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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾陸章 急転直下
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拾陸之参拾伍 実験開始

「どうやってエネルギーを送り込むのかということと、そもそもエネルギーとは何か……ということが気になりますね」

 花ちゃんの答えに、私はすぐに答えを頭に浮かべることが出来なかった。

 エネルギーは普通は目に見えない存在で、イメージとしては光を放っている具現化するモノの元となる……つまりは物質化する謎の存在である。

 では、それが何かというと、実は私自身よくわかっていなかった。

 その事に驚愕していると、私のように考えを巡らせ始めていた皆からそれぞれ意見が出てくる。

「えーと、舞花は氷とか水を出す時に体から出したり、空中から集めたりするモヤモヤしたモノのことだと思うんだけど……」

 お腹を擦りながら言う舞花ちゃんに続いて、結花ちゃんは「ユイも体の中とか空中から集めてくるモノがあるけど、モヤモヤって感じじゃなくて、なんか熱いって感じのモノだと感じてたわ」同じくお腹を撫でながら言った。

 双子だからか、エネルギーの感じ方は違うモノの、同じものを認識しているように思う。

 次いで、志緒ちゃんが「私は嗅覚と聴覚が鋭くなったり、筋力が強くなったってかなって感じるけど、リンちゃんやマイちゃん、ユイちゃんが言うような普段感じない何かっていうのはわからないかも」と言いながら大きな溜め息を吐き出した。

 その志緒ちゃんの肩を落とす姿に、声を掛けようと思ったのだけど、その口が「三人が言ってるのは、霊力とか、魔力とか、そういう力だと思うんだけど、何で私は感じられないんだろ……」と言い出したので、これは変に触れると話がこじれるヤツだと察して、伸ばし掛けた手を引っ込める。

 代わりに東雲先輩が「志緒、俺も身体強化タイプだから似たところがあると思うんだが、意識を集中すると、体に力が漲る感じがしないか?」と問い掛けた。

 そう尋ねられた志緒ちゃんは腕組みをしてしばらく唸ってから「耳がピクピクと動いたり、鼻がヒクヒクと動いたり、足や腕に普通の状態より力がこもってる感覚があるけど……」と口にする。

「志緒の体に変化を起こしている何か……それがエネルギーなんじゃないか? 例えば、腕や足に溜まった力を、そのまま凛花に送り込めれば、エネルギーを渡せるんじゃないか?」

 東雲先輩にそう言われた志緒ちゃんは自分の手を見詰めながら握ったり拡げたりを繰り返し始めた。

 それを少しの間繰り返した後で、志緒ちゃんは「つまり、私は気力を操るタイプだったという……いえ、もしかしたら魔力を身体強化エネルギーに変換しているタイプかしら……魔法みたいな力が使えないんじゃなくて、魔法の力を身体強化に回してるって考えたら、スゴく納得出来るわ」ともの凄い早口でブツブツ言い始める。

 東雲先輩は、志緒ちゃんのスイッチを入れたにも拘わらず、スッと目を逸らすと「舞花、結花、そのモヤモヤや熱を凛花に伝えられるか試してみよう」とわかりやすくはっきりと話題を切り替えた。


「それじゃあ、舞花ちゃん、お願いして良いですか?」

 私が指名すると舞花ちゃんは横に立つ結花ちゃんに視線を向けた。

 無言で結花ちゃんが頷くのを確認してから、舞花ちゃんは「うん。試してみよう」と私に振り返る。

「まずは、舞花の中のモヤモヤを渡してみるね」

 舞花ちゃんの言葉に頷きつつ「私は具現化の準備状態に入るので、合図をしたらお願いします」と伝えると、舞花ちゃんは不安そうな顔で待ったを掛けてきた。

「どうしました?」

 私がそう尋ねると、舞花ちゃんは不安そうな顔で「えっと、球魂の状態……神格姿になってる時しかやったことが無いんだけど……このままリンちゃんに触ってれば良いのかな?」と聞いてくる。

 一瞬どうしたら、いいのだろうと思ったけど、この場で仕切るのは自分の役目だと考えを改めた私は、間違っていても試すことが大事と判断して決断を下した。

「まずは、今の状態で試して、ダメなら次に球魂状態で試しましょう」

 私の返しに、舞花ちゃんは「うん。わかった」と笑みを交えて答えてくれる。

 不安を少しは拭えたのかもしれないと考えると、それだけで判断が間違ってなかったと思えてきた。

 その小さな自信と達成感が消えないうちに、私は行動を起こす。

「それじゃあ、改めて私が合図をしたら、モヤモヤを送るイメージをしてください」

「うん」

 舞花ちゃんの返事を聞いて私は目を閉じると、改めて人形の具現化を開始した。

 頭にイメージを浮かべ、必要なエネルギーを捻出するタイミングに到達したが、やはり何かが開くことはない。、

 ここで舞花ちゃんの力を借りるために、私は「お願いします」と声を掛けた。

「う、うん、やってみる!」

 緊張の滲んだ舞花ちゃんの声が耳に届く。

 その後しばらくの沈黙を挟んで、舞花ちゃんが尋ねてきた。

「え、えーと、なんか、舞花の中の力が上手く動かせないから……空気の中の力を動かすの試してみて良い?」

 体内のエネルギーは動かせないのかと、頭の中でメモしつつ、私は「はい。お願いします」と次のアプローチをお願いする。

「た、試してみるね!」

 少し動揺気味に聞こえる舞花ちゃんの発言の後で、急に私の右手に変化が起こった。

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