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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾陸章 急転直下
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拾陸之伍 マッド

 私、舞花ちゃん、結花ちゃんが衣装製作の練習となったので、志緒ちゃん主導……というか、志緒ちゃんの勢いでカードチームに、那美ちゃんと東雲先輩が加わる形で、今日のチームは決定となった。

 衣装作りなのもあって、今日の監督は花ちゃんで、志緒ちゃんたちの方には月子先生が付いてくれるらしい。

 ヴァイアの中からは、私に付いてきたリンリン様、舞花ちゃんのステラ、結花ちゃんのきらりとぴかりが私たちと行動を共にすることになった。

 リンリン様は大概私に付いてくるのもあってか、那美ちゃんはその事については特になにも言わない。

 その代わりではないけど、那美ちゃんからは「リンちゃんは能力の開発をする気が無くなってしまったの?」と真剣な顔で質問された。

 私は「そんなことないけど、少し休憩を挟んだ方が良いって、先生達と話して決めた」と答えたけど、那美ちゃんの期待と違ったのか、表情は晴れず、そのままお互いに黙ってしまって話が終わっている。

 それがどうにも気になってしまって、集中が途切れがちになってしまっていた。


「リンちゃん?」

 耳元で声を掛けられた私は、急速に回想から現実に意識を引っ張られたことで「え……」と声を漏らして瞬くことしか出来なかった。

 そんな私に、声の主である舞花ちゃんは心配そうに「大丈夫?」と上目遣いで聞いてくる。

 衣装作りの作業には、未だ針は登場しないけど、はさみやカッターナイフは使うので、私は頭を振って気持ちを改めた。

 突然の奇行に、心配レベルを跳ね上げてくれた舞花ちゃんが「リンちゃん!?」と目を丸くする。

 まずは正気を伝えねばと考えて、私は努めて穏やかに説明を開始した。

「今、違うことを考えてたから、集中しようと思って、頭を振って気を取り直したんだよ」

 私はありのままを説明したんだけど、舞花ちゃんの顔は驚きから『なんで?』といわんばかりの困惑に変わる。

 苦笑しそうになるのを、表情筋に力を込めて阻止した私は「今、はさみとかカッターナイフを使う作業をしているでしょ? ちゃんと集中してないと危ないと思って」と説明を加えた。

 ここまで来ると、舞花ちゃんにも私の行動の理由が受け取って貰えたようで、なるほどという表情に変わる。

 その表情の変化に安堵した私の背後から「そうですね」と花ちゃんが同意してきた。

 振り返ると、花ちゃんは「刃物を使う時は余計な考えをしないのはとても大事です、マイちゃんもユイちゃんも気をつけてくださいね」と双子に振る。

 素直に手を挙げて舞花ちゃんは「はーい」と返事をして、結花ちゃんは「心掛けるわ」と頷いた。

 二人の反応に、満足そうに頷いた花ちゃんは、ゆっくりと私に視線を動かすと「ところで、なにを考えていたか聞いてもいいですか?」と問うてくる。

 私は別段隠すことでもなかったので、那美ちゃんが能力開発をお休みすることが気になっていたみたいで、説明はしたんだけど、納得しているようには見えなかったこと、それがなんだか気になってしまったことを伝えた。


「なんだか、いつもと違う感じがして気になったんですけど……」

 話しては見たものの、那美ちゃんの心の声が覗けたわけでもないので、結論には辿り着けていなかった。

 ただ、言葉にしたからか、胸の内のモヤモヤは多少和らいだ気はする。

 相談の大切さを噛みしめながら、反応を見るため花ちゃんを見ていると「うーん」と唸った後で「ノリノリで実験を繰り返していたマッドサイエンティストが、急に研究止めたと言い出したから、どうしたのかと胸が騒いだのかも知れませんね」と言い放った。

「まっ……」

 誰がマッドサイエンティストですかという思いで、ツッコミ掛けた私の脳裏に月子先生が浮かぶ。

 即座にその人の弟子が自分であることも連想してしまい、結果として、先の言葉を続けることが出来なくなってしまった。

 自覚はなかったし、マッドサイエンティストのつもりはまるで無いけども、第三者目線で見たらと言われると、否定できるほど、品行方正というわけでも内痔核はある。

 思い付いたまま、自分の好奇心で突っ走るスタイルは、他社から見たらマッドサイエンティストに見えても仕方が無いと思ってしまった。

 そこまで思考を巡らせた私に向けられた、花ちゃんの表情は腹が立つ程、ニコニコしている。

 軽く息を吐き出してから「自重します」と口にすると、花ちゃんは「良い心がけです」と返してきた。

「と、凛花ちゃんが、多少の自制心を持ってくれたことは嬉しいですが、それはそれとして、なっちゃんの様子は私の方でも気にしておきますね」

 多少という評価に異議は感じるが、これを指摘しても堂々巡りになる予感しかしないので、スルーして「何事もなければ良いですけど、少し引っかかったので」と、那美ちゃんのことをお願いしておく。

 頷いてくれた花ちゃんだけでなく、舞花ちゃん、結花ちゃんも、自分たちなりに那美ちゃんの様子を見てフォローしてくれると言ってくれたので、心強く、そしてとても嬉しく思い、私は「みんな、ありがとう!」と心からの感謝を伝えた。

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