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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之拾伍 喪失

「花子さん。映像の範囲には『種』らしきものは見られませんね」

 東雲先輩からの報告に、花ちゃんは「これは広く観測しないと……ですね」と呟くように言った。

 この先の観測はより神世界に踏み込まなければならない。

 となると、いよいよ突入かと思ったのだけど、私は考えが浅かったようだ。

 志緒ちゃんが「それじゃあ、次は電波状態の確認ですね」と言いながら巨大なきりたんぽのような機械を持ち出してくる。

「志緒ちゃん、それって……」

 疑問で思わず聞いてしまった私に、志緒ちゃんは「これは電磁波を測定する機械だよ」と笑顔で返してきた。

「これで電磁波の状況を確認して、操縦用の通信電波に支障が無ければ、神世界(あっち)でドローン君を飛ばせるでしょう?」

「あ、なるほど」

 思わず手を叩いてしまったほど、腑に落ちる答えで、電波を確認した上でドローン投入というとても安全に配慮した手順をきっちり組み上げている事に気づき、自分の考えの無さが情けなくなってくる。

「リンちゃん。機械のことは志緒ちゃん、花ちゃんに任せておいた方が良いよ」

「そうね。人に映えて不得手があるわけだし、リンちゃんが全部やろうとする方が無理があるわ」

 落ち込む私に声を掛けてくれる舞花ちゃんと結花ちゃんに、ぎこちない笑顔を返したことで、ズバリと心境を見抜かれてることに対する動揺をどうにか誤魔化すことに成功した。


 皆の知識や発想の柔軟さに、勘の良さ、人を見ぬく目と、短時間で自分より優れた部分を目の当たりにして、なんとなく皆を庇護の対象とみる切っ掛けでもある林田先生(おとな)だったという事実がとても希薄なモノに思えてきた。

 そもそも皆が優秀だというのもあるけど、それに加えて、果たして林田先生は誇れる程の経験や発想力知識を有していたどうかという疑問が時と共に大きくなってくる。

 今の私が自称している年齢通りの小学生だったなら、これから頑張ろう出住んだことかもしれないけど、大分朧気になってしまっていても、やはり大人だったという記憶が……と考えたところで、一つの事実に気が付いた。

 以前の記憶が朧気になっている。

 その事実に背筋を凍らせながらも、懸命に記憶を辿った結果、小学生だった時の記憶は『凛花として経験した記憶』のように変質し、中学生以降の記憶はかなり曖昧になっていることに気が付いた。

 私の中の林田先生がもの凄く薄くなっていると共に、自分が『林田京一』ではなく『林田先生』と呼称している事実にも気付く。

 状況を積み重ねた結果、私の中で林田京一が()()()()()()()()()()()()()()()()という仮説が導き出された。

 正直、すぐにでも相談したいけど、今花観ちゃんを追うという目的のために皆に協力して貰っている状況だし、相談するにしても私の本当の姿を伝えなければいけない。

 今更真実を明かす決断と、自分の中の林田先生が薄れて無くなってしまうかもしれない怖さを天秤に掛けた結果、私は今すぐの相談は諦めて、那美ちゃん救出に意識を集中することで問題から目を逸らすことに決めた。


「それじゃあ、シャー君。『オリジン』に調査を頼んでくれる」

『任せてシャー!』

 電磁波測定の結果、ドローンの飛行が可能だと判断した志緒ちゃんは相棒のシャー君経由で『オリジン』にオーダーを出した。

『返事が来たシャー。こちらの世界から飛行状態で進入した際に、電波の乱れで墜落が起り破損する可能性があるので、台車で搬入して欲しいそうシャー』

 シャー君経由で返ってきた『オリジン』からのメッセージに、志緒ちゃんは「確かに」と頷く。

 すると、待機していた東雲先輩が「そちらは俺がやろう」と宣言して、この展開を予想していたらしくいつの間にか用意してあった台車の上にドローンを載せる作業に入った。

 一方で、花ちゃんは志緒ちゃんに「一応中形容アンテナも、向こうに送りますね~」と宣言してから、先ほどの電磁波測定器に似た形の機械を白い鳥居の向こう側に、マジックハンドで挟み込んで送り込む。

 先ほどの電磁波測定器の時もそうだったけど、安全性が確保されていないのもあって、自身の体が鳥居の向こう側に入らないように徹底していた。


「それじゃあ、準備は良いか?」

 東雲先輩はドローンを乗せた台車を白い鳥居の前で一旦停止させると振り返って宣言した。

 志緒ちゃんが「シャー君、確認して貰って良い?」と声を掛け『了解シャー』と返答があって数秒、『オリジン』から問題ないと報告があったことが伝えられる。

 東雲先輩はシャー君からの報告に頷きつつ「映像はどうだ?」と志緒ちゃんに話を振った。

 タブレットを確認した志緒ちゃんは「白い鳥居が映ってる。ドローンのカメラの映像で間違いないと思うよ」と答える。

 対して東雲先輩は「了解だ。入れるぞ」と告げてから、ゆっくりと台車を白い鳥居に向けて押し始めた。

 私は左右から舞花ちゃんと結花ちゃんに挟まれながら、手の中に収まっているタブレットに映し出されている動画に集中する。

 白い鳥居との距離が縮まるにつれて、フレームから鳥居の柱が外れると同時に、映像に揺らぎが起きた。

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