俊敏さで相手を翻弄しつつも、己の爪で直接攻撃をする力強さを持ち合わせたイメージだったのが、パワーアップ後の姿だと、ロボットやドローンをコントロールして攻撃を仕掛けたり、相手の施設へのハッキングをしたりしそうな光栄的な印象がある。

 東雲先輩のパワーアップが純粋な強化だとすると、志緒ちゃんのパワーアップはタイプチェンジといった感じだ。

 当然ながら、二種類のパワーアップの形を見せられた舞花ちゃんと結花ちゃんは、自分たちのパワーアップに強く関心を向け始める。

「ま、舞花達はどうなるかな?」

「……やっぱり、もっと炎と氷の力が強くなるんじゃないかしら?」

「でも、違う力が使えるようになるかもだよ?」

「その可能性もなくはないわね」

 正当強化か、属性変化か、あるいは第三の変化なのか、私だって気になるのだから、二人はより気になっているはずだ。

 そう思って話を聞いていると、突然、矛先がこちらに向く。

「パワーアップにも、リンちゃんの影響があるのかな?」

「へ?」

 舞花ちゃんとしては思いつきをそのまま言葉にしただけだったんだろうけど、意外に波紋は大きく広がった。

 どう返したら良いかと、反応に困った私に代って花ちゃんが「興味深い視点ね」と会話に入ってくる。

「リンリン様と凛花ちゃんに繋がりがある以上、凛花ちゃんのイメージがパワーアップのイメージに影響している可能性はなくはないですね」

 花ちゃんの言葉に何度か頷いてから、結花ちゃんが「それじゃあ、リンちゃんに、こういうパワーアップをしたいって伝えておいた方が叶えられる可能性が高まるわね」と言い出した。

「え、いや、正直、自分の中のイメージが影響すると思うんですけど……」

 パワーアップ後の姿が私のイメージだとされてしまうのを避けたい一心でそう伝えたのだけど、結花ちゃんからは「ユイもその可能性が高いと思うけど、でも、リンちゃんに言っておくことで、理想のパワーアップに近づけるなら、言っておいた方が得でしょ?」と返されてしまう。

「確かに」

 思わず頷いてしまった私に対して、結花ちゃんは満足そうに笑みを浮かべ、舞花ちゃんは私に向けて手を挙げてきた。

「はい、リンちゃん! はい、はーーいっ!」

 勢いに呑まれて、私は「はい、舞花ちゃん」と指名してしまう。

 舞花ちゃんはそれを切っ掛けに、理想のパワーアップ後の姿について語り出した。

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