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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾陸章 急転直下
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拾陸之参拾捌 三つ目の力

 意図していなかったとはいえ、結果的に放置状態だった結花ちゃんに対して、私は慌てて「ごめんね」と謝罪の言葉を述べた。

 その後で「もう少し続けて貰っていいですか?」と頭の中の棒グラフを比較しながらお願いしてみる。

「わかったわ」

 結花ちゃんの返事に怒気が含まれていないことに安堵しつつ、上限が並ぶタイミングを見逃さないように意識を集中した。

 時間の経過と共に結花ちゃんから送られてくる火行のエネルギーを反映して少しずつメモリが上昇していく。

 その上限が舞花ちゃんの水行のエネルギーと拮抗したタイミングで「結花ちゃん、止めてください」と伝えた。

 すぐに「了解」という返事と共に、エネルギーの流入が停止する。

 初めての筈なのに、エネルギーの操作の巧みさに驚かされた。


 私の体内、右手と左足に水と火の力が宿っているのを確認してから、ゆっくりと目を開いた。

 目を開くと同時に心配そうに私を見ている結花ちゃんとその後ろに立つ舞花ちゃんの姿が最初に目に入る。

「とりあえず、二人のエネルギーは、ちゃんと受け取れたみたいですし、今も保たれてます」

 そう伝えると、結花さんは明らかに表情を緩め「大丈夫そうね」と口にして大きく息を吐き出した。

 結花ちゃんの様子に軽く笑みを浮かべた舞花ちゃんは「えっと、それで、次はどうする……の?」と志緒ちゃん、花ちゃん、東雲先輩を順番に見ながら尋ねる。

 そんな問い掛けに答えたのは東雲先輩だった。

「さっきも少し話したが、凛花が必要とするであろう残る五行は、木行と金行だ。俺と志緒でこれを埋める」

 はっきりと断言した東雲先輩に、志緒ちゃんが少し慌てた様子で「え、決定なの!?」と目を丸くする。

 その後で、志緒ちゃんは「私、その外にエネルギー出すとか出来ないんだけど……」とオロオロし始めた。

 確かに身体強化がメインの志緒ちゃんは、魔法のような力を使う結花ちゃんや舞花ちゃんのようには操るのは難しそうに思う。

 対して、東雲先輩は「飛ばしたり空中を漂わせたりは難しいだろうが、触れていればそこを伝わせて送り込めるんじゃないかと思う」とサラリと返した。


「確かに、やってみるのは大事だね、ウン」

 志緒ちゃんはそう言いながらも、覚悟が決まらないのか、私の左手を両手で握った状態でふにふにと揉んでいた。 

 流石に揉まれ続けていると、舞花ちゃんと結花ちゃんのエネルギーの保持が出来なくなりそうな気がしたので、それをそのまま志緒ちゃんに伝える。

「そ、そうなの!? でも、そういう感覚があるなら、実際に保持出来なくなっちゃうかもだね」

 志緒ちゃんはそういうと手の動きを止めてくれた。

 嫌というわけじゃないけど、どうにも落ち着かなかったので正直助かる。

 私が軽く息を吐き出したタイミングで、志緒ちゃんは「じゃ、じゃあ、このまま、手に力を集めてみるね」と言ってきた。

「わかりました。お願いします」

 そう返した私は息を吐き出しながら、頭の中に先ほどのエネルギーグラフを浮かび上がらせる。

 と、その直後、志緒ちゃんの「はぁ~~~」という多分気合を入れているんだろう声が聞こえてきた。


「それで、どうだ、凛花?」

 東雲先輩の問い掛けに、私はどう返すか困ってしまった。

 多分、志緒ちゃんはエネルギーを送ってくれている筈なんだけど、正直、感覚的にも頭の中のグラフ的にも変化はない。

 とはいえ、ここを誤魔化しても仕方ないので、正直に「志緒ちゃんからのエネルギーは伝わってきてませんね」と申し訳なく思いながら答えた。

「志緒、自分の手を強化するイメージじゃなくて、凛花の体を強化するイメージをして貰っても良いか?」

「え? あ、うん、ちょっとイメージを変えてみるね」

 東雲先輩の指示に、志緒ちゃんが応えた直後、私の中にエネルギーが入り込んでくる感触が生まれる。

「あ、なんか、感じます……エネルギーが入ってきてるかも!」

 少し興奮気味に言ったところで、何も確かめていないことに気が付いた私は「あ、ちょっと、詳しく感じ取ってみるので、少し待ってください」と伝えて意識を集中した。

 私の発言を聞き入れてくれたのか、皆見守る体制に入ってくれたようで、沈黙を保ってくれている。

 その間に私はまず視覚的にわかりやすいエネルギーグラフに意識を向けた。


「あ、えっと、青っぽい緑? 新しい棒グラフが出てます!」

 私の報告に対して、すぐに東雲先輩が「その色なら木行の可能性が高いな」と教えてくれた。

「体の感覚的にはどんな感じがするのかしら?」

 花ちゃんにそう尋ねられた私は「ちょっと間隔に集中してみます」と答えて、意識の矛先を変える。

「えーと、まず握られているのもあると思うんですが、志緒ちゃんからのエネルギーは左手に集まっている感じがします……それで、直接触れ合ってるからかもですが、肌を何かが伝わってくるような感覚は無いですね」

 感じたままを声に出すと、東雲先輩がすぐに「志緒、そのままの状態で凛花の手を離せるか?」と問い掛けた。

 対して志緒ちゃんは「試してみる」と答える。

 直後、私の手に触れていた志緒ちゃんの手が離された。

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