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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之拾陸 突入

 タブレットに映し出された映像は大きな揺らぎの後、間もなくして、桃の花が舞う桃源郷の風景へと移り変わった。

 それを確認した上で視線を向けると、東雲先輩が押し込んだ台車の隊部分が消えてしまっていて、丁度上に乗っていたドローンは完全に向こう側に行ってしまっている。

 とはいえ、映像は届いているので、カメラが問題なく稼働しているのは間違いなさそうだ。

「志緒、飛ばせるか聞いてみてくれ」

 東雲先輩は台車から離れて、志緒ちゃんにそう声を掛ける。

 手を離されて、2/3以上が消えてしまった台車は、前輪がこちらの世界にもないにも拘わらず、水平を保っていた。

 不思議な光景に目を奪われている間に、志緒ちゃんはシャー君を通じて『オリジン』に指示を出したようで、気付けばタブレットに映し出された映像は、上空から旋回しながら周囲を撮影したものに変わっている。

 飛び立つ瞬間は見逃してしまったが、グングンと上空に上がりながらドローンのカメラがどこまでも果てなく続く桃の花に埋め尽くされた白と桃色の鮮やかな光景を映し出していた。

 一緒に映像を見ている舞花ちゃんも結花ちゃんも言葉を無くしてしまう程の圧倒的な美しさがあった。


「さて、次はいよいよ、我々が突入出来るかどうか……だな」

 東雲先輩の言葉に皆が無言で頷いた。

『では、ここはわらわの出番だの?』

 リンリン様はそう言って私の頭から飛び降りて、誰よりも白の鳥居の近くに降り立つ。

「ちょ、ちょっと、リンリン様!?」

 思わず立ち上がって手を差しのばしたが届くわけもなく、リンリン様は誓詞を聞くことなく白の鳥居へと振り向いてしまった。

 だけど、そんなリンリン様も置き去りにして、空中を泳ぐサメが『一番乗りは僕だシャー!』と叫びながら弾丸のように突撃していく。

 流石に想定外だったのかリンリン様も自分の真上を飛んで行ったシャー君を見上げ『なっ!』と驚きの声を上げた。

 一方で持ち主というか、相棒である志緒ちゃんは『いっけぇ、シャー君!!」と右手を振り上げて応援モードに入っている。

 直後、白い鳥居の柱で区切られた平面に大きめな波紋が巻き起こり、シャー君の姿は完全に消え去ってしまった。

「リンちゃん、タブレット!」

 一瞬呆然としてしまった私の耳に飛んできた舞花ちゃんからの言葉に、私は慌てて視線を手にしたタブレットに向ける。

 未だ白い鳥居の先の神世界で飛行を続けているドローンの映像に、白い鳥居を抜けて突入してきたシャー君が空を泳ぐ姿が映り込んだ。

「はぁ~~~」

 思わず溜め息を吐き出すと共に、体全体が重くなったようなもの凄い疲労を感じて、椅子からずり落ちそうになってしまう。

 それでも、シャー君の無事そうな姿に、心の底から安心していた。


『全く無茶なヤツなのじゃ! わらわのように魔除けの鈴も搭載しないで、敵がやってきたらどうするつもりだったのじゃ!』

 プンプンと怒りながら文句が止まらないリンリン様は、白い鳥居の繋ぐ世界への突入を、自己のあるメンバーの中で最初に遂げるという役目をシャー君に奪われてしまったことで、かなりご立腹の様子で私の頭の上に戻ってきた。

 さっきから呟きが止まらないので、リンリン様も同じ事をしようと していましたよというツッコミは飲み込んでおくことにする。

 そんな風に沈黙を選んだ私に代って、リンリン様に声を掛けてきたのは志緒ちゃんだった。

「リンリン様ー。実はシャー君には空気の成分を解析する装置なんかも積んでいるので、最初に入って貰う必要があったんですよ」

 志緒ちゃんの発言に興味を示したのか、リンリン様は『む?』と口にして延々と続いていた文句を止める。

 それを聞く体制が整ったと判断したのであろう志緒ちゃんが更に言葉を重ねた。

「リンリン様が言うように、もしも『穢』や『種』がいるなら、リンリン様のような守りの力を持った存在を送るのが一番だったんでしょうけど、今のところドローンの観測では見つからなかったので、時間を掛けずに安全性を確認するために、シャー君に選考してもらったんです。事前に説明しなくてごめんなさい」

 深々と頭を下げて謝罪する志緒ちゃんに対して、リンリン様は少しの間沈黙を挟んでから『そういう事であれば、仕方ないの』と理解を示す。

 そんなリンリン様に対して、志緒ちゃんは更に「リンリン様には、リンちゃんの護衛という大事な役目があるし、突入はリンちゃんと一緒にして貰えると、私たちも安心出来ます!」と真面目な顔で続けた。

 どうやら私の頭の上で四本足で立ち上がった様子のリンリン様が『任せておくのじゃ!』と機嫌の良さそうな声で返事をする。

 これって、志緒ちゃんに完全に操られているんじゃないだろうかと思ってしまったが、沈黙を選択している私は敢えて何も言わないことにしたのだけど、あまり意味は無かった。

 何しろ、護衛の一言に、舞花ちゃんと結花ちゃんが反応してしまい、誰が私を護るかで、リンリン様を含めた三者がにらみ合ってしまったのである。

 そんな混乱の状況の三人に対して、志緒ちゃんが「リンちゃん姫を守るのに争ってはダメ。喧嘩していたら、姫は泣いてしまうわー」とか言い出した。

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