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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第参章 下地構築
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参之弐拾壱 初めての食堂

 皆が机を向き合うように合わせて、授業と言うよりはグループ学習と言った様相になった。

 席替えをしたばかりだけど、教えやすさもあって、真ん中に私と志緒さんが向き合うように座り、私の左手に舞花さん、志緒さんの左手に結花さんが座る。

 私の右手には東雲先輩が座り、志緒さんの右手に那美さんが座り、それぞれが自分より年下の学年の子を見る形になった。

 一応、那美さんが詰まった時は、今年学習範囲になる私と志緒さん、更に東雲先輩が助け船を出す。

 雪子学校長は教室内にいるものの特に指導することはせず、書類仕事などを熟しながら監督していた。

 花子さんは、私たちの授業中は炊事や洗濯、掃除といったフォローをしてくれている。

 といった流れで、私たちの基本的な授業の態勢が整った。

 このままお互いに教え合って補い合いながら勉強を進めていけば、肌で皆の得手不得手を感じ取れる。

 まあ、この場にいない京一がそんなに細かく把握出来ないので、フィードバックをどうするかという問題はあるけど、それでも実感で皆のことがわかるのは確実にプラスだ。

 そんなことを考えながら、自らの問題集を進めつつ、質問があれば答えたり、一緒に考えるという体でさりげなく誘導を挟み込む。

 私にも覚えがあるけど、単にやり方を教わるよりも、自分で自分なりの方法を見つけたり、理解できたと実感出来たときの方がよく身につくし、忘れないので、そこを重視した。

 この指導方法は生徒と教師という年齢の差があると無理な指導法なので、画期的だとは思う反面、実際の現場では導入しにくいとは思う。

 それでも、どんどんと勉強に前のめりになっている舞花さんと、その刺激を受けて同じく意欲を増してる結花さんの姿をみれば、今の私に出来る最大限の指導だと胸を張れた。

 ちなみに、元々勉強の出来る志緒さんはより一層知識を磨いているし、那美さんも以前よりも問題に向かう姿勢が前のめりになっている。

 流石に指導するというわけにはいかない東雲先輩が、若干孤立奮闘気味なので、そこはどうにかしたかった。


「はい、それでは食堂に移動だよ」

 電子音のチャイムを聞いた雪子学校長は、早々にペンを置くと、立ち上がって私たちに向かってそう告げた。

 丁度午前の授業が終わり、生徒達の暮らす棟にある食堂で花子さんお手製のお昼ご飯を皆で食べることになる。

 実は、京一としては初日に『黒境』が出現した為に、食堂を利用したことが無かった。

 何しろ始業式までは、自室に花子さんが食事を運んでくれて、それで済ませていたので、食堂そのものにも未だ出向いたことが無い。

 その徹底的な隔離ぶりは大いに疑問だったのだが、問題集作りに没頭出来ると考えた私は、敢えて尋ねたりはしなかった。

 今にして思えば、この学校には『神格姿』や『神世界』といった特殊な事情が背景にあったからだと理解出来る。

 そこを差し引いても、気にならなかった当時の私の無関心さというか、視野の狭さというか、猪突猛進ぶりというか、考えの無さに少し呆れてしまった。


「えーと……」

 物珍しいのか、気に入ってくれているのか、何故か初めての食堂への移動は左右の手をそれぞれ舞花さん、結花さんに引かれることとなってしまった。

 生徒達の寮となっている棟には地下一階くらいしかまともに立ち入っていないので、不案内ではあるけども、流石に手を繋がないとはぐれる程方向音痴では無い。

 と、訴えたんだけど、双子揃って「「ダメ?」」と上目遣いで尋ねられては、強く拒否を保つことは出来なかった。


 私と舞花さん、結花さんの三人連れに先んじて、那美さんが一番に食堂に足を踏み入れた。

 直後、くるりと体を回転させて、那美さんが笑顔と主に「ようこそ、食堂へ~」と明るい声で歓迎してくれる。

 お邪魔しますというのも違う気がするし、これからこの食堂を使うことを加味して、私は「これからよろしくお願いします」と頭を下げた。

 すると、そんな私に、食堂の億炊事場から顔を出した割烹着姿の花子さんが、しゃもじ片手に「お姉ちゃんから聞いているかも知れないですが、今日から朝昼夜はこの食堂で皆と一緒に食べて貰いますよ」と教えてくれる。

 私はそれを聞いて一緒に来た面々に順番に視線を向けながら、改めて頭を下げた。

「これからは皆さんとご飯を一緒に食べることになるみたいですね。改めてよろしくお願いします」

「こちらこそー、です」

「うんうん、よろしくー」

 那美さんと結花さんの返答に、頭を上げると「リンちゃんは私の隣ね」と舞花さんが私の手を引く。

「あ、待ってください反対は私が! 同じ五年生ですし!」

「志緒さん!?」

 舞花さんには慣れてきたが、触れ合うことに余り積極的では無いと思っていた志緒さんに手を取られたのに、私は驚いてしまった。

 そんなタイミングで、東雲先輩から「リンは自分の食器はあるのか?」という質問が飛んでくる。

 渡しは余り考えずに反射に近い感覚で「え、あ、無いかもです」と返すと、それが新たな火種になった。

「え、じゃあ、舞花のお茶碗あげるよ!」

「ユイのカップをあげても良いわよ?」

「あらら~、それじゃあ、私のお箸をあげちゃおうかしら~」

「じゃ、じゃあ、私は湯飲み、湯飲みを、リ、リンちゃんにあげます!」

「……コップなら予備がある」

 勢いに驚いたけど、それでも皆が少しずつ分けてくれて必要な分が揃ってしまったことに、私は苦笑しながら「皆、ありがとう」とお礼を伝える。

 けど、ここにとんでもない水を差す発言を花子さんがシレッと放り込んだ。

「あら、皆大丈夫よ。私が、凛花さんと後でお買い物に行ってきますから……」

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