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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾陸章 急転直下
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拾陸之弐拾参 アナログ

 興奮気味に言葉を続けていた私の肩に触れながら、月子先生は「凛花さん、落ち着いて」と声を掛けてくれた。

 お陰で暴走気味に言葉を発していたことに気が付いた私は、一端息を吐き出して気持ちを落ち着かせる。

 気持ちをぽち付けるために長く息を吐き出した私に、月子先生は落ちついた口調で「まずは『封印のブレスレット』について話して貰えるかな?」と声を掛けてきた。

「はい」

 月子先生に頷いたところで、頭に何も浮かんでこないことに気付く。

 直前、はっきりと言葉にしたはずの『封印のブレスレット』がなんだったのかがわからなくなっていた。

 そのせいで黙り込んでしまった私の様子を見た月子先生は「ひょっとして、頭に何も浮かばないのかい?」と尋ねてくる。

 下手に隠しても意味が無いと判断した私は「はい」と頷いた。

 寸前まで勢いのままに話していたのに、今はそれがなんだったかも思い出せないことに不気味さだけがじわじわと膨れ上がっていく。

「凛花さん、落ち着いて。君だけじゃなく、私たちも意識を上書きされている。これは能力によるモノだと思われる」

 月子先生の私だけじゃないという言葉に、気持ちがフッと軽くなるのがわかった。

 同時に、自分が忙しなく呼吸を繰り返していたことにも気付く。

「ともかく、今は私たちもいる。一人で考え込みすぎないように」

 月子先生の言葉に「はい」と頷いたところで、雪子学校長が「可能性はあまり高くはないが……」と口にした。

 私と月子先生が視線を向けると、雪子学校長は「人間の記憶とデジタルデータは書き換えられているかもしれないが、紙資料ならどうだろうかね」と言う。

「紙資料……ですか?」

 私の言葉に雪子学校長は頷いてから「どうもデジタルとは相性が悪くてね。これまでの記録は全て紙に打ち出してある」と苦笑交じりに答えた。


 久々に訪れた学校長室には、隠された地下室への階段があり、雪子学校長の先導で降りていった。

 その先で目にしたのは床から天井まで無造作に積み重ねられた紙の山である。

「雪姉、流石にこれは酷すぎないか?」

 紙の山をマジマジと見詰めながら、月子先生は盛大に溜め息を吐き出した。

「月子、今はそこじゃない。重要なのは私たちが忘れ得ている情報をつかみ取れるかどうかだ!」

 力強い言葉で言い切った雪子学校長はそのまま、紙の山に歩み寄って手に取る。

 呆気にとられて、そんな雪子学校長の行動をみていると「君たちも探したまえ」と怒り気味の言葉が飛んできた。


 紙の山の探索から解放された私たちは、学校長室に戻ってきていた。

 応接セットに腰を下ろした月子先生が苦笑気味に「正直、雪姉のアナログ依存症のお陰で助かった感じだね」と言う。

 月子先生の言葉がチクリと刺さったのであろう雪子学校長は咳払いをしてから「まあ、私のことはともかく、状況を整理しよう」と提案した。

 その言葉に従うように頷いた月子先生が真っ直ぐ私を見詰めて「まず、君は『林田京一』についてどういう認識だい?」と問い掛けてくる。

 私は頷いてから、その名前で思い出せる情報を言葉にした。

「はい。今年からこの学校に赴任された先生で、私たちの担任……新学期早々に怪我をされて入院をしている……と」

 月子先生も雪子学校長も同時に頷く。

「私も月子もそういう認識だ」

 雪子学校長に次いで「だが……」と口にした月子先生は数枚の資料を拡げた。

「林田京一は君自身であり、君は『神格姿』を得たことで、今のその姿『卯木凛花』になった」

「……そう、みたい、ですね……」

 資料に目をやりながら私は頷く。

 でも、私の中には林田京一だった記憶がまるでないせいで、そうなのかとはなら無かった。

 ただその一方で思い出したことがある。

「私が、この、林田先生だったという記憶は無いんですけど……でも、お風呂で見た覚えがあります」

 頭に浮かんだままを言葉にしたので、私自身状況を把握出来ていたわけじゃなかった。

 だから、上手く伝わらなかったのだろう月子先生は少し唸ってから「それは鏡に映った自分を見たとかではなくてかい?」と聞いてくる。

 その問いに考える間もなく、私は「違います」と断言していた。

 同時に私は自分の呼吸が荒くなっているのにも気付いたけど、これが記憶を引き出す切っ掛けになるのではと思っていた私は、落ち着かせようT歩する月子先生を手で制して意識を集中させる。

「そ、そう……お、お風呂に、な、那美ちゃん……那美ちゃんと入っていて……わ、私から、林田先生が……分離した……」

 そこまで言い切ったところで、限界を感じた私は一端集中を途切れさせた。

 荒い息を繰り返す私の背を撫でながら月子先生は「無理をしすぎだ」と強めに叱られてしまう。

 その後でギュウッと体を抱きしめながら「だが、よく頑張った」と行って頭を撫でてくれた。

 触れたからだから伝わってくる月子先生の温度に、気持ちが安らぐのを感じていると、雪子学校長が「那美……私にもその名前に聞き覚えがある。少し待っててくれ」と口にして立ち上がる。

 そのまま階下へと掛けていく雪子学校長を見て立ち上がった月子先生は「私も雪姉を手伝ってくる。君はここで少し休んでいたまえ」と口にしてどこから取り出したブランケットを掛けてくれた。

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