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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之捌 鈴音と穢

 カード枚数にして合計五枚、東雲先輩から受け取った四枚目の追加カードがエネルギー化して、掌の間のエネルギー球に吸い込まれた瞬間、魔除けの鈴への変化が始まった。

「変化が起こりました!」

 私がそう宣言したところで、ブンというドローンの駆動音が聞こえ始める。

 エネルギー球や球魂を撮影出来るカメラを付けた機体が、これからリンリン様に起こる変化を捉えるために、飛翔して距離を取ったのだ。

 一方、魔除けの鈴のイメージを送り込んだエネルギー球は、実体化の直前で動きを止める。

 ここから先はリンリン様に送り込んで一体化させる工程になるので、予め、止まるようにイメージしていたストッパーが働いた形だ。

「これから、リンリン様に、魔除けの鈴を融合します」

 自分自身の覚悟を決めるためにも敢えて言葉にしたのだけど、リンリン様に何かあったらどうしようという不安が頭を過る。

 が、一心に成功を信じることこそが、リンリン様を護る事に繋がると悟った私は軽く頭を振って気持ちを立て直した。

 出来る、大丈夫、成功する。

 呪文のように頭で繰り返しながら、リンリン様を私の脳内の映像の中に描きだした。

 リンとしたたたずまいで私を見上げているリンリン様と、イメージ映像にも拘わらずバチッと視線が交わった気がする。

 気のせいかもしれないけど、リンリン様の覚悟と私への信頼が伝わってくる気がして、気持ちが引き締まった。


 心の中で『行け!』と唱えると、最終段階直前で、動きを止めていたエネルギー球が動き出した。

 ふわふわと宙を漂いリンリン様へと向かって行ったエネルギー球は、その目前でグンと伸びる。

 球体から棒状へと伸びたエネルギー球がそのままリンリン様の頭の上で輪を描いた。

 そのまま高度を下げたエネルギーの輪は、スルリとリンリン様の首に収まる。

 直後、一気にエネルギー球は光度を増して、目を閉じているにも拘わらず思わず視線を逸らしてしまいそうになった。

 そうして、輝きが消え去ると、リンリン様の首には紅白が交互に結われた紐とその先に大きな鈴が下がっている。

 成功を感じた私は息を吐き出してから目を開いて、ドキドキと鼓動を早くし始めた心臓に手を置きつつ、リンリン様に声を掛けた。


「リンリン様、どこか、おかしなところはありませんか?」

 鈴とそれを吊っている紐以外の変化を目で探りながら、声を掛けてみたのだけど、リンリン様から答えが返ってくることはなかった。

 それどころか、身動き一つしない。

 ほんの数秒、返答に時間が掛かっているだけかもしれないけど、何の情報も更新されない時間が不安を掻き立ててきた。

 もうすでに具現化は終わっているので、私が強気である必要は無いけど、今この状況で気弱になるのは、リンリン様に悪影響を与えてしまう気がして、懸命に気持ちを奮い立たせる。

 そうして、もう一度と「リンリン様」と声を掛けてみた。

 すると、その直後、リンととても澄んだ高い鈴音が響く。

「これって……」

 思わず呟いた私に続いて、舞花ちゃんが「鈴の音がしたね」と興奮気味に言ってくれた。

 どうやら不安な気持ちから生まれた様な幻聴の類いではなかったらしい。

 内心ホッとしたところで、リンリン様が津に声を発した。

『主様、待たせて悪かったの。新たな機能の把握に手間取ってしまったのじゃ』

 全く申し訳なさそうには聞こえないリンリン様の言葉だったけど、その事実が逆に私をほっとさせてくれる。

 緩みそうになる口元を引き締めつつ「それで、何かおかしなところはないですか?」と改めて問い掛けた。

『感知出来る範囲では問題ないの……それよりも、試してみたいことがあるのじゃが、少し移動して貰っても良いかの?』

 サラリと質問に答えたリンリン様はそう言って、さっさと歩き出してしまう。

 向かう先は山の方、学校の敷地の端、つまりは結界の端っこだ。

「何をするんですか?」

 慌てて追い掛けながらそう尋ねると、リンリン様は『主様には、あのガラスの板に張り付くようにして集まっている亡者のごとき『穢』が見えるかの?』と返してくる。

 言われて視線を向ければ、結界の外、山へと続くうっそうとした森からはもの凄く嫌な気配が漂ってきていた。

 とはいえ『穢』自体は見えない。

「……見えてません、ね」

 私がそう言うと、リンリン様は『ドローンのカメラが醜悪な姿を捉えておる』と教えてくれた。

 早速、カメラ映像を確認したのであろう志緒ちゃんが「うわっ」ともの凄く嫌そうな声を上げる。

「これは、気持ち悪いわね」

「うぇ~」

 志緒ちゃんに続いて、映像を確認したのであろう結花ちゃん、舞花ちゃんも感想を漏らした。

「凛花、覚悟して見ろ」

 東雲先輩はそう言って、皆が動画を確認していたパッドを私に向ける。

 そこにはホラーゲームに出てきそうなグロテスクなうねうねした赤黒い何かが映り込んでいた。

 巨大な蛇のような姿をしていて、学校の結界にへばりつくようにその体を押し付けている。

 そんな蛇の体のうろこに当たる部分には、人間の顔のようなモノが無数に張り付いて、見ているだけで気持ち悪くて吐き出してしまいそうだった。

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