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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之玖 音波

『アレに対して、魔除けの鈴の力を使ってみようと思うのじゃ』

 リンリン様はそう言って、森の上空へと視線を向けた。

 私はドローンのカメラにしか、球魂やエネルギー球をプツシ出すレンズを嵌めてはいない。

 なので、リンリン様にも直接『穢』を見ることは出来ないはずだけど、ひょっとしたらヴァイア……オリジンとの連携で姿を見ているのではないかと思った。

 なぜなら、蛇の頭……先頭と言うべきか、ともかくその末端部が、丁度リンリン様が見上げた先に存在している。

 見ているだけで気持ち悪くなる大蛇のような醜悪の塊に挑もうというリンリン様に「その……大丈夫、ですか?」と尋ねた。

 すると、リンリン様は『主様は信じておけば良いのじゃ』と返してくる。

「リンリン様のことですね?」

 そう聞き返した私に軽く振り返ったリンリン様は『それは当然じゃな……そして、もう一つ信じておくのは主様の力。主様がわらわに新たに与えてくれた能力の強大さじゃ!』と言い切った。

 自身と気合の乗った言葉に加えて、自分を信じろという言葉が私の心を振り立たせる。

 気付けば、嬉しい気持ちと誇らしい気持ちで、私は「信じます!」と返していた。

『主様が信じてくれれば、わらわが後れをとることはないのじゃ!』

 そう口にしたリンリン様は、グッと体を縮めた後で、強烈な跳躍を見せる。

 飛距離は三メートルくらいで、見上げる形になったリンリン様の先に、醜悪な大蛇の末端部が見えた。

 全身が嫌悪感で総毛立つのも僅か、上昇の勢いが消え、落下に変わらんとするリンリン様を中心に、高く澄んだ鈴の音と供に、目には見えないモノの波のように幾重にも重なる強烈な気配が押し寄せてくる。

 その激しさに両腕が盾になるように顔の前で重ねた。

 当然、腕で隠れてリンリン様や『穢』の姿を確認することが出来ない。

 早く 魔除けの鈴の効果やリンリン様の無事、何より『穢』の変化を確認しなければと気持ちは焦るが、恐らく魔除けの鈴の効果であろう風圧はなかなか衰えなかった。


 タッと軽い音がした直後、先ほどまで顔を覆っていなければ耐えられなかった風圧が完全に消え去った。

 私はすぐに腕を降ろし、状況を確認しようとして言葉を失う。

 無事を心配していたリンリン様は、ドロドロと火のついた蝋燭の様に溶けていく『穢』に背を向けて、堂々とした姿で私を見上げていた。

『これが、わらわと主様の力だの』

 誇らしげに言い切られてしまうと少し恥ずかしい。

 その気恥ずかしさを誤魔化すように、私は「リンリン様。体の方におかしなところとかはないですか?」と尋ねた。

 すると、リンリン様は『少し疲れた気がするの』と返してくる。

「え!? どうしたら良いですか!?」

 完全に生き物な動きを見せるせいで、とてもそうは思えないけども、機械なので、疲れをどう癒やせば良い物か悩んでいる内に、リンリン様は跳躍した。

「へ?」

 私が驚いている間に性格に、頭の上に着地したリンリン様は『疲れたゆえ、ここで休憩させて貰うのじゃ』と宣言する。

 私の頭の上で丸くなったリンリン様について行けず「え、リンリン様?」と口にしたのだけど、返ってきたのは『後は任せたのじゃ』という一言だった。

「ま、任せたって……」

 何をか聞くより先に、リンリン様から『結果の検証じゃ。必要であろう?』という、もの凄く腑に落ちる答えが返ってくる。

 そこは自分で検証しなくていいんだろうかという気持ちで「それは、そうですけど……」と口にしたのだけど、リンリン様からの返しは『疲れたので頼むのじゃ』という素っ気のないもので、結局そのまま反応をしてくれなくなってしまった。

 一応、大丈夫だと言ってはいたけど、もしかしたら何らかの負荷があって、それを回復させているのかもしれないなという考えが、フッと浮かぶ。

 それならば、確かに検証は、力を使ったばかりのリンリン様に代わって私たちがするべきかもしれないなと思えた。


「あ、リンちゃんは座ってて」

 志緒ちゃんはそう言うと、いつの間に持ってきていたのか、パイプ椅子を拡げて、その座面を叩いて、ここに座れとアピールしてきた。

 勢いに呑まれそうになったけど、どうにか辿々しくなりながらも「え、でも、検証……」と言うことには成功する。

 が、志緒ちゃんは「私たちは結界から出るわけにはいかないので、ドローンや測定機なんかの機械とオリジンを中心に検証するから、私、まーちゃん、花ちゃんで調べるので、リンちゃんは休憩がお仕事です。リンリン様も見ててあげて、ね!」と言うと、私の肩を押さえてパイプ椅子に座らせた。

「マイちゃん、ユイちゃんは、リンちゃんの護っててね!」

「了解! 舞花とお姉ちゃんに任せておいて!」

 ポンと胸を叩いて、宣言した舞花ちゃんに続いて、結花ちゃんも「警戒なら『きらり』ちゃんと『ぴかり』ちゃんの本領が発揮できるわ」と得意げに言う。

 最早私が何を言おうと状況は変わりそうにないので、諦めて私は気持ちを落ち着かせて検証の終わりを待つことにした。

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