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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾陸章 急転直下
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拾陸之弐拾漆 始まり

「私の考えでは、那美さんが『林田京一』を凛花さんから分離し逃走した。その際に情報や記憶に隠蔽もしくは改竄をした……と思っている」

 月子先生はこの瞬間までの僅かな時間とやりとりだけで、そこまで思考を巡らせていた。

 ほぼ、私たちの認識通りであることには、驚きよりも、さすがという思いの方が強い。

 月子先生は私や雪子学校長から反論や異論が挟まれなかったことで、肯定されたと判断したらしく、そのまま次の行動に移った。

「オリジン、現状の記録監視は出来ているか?」

 月子先生の問い掛けに、学校長室のスピーカーから『学校長室内映像は24時間録画状態になっています』という答えがが返ってくる。

「録画状態は継続、更にリアルタイムで、これから録画を通常状態に戻す指示が出るまで、リアルタイムで複数の記録メディアに同時録画して欲しい」

『了解しました。開始まで少々時間を頂戴します』

「わかった」

 月子先生とオリジンの身近なやりとりから、わずか数十秒で『多重記録を開始しました』との報告が上がる。

 それを聞いた月子先生は、今度は「現状、データ上に所有者の設定されていない端末類について、その存在を把握しているか?」と問うた。

 すると、オリジンから『複数台の対象端末がネットワーク上に確認されたため、ネットワークからの強制排出と物理的所在の確認が既に完了しています』という報告が上がる。

 報告を聞いた月子先生は、少し考えてから「オリジンの見解として、掌握していない端末の存在はあり得るか?」と質問した。

 オリジンは『可能性はかなり高いと思われます』と断言する。

「根拠を」

 月子先生に望みに応えるように、オリジンは『構内の端末の型番、納品・管理記録等から導き出される管理番号に、いくつかの欠番が見られ、これに関する情報が抹消され、一方で、ログ上に存在していた記録が2時間9分程前に確認されているためです』と説明した。

「追うことは出来るか?」

『現在地は不能ですが、ログから、最終認識地点は算出出来ています』

「どこか?」

『葛原志緒の私室です』

 オリジンの回答に、月子先生は少し唸ってから「志緒さんの私室から、未確認の端末類を認識出来るか?」と問う。

『室内確認用のカメラでは視認範囲内に確認出来ているモノは、葛原志緒の私物か、彼女に貸与されているモノだけです。現状、ネットワークから隔離しているヴァイアに接続すれば、物理的確認も可能となります』

 月子先生は視線で雪子学校長と何か会話をした後で「シャー君とリンリン様は、ネットワークに参加させた場合の危険性(リスク)が高い……現状の端末に関しての創作はここまでにしよう」と話を区切った。

 直前に、雪子学校長との何らかのやりとりをしていたので、私に対する説明なんだろうと判断して、理解をしたことを伝えるために頷いてみせる。

 月子先生はそんな私に笑みを浮かべると、その一瞬あとに、酷く深刻な表情を浮かべていた。


「まず、これは個人情報に関わることだ……ゆえに、覚悟だけはしておいて欲しい」

 月子先生の言葉に私は無言で頷いた。

 その確認が、私にだけ向けたモノであったことを示すように、頷きを切っ掛けに月子先生は話し出す。

「三峯那美さんは元教員だ」

 私が口にした「……教員」という言葉に頷いた月子先生は、テーブルの上に東日本を中心に描いた地図を拡げた。

 その地図上でまずは緋馬織を指さす。

 月子先生はその後で「こことは違う関東西部の『黒境』出現地で、われわれ姉妹のように学校を管理する一族の一員だった」と指を関東の西にズラし、場所を特定させないためか、大きくその地域を囲むように円を描きながら語った。

 単純に昔の話というだけでは無く、月子先生の口にする『だった』から嫌な気配を感じて身が震える。

 そんな心理的な不安を感じて、黙ってしまった私に代わり、雪子学校長が踏み込んだ。

「月子、その元教員が、私の能力で肉体を若返らせてまで、生徒として我が校にいた理由はなんだい?」

 雪子学校長の言葉からは、普段なら必ずどこかに紛れている温もりのようなモノが失われていて、状況が深刻であり、同時にそれほど真剣に挑まなければならない質問だという事が伝わってくる。

 一方、答えを口にすることになる月子先生も、少し躊躇いがあるのか、目を閉じてほんのしばらくの間を開けた。

 が、覚悟を決めて目を開いた後は、直前の足踏みなど無かったかのように、口早に事実を並べていく。

「彼女の一族が管理していた『黒境』は学校ごと崩壊しており、神格姿を含め、無事なのは……彼女一人しかいない……彼女が緋馬織で体を巻戻し続けても任務に従事し続けているのは、彼女自身の要望を受けてのことだ」

 そこで一端言葉を止めた月子先生に対して、自分の中の直感にそれは聞いてはいけないと警告を受けながらも、私はつい「その学校はどうなったんですか?」と尋ねてしまう。

 月子先生は私の問いに直接答えることなく、黙ったままで静かに指を滑らして、昨今完成したばかりの人工のダム湖の上に指を重ねた。

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