表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
607/814

拾伍之伍拾肆 周回

「筒……ですか……」

「球の方がイメージ的には最適な気もするが、人間の体の構造を考えると筒状の方が良いんじゃないかと思う」

 月子先生が出してくれたアイデアは、筒状の物体で私を包み、背後の映像を前面に映し出すというモノだ。

 先ほど私が試した方法は、サンドイッチのように前面と背後という考え方をしてしまったせいで、上や側面から見ると、元の体が見えてしまうという欠点があったのである。

 その点を補完するために、月子先生はまずは側面の隙を潰す手として、360度どこから見ても後ろが見える仕組みとして、円筒状のスクリーンを考え出してくれた。

 更にその先の発展は、リンリン様とオリジンによるアイデアで、全身を包み込むサイズの円筒のスクリーンが成功した後、顔、胴、腕、脚と円筒のサイズを小さくして部位に装着する。

 完成形を例えるなら、厚みのある棒人間といったところだ。

 既に、軽くイメージをしてみたけど、私の肌感覚で言えば、出来そうな気がする。

 実際に実行した場合、制御仕切れずに、失敗する恐れはあるモノの、少なくともエネルギーが試算するような完全失敗にはなら無いはずだ。

 むしろ、順を追っていけば、成功する可能性は高いと私は思っているし、オリジンとリンリン様も太鼓判を押してくれている。

 と、なれば、最早試してみる以外に選択肢はなかった。


 まずは全身を包み込む様に広がっているエネルギーを、更に増量して厚みを増してみた。

 痛みがある程では無かったけど、グッと圧迫されるような感触が全身で起こる。

 エネルギーの層を厚くした分が圧として肌を押し込んできているように感じられた。

 想定外の圧迫に多少戸惑いはあったものの、痛みがあったり、制御が難しかったりということは無かったので、気持ちを落ち着けて体を覆う円柱へとその家以上を変化させてみる。

 頭の中ではすぐに体を包み込む円筒のイメージはできあがり、それに応じるようにエネルギーもその形を動かし始めた。

 ただ、予測通りに動き始めはしたものの、その変化はとてもゆっくりで、円柱状に変わるまでには、かなりの時間が必要に思える。

 とはいえ、時間さえ掛ければ、形状はどうにかなるだろうという実感があったのだが、むしろ問題は圧の方だった。

 円筒状のエネルギーで体を囲むわけだけど、上から見た円筒の形状は円ということになる。

 この円の中心に私が立つわけだけど、そうなると、円柱の表面からは、腕との距離が一番近く、体の中心部程遠くなり、これにエネルギーの層に厚みがあるほど圧迫が強くなる特性が作用するのだ。

 結果、かなりの圧でお腹や胸を前後から挟まれているような感覚がして、もの凄く息苦しい。

 にもかかわらず、確かに息苦しいのだけど、胸やお腹だけでなく、圧迫を感じる腕や足も見る限り押されているような様子は見られなかった。

 つまり、私の体が感じている圧迫はあくまで物理的なものではなくて、超常的なものということだと思う。

 それならばと、私はエネルギーの層の内側、肌との間ににその圧を受け止める空間を作ってみることにした。

 エネルギーが体から離れたせいか、形状の井治が思った以上に難しい。

 その一方で体に掛かる圧はまったくといって良い程、消えてしまった。

 体に圧を感じなくなったことで、私はより意識を集中出来るようになり、より体とエネルギーとの空間を保てるようになると、最早圧は感じない。

 思った通りの形状、円柱を作り出すのに集中と時間を必要としたが、それでも時間の問題だった。

 私を囲む円柱を、地面から私の身長よりやや高い位置までの大きさで造り上げるとともに、なるべく薄くなるように意識すると、形状変化の難易度も低下したようで、かなり調整がしやすくなっていく。

 どうもエネルギーの厚みを抑えたことで必要な総量が減ってコントロールしやすくなったようだ。

 予想していなかった副次効果を認識しつつ、内側が空洞の完全な筒状で安定したことで、私は透過のテストに移れると判断する。

 私の思考は常にモニタリングされているのもあって、すぐにリンリン様から『オリジンから了解という返事が来たのじゃ!』との声が上がった。

 続いて月子先生も「君のタイミングで始めてくれ」とゴーサインを出してくれる。

 私は両者に聞こえるように「それじゃあ、いきますね!」と宣言してから、円筒状になったエネルギーの壁に背後を映し出すよう命令を下した。

 直後、頭の中には円柱状になったエネルギーの表面に背後の光景が投影されるイメージが浮かぶものの、私の目から見えるのは薄く白く濁った円柱状のエネルギーだけで、表面にどんな変化が起こっているかどうかはわからない。

 その一方で、リンリン様とオリジンの指示で飛び始めたのであろうドローンが私の周囲を飛び始めたので、投影は出来ていそうだ。

 月子先生も、片手にタブレットを持ってドローン映像を確認しながら、ドローンの動きに合わせて私の周囲を回り始める。

 そのまま、しばらくの間、私はぐるぐる周りを回られるだけの微妙に居心地の悪い時間を過ごすことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ