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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之弐拾捌 リミット

 東雲先輩が抜刀したのだと理解したのは、きらりの目が鈍い光を纏った抜き身の刀身を捉えた後だった。

 柄を握った直後には、既に刀は抜き放たれていて、そのあまりにも速い動きを私はまるで捉えられていない。

 にも拘わらず、その抜かれた刀が通ったであろう軌跡を想像出来るのは、宙にキラキラと舞う銀色の細かな輝きが鞘から刀身までの宙空に、曲線を描いて待っていたお陰だ。

 肉眼で見られているわけではないので、はっきりとは断言出来ないけど、宙に舞う光の粒子は、恐らくエネルギーの粉のようなモノで、肉眼では見られるモノではないと思う。

 直接見てみたくはあるけど、森の中は完璧に安全が確保されていないのと、肉眼では軌跡を見ることができない可能性もあって、残念ではあるものの、今は諦めるしかなさそうだ。

 ともかく今は東雲先輩の状況を見守るのが先だと気持ちを改めようと思ったタイミングで、舞花ちゃんが「リンちゃん、大変だよっ!」と私に声を掛けてくる。

「ど、どうしたの?」

 私の返事に応えたのは結花ちゃんだった。

「画面を見て、マーちゃんが!」

「えっ!?」

 私は大きな不安を感じてタブレットに視線を向ける。

 その画面の中央に映し出された東雲先輩は、手の先、足の先から徐々に光の粒子に変わり始めていた。

「し、東雲先輩!?」

 このまま消えてなくなるんじゃないかという不安で、思わず声を上げてしまった私に、タブレット経由で東雲先輩の声が聞こえてくる。

『大丈夫だ。『球根』に戻っているだけだ』

「きゅ、球根に戻ってる?」

 私の肩に手を置きながら結花ちゃんが「たぶん、感覚で分かっているんだと思うわ」と言ってくれた。

「だ、大丈夫なんでしょうか?」

 不安で仕方ない思いが私の口から勝手に飛び出してくる。

「大丈夫だとしんじるしかないわ……いずれ試さなきゃいけないことだし……」

 志緒ちゃんの言葉に、誰も確証がないのだと理解するとともに、確かに誰かが試さなければいけないことだというのはわかるので、危険だからと言うだけでは止められないと感じてしまった。

 少なくとも、私が東雲先輩の立場なら、同じように誰かがやらなければならないという理由で押し切っていたと思う。

 みんなもおそらく、自分に当てはめたら同じことをすると思っているからこそ、東雲先輩を心配してはいても、制止する声が上がってこないのだ。

 つまり、私も心配なのを我慢して、見届けなければいけない。

 唇を噛みながら、ただ無事を願うことしかできない私に、花ちゃんが声を掛けてきた。

「リンちゃん。よく見てください。いざという時はリンリン様が魔除けの鈴を発動してくれます。それでまたパワーアップすれば、雅人君は実体を取り戻せます……今はパワーアップの時に得たエネルギーが消費されてしまったせいで、通常の状態、球根に戻りつつあるだけだと思います」

 花ちゃんの言葉を聞いて画面を落ち着いてみれば、リンリン様の輝きが増しているのがわかる。

 それだけで、花ちゃんの言葉が本当のことで、リンリン様もいざという時に備えているのが感じ取れた。

 信じて待つしか出来ない状況は変わらないけど、それでも、大丈夫かもしれないという希望で、信じることに集中出来るようになった気がする。

 ただただ東雲先輩の無事と、何かあった時のリンリン様の素早いサポートの成功を祈って、光の粒子へと変わっていく東雲先輩の姿をしっかりと見据えた。


 手の先、足の先から粒子に戻っていく東雲先輩だったけど、足が消えたからといって、その身体が地面に落ちることはなかった。

 光の粒子に変わって締まったせいで消えてしまったように思っていたけど、見えなくなってしまっただけで、ちゃんとそこに存在しているように感じる。

 その事が、東雲先輩に危険なことが起こらないと思わせてくれた。

 私は今出来ることを、心の中で『頑張れ!』と祈ることを、ただ繰り返す。

 流石に、それが功を奏したとは思わないけど、肘から方へ、膝から太ももへ、その消失範囲が広がる中、東雲先輩の身体が輝きだした。

 輝きの強さその色合いはリンリン様の『魔除けの鈴』の待機状態に凄く似ている。

 そこに気付いた私は、東雲先輩を護るために込める力を増してくれているリンリン様の想いが形になったのではないかと考えた。

 普段はマイペースなのに、いざという時は仲間のために全力を尽くしてくれるリンリン様に対する尊敬に似た気持ちがドンドン強まってくる。

 そんな私の気持ちが伝わっているのか、リンリン様が纏うエネルギーがより力強く、より輝かしく、グンとその範囲を拡大させた。

 時を増す毎に大丈夫だという気持ちが強くなる一方で、東雲先輩の身体は上半身と顔をのコスだけに変貌してしまっている。

 その残された部位が透き通り始めて、その代わりに胸の辺りに輝く白い球体が見え始めた。

 言葉通り『球魂』に戻るのだと、その光景を見て、私はようやく受け入れることに成功する。

 ほぼそのタイミングで、東雲先輩の顔も上半身も消え去って、東雲先輩は求婚の姿に変わった。

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