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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之拾玖 次へ

 志緒ちゃんの目に滲んだ不安は、多分、突入を否定されたらどうしようという気持ちの表れじゃないかと感じ取った私は、突入に対する不安じゃないんだと思ってしまった。

 鳥居をくぐることに志緒ちゃんが不安を感じていなくて、単に私の意見が気になっているだけなら、皆が受け入れてしまったこの状況で選択肢は一つしか無い。

 それでも最良を目指し、目を閉じて私に出来るコトを考えてから、目を開いた。

「志緒ちゃん、どうしても行くなら、リンリン様に護って貰って!」

 そう言いながら、私は頭の上のリンリン様を捕まえて、志緒ちゃんに向けて突き出す。

 私の両手に挟まれたリンリン様は『主様の命とあれば、仕方ないのぉ』とあまり積極的ではないものの、同意は得られた。

 一方、突きつけられた志緒ちゃんは一瞬だけホッとしたような表情を見せてから、リンリン様に向かって「それじゃあお世話になりますリンリン様」と言って頭を下げる。

『任せておくのじゃ』

 リンリン様は言うなり身体を震わせ、簡単に私の両手を振りほどいてしまった。

 そのまま綺麗に着地を決めたリンリン様は、スルリと志緒ちゃんの前に立って、白い鳥居に向かって歩き出す。

 白い鳥居の巨魁を越える直前でピタリと足を止めたリンリン様は軽く振り返ると、志緒ちゃんに向かって『それでは準備は良いかの? 良ければ早速向かうこととしよう』と言い放った。

 志緒ちゃんは「いつでも大丈夫です」と返して大股でリンリン様に並ぶ。

『いざという時は魔除けのすずを使う故、志緒はわらわの跡をついて参れ』

「了解です!」

 リンリン様の言葉に」、志緒ちゃんが短く応えると、それが二人の合図になった。

 軽い足取りで、白い鳥居をくぐったリンリン様がその彼方へ姿を消す。

 タブレットに映し出された映像で、リンリン様が無事向こう側に到達したのを確認した東雲先輩が「志緒、無事無効にとつたつしたぞ」と報告をあげた。

「わかった」

 返事をした志緒ちゃんはこちらに振り返って、真剣な表情で「いくね」と口にしてからゆっくりとした足取りで白い鳥居へと向かう。

 志緒ちゃんは、一端、白い鳥居の境界面を前に立ち止まると、ギュッと拳を握りしめてから最後の一歩を踏み出した。


 白い鳥居の向こう側の姿はドローン、つまりは球魂を見ることが出来るカメラのレンズが使われていた。

 タブレットで向こう側の様子を見守っていると、白い鳥居を越えて光る球体が出現する。

 それが瞬時に人型へと変化して、ネコミミの生えた志緒ちゃんの姿へと変わった。

 一方で、白い鳥居のこちら側では、意識を失った志緒ちゃんの身体が力なく倒れていて、花ちゃんがその身体を支えている。

 思わず「志緒ちゃん」と声を上げてしまった私に、花ちゃんは「大丈夫、球魂が抜けただけだから……無効の志緒ちゃんは平気そうでしょ?」と笑顔で声を掛けてくれた。

 言われてタブレットに視線を戻すと、柔軟をしたり跳躍をしたり、猫の足のように変化した手を振り回す猫化した志緒ちゃんの元気そうな姿が映し出されている。

「はい。なんだか元気みたいです」

 私がそう伝えると、志緒ちゃんの身体を横抱きにして持ち上げながら「これで、次は出口の確保さえ出来れば追いつける可能性が出てきたわね」と次のことを花ちゃんは視野に入れていた。


 志緒ちゃんが無事突入出来たことで、私と花ちゃんを除く、東雲先輩、舞花ちゃん、結花ちゃんの三人は交代で突入して感覚を確かめていた。

 こちらの世界に待機する形になってしまった私も、ただメンバーに入れて貰えなかったというわけではない。

 私と花ちゃんで話し合わないといけない事があるのだ。

 それこそが、神世界からこちらへと出口を作る道具についてである。

 一応、制作は国中の『黒境』を管理している政府組織の技術者によるもので、花ちゃんはアイデア提供やデータ提供などで関わっているらしく、現場での検証を担当しているそうだ。

 組織内での呼称は『開門の楔』らしい。

「いま、ここにあるはこの一組だけね」

 花ちゃんがそう言いながら私の前に置かれたテーブルの上に四本一組のかんざしのように見える棒状の物体を四つ並べた。

「一組しか無いと言うことは……」

 私が窺うように口を開くと、花ちゃんは良い笑顔で頷く。

「これは備品の範疇に入るので、使用すれば用途とそのレポートの提出が必須になるアイテムですね」

 少し答えとしては的がずれているような花ちゃんの答えだけど、私にはその裏側にある言いたいことと言うか希望するところがわかってしまった。

 正直言うと、花ちゃんのセリフだけでわかったのではなく、白い鳥居をくぐる前に、東雲先輩から渡された結構な枚数のアイガルカードがヒントになっていたのである。

 手元のカードに触れながら「量産してみる……ってことですよね?」と花ちゃんに尋ねた。

 けど、予想に反して花ちゃんは左右に首を振る。

「え、違うんですか!?」

 驚く私に対して花ちゃんはニッと笑うと「量産なんてケチなことは言わないで、リンちゃん印のスペシャルな楔を作って貰いたいかなー」と言い放った。

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