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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾陸章 急転直下
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拾陸之拾陸 討伐

『花ちゃん、多分、あの辺りにいると思うにゃ』

 聞こえてきた声に顔を上げると、花ちゃんの視界を映し出しているモニターに、画面奥を示しながら話しかける声の主である志緒ちゃんの神格姿が映し出されていた。

「君の決意に応えられるよう協力することを約束するよ」

 早口で言う月子先生は「だが、今は無効の状況に集中しよう」と言う。

「はい」

 頷きと共に応えた私は、モニターの中で展開されるこれからに意識を集中した。


 現在の位置までずっと続いていた洞窟は、大人が3人程度なら横に並べるものの、決して広いとは言えなかった。

 けど、志緒ちゃんが指し示した先は奥に行く程天井は高くなり、横幅も広がっているようで、全容が見えたわけではないけど、恐らくドーム状になっているんじゃないかと思う。

 花ちゃんの視点では『種』は見えていないものの、志緒ちゃんがいると推測したのも頷ける情景だった。

『ユイちゃん、いい?』

 花ちゃんの言葉に『もちろん』と返した結花ちゃん赤いドレスの裾を優雅に揺らしながら皆より一歩前に出ると、すぐに次の行動に移る。

 左右に両手を開いた状態で伸ばすと、その掌の先に左右一つずつのバレーボール大の炎の球が出現した。

 結花ちゃんが拡げた腕を弧を描くように前方に移動させると、それに従って炎の球も結花ちゃんの前へと移動する。

『散りなさい!』

 命令を下すと共に、結花ちゃんは開いていた手を握った。

 すると二つの炎の球は弾けて、それぞれ五つ、合計10個の小さな火の玉に分裂する。

 更に結花ちゃんが『いけ!』と命令を下すと、10個の火の玉はそれぞれドームの端を目指して別方向に飛んでいった。

 間もなく、通路の先開けている場所の全容が、飛んでいった火の玉に照らし出される。

 事前の予測通り、ドーム状だった火の玉に照らし出された通路の先に、正体不明の黒い物体が蠢いているのが見える。

 にょろにょろと動く物体は蛇のように見えるけど、その長さはかなり短かった。

 まるで恵方巻きで食べるような太巻きが蠢いているように見える。

 花ちゃんはその姿を確認すると、すぐに次の指示を出した。

『なっちゃん、その後はマイちゃん、お願いね』

 具体的なことはなにも言っていないが、花ちゃんの言葉に軽く頷いた那美ちゃんはユイちゃんの横まで移動すると、クイッと右手を振るう。

 すると、花ちゃんの視点で後方、やってきたと思われる方向から高速で飛来したホウキが那美ちゃんの前でピタリと停止した。

 那美ちゃんが無言でホウキの柄を握ると、直後、ホウキ全体が淡い光に包まれる。

 全体が光に包まれて間もなく、ホウキはその姿を杖に変えた。

 私の具現化現象に似た変化だと思っていると、那美ちゃんは手にした杖を振るう。

 なにが起こったのかはわからないが、その直後太巻きのような蛇のような何かが宙に舞い上がった。

 おそらくだけど、地面から砂ボイこりのようなモノが舞い上がったように見えたので、風か空気を操る魔法だったんじゃないかと思う。

 そして、黒い物体を浮かせることで那美ちゃんの役目は終わったらしく、待機していた舞花ちゃんが、那美ちゃんとは反対側から結花ちゃんの横に並んだ。

 舞花ちゃんは結花ちゃんの動きをなぞるように、開いた手を左右に伸ばす。

 直後、結花ちゃんの時と違い、手の先には水の球が出現した。

 サイズは結花ちゃんの炎の球と同じくバレーボール大で、弧を描くように手を動かすと、水の球も同じように舞花ちゃんの正面へと移動していく。

 ギュッと高速で力強く手が握られると、二つの水の球は炎の球の現象と同様にそれぞれ五つ、合計10個の球へと分裂して、それぞれの軌道で飛んでいった。

 火の玉との違いはその向かう先で、弧を描くような軌道を描いたそれぞれの10個の水球は、ただ一点に収束していく。

 那美ちゃんが魔法で浮かせた黒い物体へと、10の異なる軌道で飛来した水球が殺到した。

 直後一つの水の塊となった水球の中に黒い物体が閉じ込められる。

 一方、一連の動きを見ていた舞花ちゃんはスッと右腕を頭上に伸ばし、パチンと指を鳴らした。

 それを合図に黒い物体を包み込んでいた水球は下から上に高速で凍結していく。

 全体が白く凍り付いたことで芳名だった水球の中は僅かに見えにくくなり、水球から変化した氷球は、その冷たさを示すように白いモヤを纏っていた。

 一切の打ち合わせもなく、それぞれが自分の役割を把握しているのがわかる一連の流れの無駄の無さに、私はぽかんとモニターを見詰めることしか出来ない。

 その一方、花ちゃんは『まーちゃん、トドメを』と最後の指示を下した。

 東雲先輩は颯爽と皆より一歩前に歩み出ると『木行、大典太光世』と呟く。

 呟きの後、身に付ける五振りの刀の内、左腰の二振りの達から下側に下げられていた一振りを、東雲先輩は一気に抜き放った。

 時代劇で見るような刀よりも幅は広く、そりも強く見えるその人振りは、がっちりとした刀身はその切っ先に行く程波紋が鋭さを増している。

 迫力のある刀に目を奪われた直後、東雲先輩諸共、それは消えた。

 直後、モニターに映し出された花ちゃんの視線の先、黒い物体を閉じ込めた氷球が左右に両断される。

「えっ」

 思わず声を漏らした直後、ゴッと音を立てて地面に落ちた真っ二つになった氷球の更に奥に、ゆらりと東雲先輩の姿が現れた。

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