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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾漆章 作戦準備
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拾漆之肆 開門の為に

「神世界ならオレ達も凛花の力になれる。試すだけでも、ダメですか?」

 東雲先輩は真剣な表情で花ちゃんにそう問い掛けた。

 目を閉じて、眉の間の皺を深くして、唸っていた花ちゃんはその後大きく溜め息を吐き出す。

「ダメ……なんて言えるわけ無いじゃ無いですか……私だってなっちゃんを助けたい」

 花ちゃんの苦労の乗った言葉に、中間管理職の悲哀を感じた私は無言でその背中をさすった。

 流石に、そのせいでは無いと思うけども、クワッと目を見開いた花ちゃんは「私だって置いてけぼりにされて憤っているんです。こうなったら、神世界トンネル作戦、成功させましょう!」と鼻息も荒く言い放つ。

 乗りやすい空気だったのもあって、花ちゃんに皆が呼応して「おーー」と声を合わせた。


「まずは、リンちゃんが神世界への扉を開けるかどうかの検証をしましょう。エネルギー量から考えると……」

 そこで溜めを作った花ちゃんが口にしようとした答えを予測した舞花ちゃんが「あ、体験のヤツでしょ?」と笑顔で言い放った。

 東雲先輩は「確かに、あの質量や出来る事を考えると、一番エネルギーを使っている……つまり、神世界の繋がりが大きい可能性が高いな」と舞花ちゃんに同意する。

 話を途中で遮られる形になった花ちゃんは短く溜め息を吐き出してから「そういうことになりますね」と頷いて、自分の考えも同じであることを示した。


「じゃあ、さっそく行きましょう」

 そう言い出した結花ちゃんは、花ちゃんの部屋の奥から大きなリュックサックを持ってきて、中身を配り始めた。

 それぞれの手に一組ずつ渡されたのは、手に持ちペン型の懐中電灯と、バンドで頭に止める形のヘッドライトである。

「装着の仕方はわかるかしら?」

 舞花ちゃんや志緒ちゃん、東雲先輩は黙々と装着し始めているので、結花ちゃんの問いは私に向けてのモノだとわかった。

 林田先生としては何度か付けた経験はあったけど、自分自身……凛花としては記憶にないことだったし、そもそも長い髪が取り付けに邪魔になりそうだったので、素直に「手伝って貰っても良いですか?」と助けを求める。

 結花ちゃんは私の申し入れに、嬉しそうな顔で「もちろんよ、任せて頂戴」と胸を叩いて、私の手に乗せられていたヘッドライトを手に取った。


「痛かったら言って頂戴」

 頭のバンドを締めながら、結花ちゃんにそう声を掛けられた私は「わかりました。お願いします」と答えた。

 徐々にバンドが締められていき、ヘッドライトが頭に固定されたのがわかる。

 髪の毛も綺麗に裁いてくれていて、頭自体はもちろん、髪の毛も引っ張られてる感じも痛みも無かった。

「このくらいでどうかしら?」

 結花ちゃんに「ありがとう、問題ないです」と答えると、花ちゃんが私達に配られたモノとは比較にならない程大きな懐中電灯を手に「それじゃあ。行きましょうか」と出発を促す。

 窓の外は夜のとばりが降りていて黒一色に塗りつぶされていたけど、正直なところ、私はワクワクしてしまっていた。

 これから暗闇に繰り出すという状況に好奇心がうずく、加えて、仲間も一緒というのが大きいと思う。

 それは私だけでなく、皆も同じなようで、全員の目に好奇心の光が宿っていた。


「改めて見ると、とても大きいですね」

 台風、そして、屋内スカイダイビングの体験施設となったコンクリートの塊を見上げながら、花ちゃんはしみじみと呟いた。

 人形用とは言え、そのサイズは教室の一階分の高さ、3メートルはあるんじゃ無いかと思う。

 小学生になって心潮位が減ってしまった私の二人分よりも高いという事実に気付いた私は、今更ながら、とんでもないものを作り出したなと、自分の無茶苦茶ぶりに気が付いた。

 とはいえ、その無茶苦茶のお陰で、神世界トンネル化作戦を実行出来る可能性が出てきたのも事実である。

 今は過去の自分の考え無しな行動を良しとして、次の一歩に進むことにした。


「えっと、それじゃあ、早速、門に作り替えてみますね」

 私はそう宣言して、コンクリートの塊にペタッと手を貼り付けた。

 けど、すぐに「待て、凛花」と東雲先輩に止められてしまう。

 行動を止められた私が、視線を向けると、すぐに東雲先輩は、ストップを掛けた理由の説明を離し始めた。

「門を開くってことは、その瞬間に神世界と繋がるって事だ。黒境の出現とは状況は違うが、神世界には『種』がいる……何の準備もせずに開くのは危険だ」

 そう言い切った東雲先輩の考えに、私は「確かにその通りです!」と大きく頷く。

「『種』の対策をしないわけにはいかないですね」

 私がそう返すと、今度は志緒ちゃんが「それだけじゃなくて、神世界を抜けていった先、なっちゃんのところに出たら『穢』がいる可能性もあるから、そっちの準備もしないとだよね?」と注意点を挙げてくれた。

「確かに」

 私が頷いたのを見て、舞花ちゃんが「えっと、それじゃあ、どうするの? 一端戻る?」と首を傾げる。

 その舞花ちゃんの問い掛けに私は「防御用のアイテムは作れそうな気がしてたから、多分すぐに作れるんじゃないかな?」と答えを返した。

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