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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之弐拾参 光明

 空中に留まる箸を中心に円を描くように飛行したドローンのカメラが、消失した箸の先端部分、断面に当たる部分が黒く塗りつぶされていて見えなくなっているのを映し出した。

 道具や手など、全体の一部を白い鳥居からアチラの世界に、挿し入れた時と似た現象が起きている。

 恐らくそれに気付いたのであろう結花ちゃんが「『ぴかり』ちゃん、『きらり』ちゃん、こちらに出ている箸の先端部を探して頂戴」と指示を出した。

 即座に、結花ちゃんの周りを浮遊していた『ぴかり』と『きらり』が、真反対に飛び出していく。

 同時に反対方向に飛ぶことで、短時間で広範囲を調査する『ぴかきら』の二体は、ほんの少しの時間でそれが如何に効果的か示して見せた。


 こちらに出現した箸の先端部は『きらり』が発見し、私たちはその場で待機したまま『ぴかり』の案内でステラを派遣することに決めた。

 理由は単純で、先端部は学校の結界の外側で発見されたのである。

 既に、リンリン様の魔除けの鈴で、境界際の浄化には成功したモノの、私たちがのこのこ出ていくのは危険と判断した。

 何しろ、私たちが境界際に近づくだけで、大蛇のような『穢』の残滓が活発に蠢き出すのである。

 その一方で、結界の外側にある箸の先端部のそばに待機している『きらり』には、全く反応を示していなかった。

『きらぴか』が特別な可能性もあったので、ステラに教会際まで移動して貰ったのだけど、やはり反応はない。

 そのまま、ステラにはきらりに合流して貰い、計測をして貰うことにした。


 桃源郷はシャー君が、こちらはステラが、それぞれ見えている部分の箸の長さを計測し、その数値を足し合わせると元の長さになることが確認出来た。

 加えて、撮影した箸の映像から『オリジン』が3DCGでデジタル上に再現し、元の形になることも確認している。

 その上で、シャー君とステラの連携でいくつかのことが確認出来た。

 まず、箸の出現位置が、白い鳥居の学校を向いている側を正面とした時に左手側の真横に出現している。

 桃源郷では、足を踏み入れて振り返った状態で見る白い鳥居の右手側の真横に突き刺さっているので、方向はほぼ一致しているようだ。

 高さは地表からおよそ1.9メートルでこちらも一致している。

 だが、鳥居からの距離が大きく異なっていた。

 桃源郷では、1メートルしか離れていないのに対して、こちらで『きらり』が発見した先端部分は、729メートルも離れていたのである。

 どうしてそれほどの距離が空いてしまったのかはわからないけど、状況としては歓迎出来る結果だった。

 何しろ、私たちの使用としている神世界をトンネルにして、一気に那美ちゃんに追いつくという一見無茶苦茶なプランに現実味が出てきたのである。

 1メートルが792メートルになるなら、3メートルならば2,376メートル、約3キロ離れることとなり、那美ちゃんの目的地である『黒境の跡地』まで、数十キロという距離があっても、数十メートルで足りる計算になるのだ。

 もちろん、これから計測をしてみないと断定は出来ないが、それでもそうである可能性を見いだせたのは大幅に前進したと言って良いと思う。

 が、まずは『開門の楔』と同じように通り道が開けるのかを確かめる必要があった。


『それでは次の箸を指してみる』

 東雲先輩はそう宣言すると、再び春の箸を取り出した。

『新たな箸を刺す位置は、同じ高さで更に1メートル右だ』

 そう口にした東雲先輩は正確にその場所に向けて、箸を差し込む。

 が、春の箸はまたも弾かれてしまった。

 私は刺さらなかったことに驚いて固まってしまったのだけど、東雲先輩はすぐに手にした箸を『夏』に替える

 再び突き刺すも、これも空間には時期消されてしまった。

 最早弾かれることに驚きもしないといった様子で、東雲先輩は更に『秋』の箸へと持ち替える。

 そのまま、目標位置に突き刺す東雲先輩だったけど、なんと秋の箸までもが弾かれてしまった。


「も、もしかして、何か不良品だったんでしょうか……」

 二本目が刺さらないといった自体に、私は思わずそう呟いてしまった。

 これに対して、皆、同じようなことを考えていたのだろう。

 周りの反応はなく、沈黙が少しの間続くことになった。

 そんなどうしようも出来ない思い沈黙状態を、東雲先輩の『凛花、もう少し試させてくれ』という言葉が破ってくれる。

「東雲先輩?」

 名前を口にしながら視線を向けたタブレットの中の東雲先輩は、春、夏、秋の三膳の箸を振りながら『恐らく刺す順番だけでなく、場所にもルールがあると思う。だから、少し試させて欲しい』とカメラ目線で訴えてきた。

 タブレット越しでも視線がバッチリと交わったことに、心臓がもの凄く大きく跳ねる。

 大きく息を吐き出して動揺を打ち消してから、私は「よろしくお願いします」と承諾の言葉として正しいのかどうかわからない言葉をどうにかひねり出した。

 対して、東雲先輩は真面目な顔で『ああ、任せて欲しい』と返して、一膳の箸を手にする。

 そして今度は、冬の箸と同じ高さの横ではなく、直下、かなり地面に近い位置を狙い箸を差し込んだ。

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