拾陸之拾玖 再開
「私が参加していないことで、皆の連携の見事さがよくわかりました。私も足を引っ張らないように、全力で取り組む決心が付きました」
私がそう断言すると、皆がこちらに期待する目を向け始めたのがわかった。
「雪子学校長、月子先生、花ちゃんから、許可をしっかりと貰えるように、能力の完全制御を目指して、修行を再開しようと思います!」
モニタールームでした決意を改めて表明することで、私の中にやり遂げようという気持ちが、より一層強くなる。
それを実感しながら「ちゃんと皆を支えるように頑張るので、これからもよろしくお願いします!」と言って、私は深く頭を下げた。
そのまましばらくの沈黙の後、結花ちゃんが「ちゃんと、鍛えてあげるから安心して良いわよ」という声が聞こえてきて顔を上げると、舞花ちゃんが「舞花も教えてあげるからね!」と言ってくれる。
「二人とも、ありがとう」
私が二人にそう伝えると、志緒ちゃんが「待って、りんちゃん! 私だって協力するんだから、忘れないで!」とブンブンと腕を振りながら参戦してきた。
更に、東雲先輩も「俺に出来る事があれば言ってくれ」と続く。
最後に那美ちゃんが「私がリンちゃんの能力を引き出してあげるわぁ」と微笑んだ。
他の皆と違って、なんだか背中がゾクッとする那美ちゃんの言葉に、顔が引きつりそうになるのを無理矢理押さえつけて「皆、ありがとう」と改めて頭を下げる。
その上で「絶対、パワーアップしますからね!」と宣言した。
けど、曽於宣言に対して返ってきたのは、志緒ちゃんの「これ以上パワーアップされると困る」という真面目な顔で放たれた一言で、舞花ちゃんも「舞花もそう思う」と続く。
結花ちゃんまでもが「リンちゃん、適当が大事だよ」と言いだし、東雲先輩も「凛花は現時点でもの凄い自覚を持った方が良い」と心配そうな目を向けられてしまった。
思わず「なっ……」と言葉に詰まった私に、那美ちゃんが「じゃあ、私がぁ~リンちゃんのぉ、パワーを減らしてあげるねぇ~」と言い放つ。
思わず「へ? どういうことですか!?」と強めに聞いた私に、那美ちゃんは「力が強すぎるのがぁ、危ないからぁ、減らしちゃったらぁ、解決でしょぉ」と首を傾げた。
那美ちゃんに、どう返したらわからず、私は困惑しながら「そ、そうかな?」と口にする。
すると、那美ちゃんは「私に任せてくれればぁ、リンちゃんが悩まなくて済むようにしてあげるぅ」とドキッとする程妖艶な笑みを浮かべて見せた。
「正直、思っていたよりも早かったよ」
夜、早速再開された特訓の最初に、月子先生からそう言われた私は「正直、今日の『種』の件やモニタールームでのことが大きかったです」とその理由を答えた。
すると月子先生は「責任感の強い君なら、まあ、そうなるか」と言う。
それを聞いた私はジト目で「狙い通りって事じゃないんですか?」と問うた。
対して月子先生は「言っただろ? 思ったよりも早かったって」と言って軽く左右に首を振る。
「そういう意図が無かったと言えばウソになるけど、決断までの君の心理を流石に完璧に読むことは出来ないよ」
微妙な言い回しに私は「……結局は予想してた通りって事じゃないですか、それ?」とツッコんでみた。
対して月子先生は少し間を開けてから「妙に引っかかるね」と苦笑する。
その指摘に対して、私は大きく深呼吸したから「……そうかもしれないです」と同意した。
月子先生は「自己分析ではその原因に予想は立っているかな?」と聞いてくる。
少し考えてから、私なりの結論を口にすることにした。
「焦り……ですかね……」
対して月子先生は「というと?」と更なる言葉を求めてくる。
上手く言語化出来ているわけじゃないけど、自己分析はとても大事なことなので、一生懸命考えてから説明となる言葉を言い加えた。
「考えがコントロールされているんじゃ無いかって言う不安が……あるからだと思います」
そう言い終えた時、自分が無意識に封印のブレスレットに触れているのに気付いて、内心で重症だなと自覚する。
月子先生は私の頭を撫でながら「不安なら、もう少し間を開けてもいいんだよ」と声を掛けてくれた。
あまりにも優しい言葉に一瞬視界が揺らぐ。
このままだと泣き出しかねないので、必死に堪えて「大丈夫です!」と声を張った。
その上で「能力を封印出来る者を具現化出来たので、人の意思に操作されるのを防ぐような道具を具現化します!」と宣言する。
対して月子先生は「精神操作系の能力に対抗する手段の確立が出来るなら、君だけじゃなく、皆のためにもなるね」と頷いてくれた。
「現時点では確認されていないが、そういう能力を有した『種』が出g点する可能性もあるし……」
そこまで言った月子先生の言葉を引きついで「神様を作ろうとするような存在への対抗策にもなりますよね?」と聞く。
月子先生は軽く笑みを浮かべると「もちろん」と頷いた。
更に「でも、何よりも効果的なのは、君がそれを生み出すことでより精神的な安心を手に出来ることだと思う」と私を見詰めながら言う。
なんだか気恥ずかしさを感じて、視線を逸らしつつ「じゃあ、それが今の目標ですね」と話を締めた。




