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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾陸章 急転直下
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拾陸之拾漆 事後

 モニターから視線を外さずに、月子先生は「オリジン、『黒境』の様子に変化は?」と問い掛けた。

 間を置かずオリジンから『揺らぎが発生しました。『種』討伐に成功したと思われます』と報告が成される。

 その言葉に、私は息を吐き出した。

 呼吸が楽になったと感じると共に、体中に疲労感が満ちている事に気が付く。

 どうやら、神世界の状況に見入っている間、ずっと緊張していたようだ。


「オリジン、花子に討伐完了を伝えてくれ」

『了解しました』

 オリジンの返事の直後、花ちゃんの視界に変化が訪れた。

 恐らくメッセージの着信に気付いたのだろう。

 その予想が正しかったのだと示すように、スマホが現れ、月子先生が伝言を依頼したメッセージがそのまま表示された。

『討伐完了です。撤収しましょう』

 即座にそう指示を出す花ちゃんに、振り返った五人がそれぞれ頷く。

 花ちゃんも頷いてから『帰りも隊列は先ほどと同じで行きます』と告げると、東雲先輩は汚れを払うように大きく振るった後、刀を納めて足を踏み出した。

 距離はそれなりにあった筈なのに、どういう移動方法なのか、あっという間に東雲先輩は皆を擦り抜けて、気付けば花ちゃんの横を擦り抜けていく。

 次いで志緒ちゃん、舞花ちゃん、結花ちゃん、那美ちゃんと花ちゃんの視界から消えていった。

 最後に花ちゃんは両手に一本ずつ、黒一色の無骨なクナイを出現させる。

 もの凄いスピードで左右一斉にクナイを振るうと、腕が止まった瞬間にはもう手の中から消えてしまっていた。

 間もなくカッというなにか堅い者同士がぶつかるような音が二つ重なって聞こえた後、床に転がっていた二ツ井の氷の塊がほぼ同時に大爆発を起こす。

 爆発と共に見えた赤い炎、煙、砂埃が収まると、氷球のあった場所には小さなくぼみだけが残っていた。

 それを確認した上で花ちゃんは踵を返すと、既にかなり奥にまで進んでいる皆を追い掛ける。

 東雲先輩の動きにも驚かされたが、花ちゃんの動きももの凄く、キツネ人間姿で肉体強化をした時のような驚異的な早さで、あっという間に皆に追いついた。

 皆が一群になると、そこからは皆ほぼ同じペースで移動を始めた。

 駆け足程ではないものの、早足くらいの歩調で、一本道の洞窟を進んで行く。

 ややあって『黒境』が皆の進む先に見えてくるが、歩調は変わらなかった。

 先頭の東雲先輩と志緒ちゃんが『黒境』に到達した直後差卯に分かれて振り返る。

 その間に、舞花ちゃん、結花ちゃん那美ちゃんの順で『黒境』をくぐり抜けていった。

 三人の姿が消えると、志緒ちゃん、東雲先輩の順で『黒境』をくぐり抜け、最後に背後を確認してから花ちゃんも『黒境』をくぐる。

 花ちゃんの視界を映し出しているモニターが、僅かな時間黒一瞬に塗りつぶされた後で、周囲の風景から、学校の地下にある『黒境』の部屋へと変わった。

 部屋に戻った花ちゃんはすぐにベッドに視線を向ける。

 それぞれゆっくりと体を起こす皆の姿を見た私は、気付けば大きく息を吐き出していた。


 改めて花ちゃんの視界を映すモニターに視線を向けると、そこには『黒境』が中央に映し出されていた。

 徐々に柱の根元から揺らぎが大きくなっていき、徐々に消え去っていく。

 最後にはなにもなくなって、後ろの壁が見えるだけになった。

「行こうか、皆も無事戻ってきたようだし」

 月子先生にそう声を掛けられた私は、一テンポ遅れたものの、すぐに立ち上がって「はい」と応える。

 その動きを見ていた月子先生は「オリジン、外に戻る」と告げると、真っ直ぐに部屋の入口へと向かった。

 厳重な施錠がされていたのだと肆MS洋に、何種類かの機械の駆動音と共にゴゴゴという重低音が響いてくる。

 意識が皆の状況に向いていたのもあるけど、振動の類いはなく、注意していなければ音もほとんど聞こえてこないので、入室の時には気付かなかったのも頷けた。

 そんなことを思っている内に静香にモニタールームの扉に僅かな隙間が生まれ、それを合図に月子先生が手を掛けて押し開く。

「とりあえず、君の部屋に行くとしよう」

 扉をくぐり抜けながら言う月子先生に、私は「わかりました」と頷いた。


 無事『種』の討伐は完了したということで、部屋に戻った私は早速食器の片付けを始めた。

 状況的には一方的な戦闘ではあったけど、戦闘後は脳波を中心としたバイタルのチェックが行われるのでこちらに戻ってくるのには少し時間が掛かる。

 私はその時間で、引っ越しそばを片付けて、デザートの準備をすることにしたのだ。

 皆が喜んでくれる様子を想像しながら、作業を進めていたのもあってか、思いの外テキパキと作業が進んで行く。

 食べきれないことも想定しながら、小袋入りのお菓子を中心にデコレートして、大皿を三つ、人数分のコップを並べたところで、月子先生が食堂から東雲先輩の使っていた台車を利用して、ジュース類を運んできてくれた。

 私なりに並べたお菓子にジュース類を組み合わせて並べると、引っ越しパーティーも、完全に第二部に移ったと見た目にも理解出来る様相に変わる。。

 結果、一番で駆け込んできた舞花ちゃんを、部屋に入った瞬間に、「わぁ!」と感嘆させる事に成功した。


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