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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾陸章 急転直下
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拾陸之肆 チーム分け

 昨日私が作った新聞紙製のスカートを持ち上げたり裏返したり日の光に透かしたりと、様々に動かしながら舞花ちゃんは「スゴイね! これリンちゃんが作ったの!?」と、驚きの混じった明るい声を上げた。

 私はあまりにも大袈裟な絶賛の言葉に、恥ずかしさを感じながら「型紙通りに切って貼っただけだから」と事実をありのままに伝える。

 けど、舞花ちゃんは私に向かって大きく左右に首を振って見せると「だって、舞花出来ないし! 思いつきもしなかったもん!」と強めの口調で主張してきた。

 このまま持ち上げ続けられるのも、居心地が悪いので、私は思いきって「それじゃあ、舞花ちゃんもやってみよう、簡単だし」と話の流れを誘導してみる。

 すると、舞花ちゃんの目に明らかにわかる興味の色が現れた。

「で、出来るかな?」

 上目遣いで尋ねてきた舞花ちゃんに頷きつつ「私に出来たことは教えられるよ」と笑む。

 舞花ちゃんは笑みを深くして「じゃあ、やってみたい!」と、更に目を輝かせた。

「うん。頑張ろう」

 私が頷いた直後、結花ちゃんが「ユイもやってみたいわ」と参加表明する。

 断わる理由もないので「もちろん」と返すと、志緒ちゃんが「じゃあ、私はパスかなー」と言い出した。

「え!? 何でですか?」

 思わず聞き返してしまったのは、衣装関係の作業なら、志緒ちゃんは参加してくると思っていたからである。

 それなのに、早々に参加しないと言い出したことがどうにも腑に落ちなかった。

 私の気持ちがどういう風に表情に出ていたかはわからないけど、志緒ちゃんは困った様子で「カードの方もやらないとでしょ?」と首を傾げる。

 完全に皆で仲良く衣装作りを想像していた私は、大事な作業があったことを志緒ちゃんの指摘でようやく思い出して、思わず「あ……」と声を漏らしてしまった。

 舞花ちゃんに必要以上に褒められたのもあって、大分浮かれてしまっていだらしい。

 重要事項にも拘わらず、頭から飛ばしてしまっていた自分に情けなさを感じながら「確かに、そっちも……というか、そっちの方が重要だよね」と私は無意識に視線を落とした。

 私の行動の引き金は自分への情けなさだったのだけど、志緒ちゃんは違う解釈をしたようで、慌てた様子で「私だって、リンちゃんと一緒に衣装作りしたいんだよ。そこは誤解しないでね!」と強めに言ってくる。

 かなり気圧されてしまったモノの、大人としてフォローせねばと言う思いで「大丈夫だよ、わかってるから」と返したのだけど、志緒ちゃんにはあまり刺さらなかったらしかった。

 口早に言葉を口にする志緒ちゃんは徐々にヒートアップしていく。

「一応、私は経験があるから、同じくらいの経験の人たちで試行錯誤した方が身になると思ったんだよ……って、偉そうだよね、偉そうなこと言ってるぅっ! わたしっ!!」

 最後には頭を抱えて騒ぎ出したので、どうにかしなければと思ったんだけど、どう処理すれば良いのかが思い付かなくて、私までパニックになりかけた。

 けど、ここで花ちゃんが「えいっ!」と言いながら、志緒ちゃんの脇腹を指で突く。

「ひゃふっ」

 一撃で変な声を出した志緒ちゃんがその場に沈んでいった。

「は、花ちゃん!?」

 私の呼びかけにウィンクで応えた花ちゃんは、うずくまった志緒ちゃんを助け起こす。

 肩を貸して志緒ちゃんを引き起こしたところで、耳に向かって囁きかけた。

「はい、志緒ちゃん、落ち着いてー大丈夫ですよー」

「うにゅ~」

 返事とも、動物の鳴き声とも判別のつかない声が志緒ちゃんの口から漏れ出る。

 神格姿が猫化だから猫@ぽいのかもしれないと、考えている間に、志緒ちゃんが我に返った。

「はっ!? と……取り乱して、ごめんね、リンちゃん」

 急に名前を呼ばれて動揺しかけたモノの、謝罪に対して首を振って応える。

 その上で、ちゃんと自分の考えを言葉にした。

「大丈夫。志緒ちゃんが衣装作りもダンスも劇もやる気満々なのはわかってる。復習を兼ねて、舞花ちゃん、結花ちゃんと練習をして、本番でも志緒ちゃんの役に立てるように頑張るよ!」

 私の発言に呼応して、舞花ちゃんが「うん! 舞花頑張る!」と頷いてくれる。

 結花ちゃんも「ユイ達の方が上手くなっちゃうくらい。頑張るわ!」と強気に笑んだ。

 志緒ちゃんは私たち三人に頷きながら「楽しみにしている……三人が頑張っている間、私はなっちゃんとまーちゃんとカードの量産に励むよ!」と口にして胸を叩く。

「しーちゃんよろしくね!」

「任せたわ、しーちゃん」

 舞花ちゃん、結花ちゃんの激励に頷いた志緒ちゃんの目が、私に向いた。

 これは何か言わねばと悟った私は「志緒ちゃん、頑張って!」とシンプルながら応援の気持ちを伝える。

 志緒ちゃんは満足してくれたのか、私に向かって大きく頷くと「リンちゃんのカードたくさん作るからね!」と言い出した。

「私のカード!?」

 意味のわからない言葉に、志緒ちゃんは胸ポケットからカードの束を取り出す。

「じゃ~~~ん」

 嬉しそうに私に見せびらかしたのは、アイガルのカードだった。

 ただ、予想外というか、問題だったのは、そのカードのキャラクターが私だったことに他ならない。

 思わず「え!? 私?」と口にしていた私に、志緒ちゃんは「安心して」と言った後で「これはアンジュだけど、私にとってはリンちゃんだから!?」と何の解決にもなっていない答えを堂々と言い放った。

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