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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之陸 献身

「そういえば、何故このタイミングで、シャー君を?」

 思い起こせばオリジン以外のヴァイアの集合の切っ掛けになった志緒ちゃんの行動理由が気になって、そう尋ねてみた。

 すると、志緒ちゃんは「あ、ああ、えっと、分度器の精度を確認して貰おうと思って」と説明してから「シャー君お願い」と確認作業を振る。

『了解シャー!』

 即答したシャー君はそのまま結花ちゃんの手の上に載せられた分度器のチェックに入った。

 一方、私の頭の上を定位置にしているリンリン様は『これまでの系を記録と突き合わせたのじゃが』と話し出す。

 何か言いたそうだなという気配を感じたので「どうしたの、リンリン様?」と話を振ってみた。

『うむ。主様の具現化能力について何じゃが……今現在、エネルギー源を埋め込む能力が失われている……いや、奪われてしまっていると思うのじゃが』

「……そう、だね」

 自分でも理由はわからないが、返答に詰まってしまう。

 それでもどうにか頷けたことで、リンリン様は話を進めた。

『わらわ達ヴァイアに、新たに主様が具現化させる防御機能を持った仕組みを埋め込んだらどうかと思うのじゃが』

 リンリン様の提案に、東雲先輩が「確かに、それが出来ればエネルギー問題は解決出来そうだな」と大きく頷く。

 東雲先輩は賛成のようなので、もの凄く言い難かったけど、聞かねばいけないと意を決して私は口を開いた。

「リンリン様、それって、危険じゃないんですか?」

 普段は即座に答えを返してくるリンリン様なのに、返事がない。

「……危険ってことですね?」

 そう踏み込むと、リンリン様は『……どうなるか予測が立たなかっただけじゃ……わらわは普通に能力が増えるだけだと思っておる』と返してきた。

 私はその話を聞いて不安が増してきているのに、どう聞けばいいのか思い浮かばず、モヤモヤが急速に拡大していく。

 そんな状況の中で、志緒ちゃんが「リンリン様~その説明じゃ、リンちゃん、納得出来ないみたいですよ」とモヤモヤしていた私の心情を言葉にしてくれた。

 リンリン様は少し間を置いてから『わらわ達は一応機械だからの……新たな機能を加えた時に、リセットが起こる可能性があるわけだの』と言う。

 リンリン様の言葉で想起された予測が、受け入れがたくて、私は思わず怒鳴るような口調で「そ、それって、リンリン様がリンリン様じゃなくなるってこと!?」と問うていた。

『……大丈夫だ、主様。わらわがそう易々と意識を失うわけがなかろう?』

 まるで子供を諭すような柔らかな口調で言うリンリン様だったけど、私の中の不安は消えない。

 その消えない不安に圧されて、私は「でも、絶対じゃないですよね」と踏み込んでしまった。

『……主様達が危険に足を踏み出そうとしておるのに、わらわ達には指をくわえてみていろというつもりかの?』

「なっ」

 思いがけもしなかったリンリン様の切り返しに、私は言葉を失う。

『わらわ達はただの機械。主様には道具に過ぎぬかも知れぬ……で、あったとしても、いや、であるからこそ、わらわ達の使命として、身を捧げたいと思うておる』

 強い言葉に、私は何も言えなくなってしまった。

 そんな中で結花ちゃんが「大丈夫よ。リンちゃん。ヴァイアの子達は絶対に魂があるだから、絶対に気持ちが消えたりしないわ」と言ってくれる。

 私が視線を向けると、結花ちゃんは自らの両肩に乗る『きらり』と『ぴかり』とそっくりの熱の籠もった目をしていた。

「きらりちゃんとぴかりちゃんの目を見るだけでもわかるでしょ。リンちゃん」

 いつもと変わらない自信に満ちた結花ちゃんの言葉で、私の中の不安が少し和らぐのを感じる。

 直後、頭にリンリン様が跳躍する衝撃が走った。

 トンと音を立てて、目の前に着地したリンリン様がゆっくりと私を見上げ、視線が交わる。

「……リンリン様」

『主様。どうにでもしても必ず自分を保つつもりじゃ。覚悟も気合も十分整っておある……が、わらわは機械ゆえ可能性について、計算して出したことにウソは言えぬのじゃ。どれほど確率がゼロに近づこうと、無いとは言えぬ。だが、主様。わらわ達を信じてくれぬか? そして、主様達を助ける手助けをさせて欲しいのじゃ!』

 リンリン様の思いをぶつけられた後も、私はすぐに言葉を返すことが出来なかった。

 そんな私を心配するように舞花ちゃんが「リンちゃん」と名前を呼ぶ。

「俺は凛花とリンリン達なら問題は起きないし、起きても乗り越えられると思っているぞ」

 力強く断言してくれる東雲先輩に「私も成功するに一票かな」と志緒ちゃんも続いてくれた。

 明るい声なのに、少し震えて聞こえるのは、志緒ちゃんもどこか不安だからなんだろう。

「凛花さん。他の道を探す手もありますよ」

 敢えて別の道を促してくれたのは花ちゃんだった。

 そして、最後に結花ちゃんが「もう決まってるんでしょ? ね、リンちゃん」と背中を圧してくれる。

 私は意を決して、リンリン様を見詰めて精一杯の虚勢を張った。

「主様との約束を破ったら承知しませんからね!」

 声が震えなかったこと、一気に言い切れたことに内心で安堵しつつ、リンリン様を見詰める。

 リンリン様ひっしゅんだけおどろいたけはいを放ってから『上等じゃ!』と不敵な笑みを浮かべて見せた。

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