表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
605/814

拾伍之伍拾弐 着色

 全身をエネルギーで包み込んだところで、月子先生とリンリン様に「私の体がエネルギーで包まれたのがわかりますか?」と聞いてみた。

 感覚ではエネルギーの存在を認識出来ているけど、体が光っているわけでも、そもそも体を覆っているエネルギーの輪郭すら見えていない。

 月子先生の能力やリンリン様の機械的なセンサーではどうだろうと思って聞いてみたけど、二人からの答えはなかった。

 それは無視というわけではなくて、リンリン様はこちらを凝視しているし、月子先生は私とタブレットの間で忙しなく視線を動かしている。

 二人がその状態に入ってから少し、最初に動きを変えたのはリンリン様だった。

『主様』

「はい」

 私が返事をすると、リンリン様は間を置かず『わらわの目やドローンの目、オリジンの解析を組み合わせた結果なのじゃが、僅かに主様の姿に変化があることは観測出来たのじゃ』と言う。

「……観測できたんですか?」

『水やガラスなどを間に挟むと、レンズの効果で実像に歪みが出て見えるじゃろ? 主様が両掌からエネルギーを全身に纏わせ始めたタイミングで、手から腕、肘、肩の順で、本来の主様の輪郭から少し膨張したのが観測出来たのじゃ……それが、現時点では全身が膨張した状態で、安定しているようじゃ』

 膨張という表現に引っかかりを感じたモノの、些細なことと胸の内で念じて、小さく息を吐き出して気持ちを整えた。

 多少気持ちが落ち着いたところで「つまり、エネルギーを纏った状態を観測出来ているということですか?」と尋ねる。

 リンリン様は私の問い掛けに、少し間を開けてから『オリジンを含めて、検証しないと断定出来ないレベルじゃが……今後、主様の輪郭に変化が出れば、エネルギーを纏ったのではないかという推測は出来るといったところじゃ』とリンリン様は答えた。

「えっと……変化を認識は出来るけど、エネルギーを纏った状態と断定は出来ない……で、あってますか?」

 私の確認に、リンリン様は『残念ながら映像に乱れが発生する可能性があるからのう……現時点では可能性を認識出来ても、断定は出来ぬのじゃ』と残念そうに言う。

 ここで、月子先生が「この独特な掌を上向きにするポーズをした直後に集中すれば、認識出来ないだろうか?」と発言を挟んできた。

 対して、反応して視線を向けたリンリン様はそこで動きを止める。

 少し時間をおいて、恐らくオリジンとのやりとりを終えたのであろうリンリン様が『断定までは行かぬが、主様の動きを起点にするなら、その直後の輪郭の変化をエネルギーで主様が包まれたと可能性が高いとすることは出来そうじゃ』と返した。

 月子先生はリンリン様の話を聞いた上で、私に意見を求めるように、こちらに視線を向けてくる。

 私は状況を理解していることを伝えるために大きく頷いてから「ちょっと試してみます」と宣言した。

 対して、月子先生が「ん?」と口にして、首を傾げたが、私は既に次に意識が写っていたのもあって、そのまま行動を起こすことにしてしまう。

 より意識が集中出来るという囁きに従って、目を閉じた私の脳裏に自分の姿が浮かび上がった。

 視認出来るモノしか映っていないらしく、脳裏の中の私には纏っているはずのエネルギーは見えない。

 私がこれから試すのは、そのエネルギーを視認出来るように調節出来るかということだ。

 というわけで、早速エネルギーに色を付けてみることにする。

 元々のエネルギー球は光の球だったこともあって、白いイメージがあるので、そのイメージをそのまま目標にした。

 皆に見えるように、カメラが捉えられるようにと思いを込めて意識を集中すると、脳裏の中の私の数センチ外側に薄く白い輪郭が現れ始める。

 時を同じくして、私を観測しているリンリン様が『主様、主様を包む膜状のモノが認識されはじめたのじゃ!』という報告が上がった。

 次いで、月子先生から「タブレット経由でのカメラ映像もそうだが、肉眼でも君が白いゼリー状の物体に包まれているように見えるぞ!」と興奮気味に伝えてくる。

 二人の言葉に、成功を確信した私はゆっくりと目を開いた。

 それで集中が切れる事は無かったようで、私を包むエネルギーの幕に付いた白はイメージ通りにどの場に留まっている。

 結果、私の視界は白く少し曇ってしまっているが、肉眼でも全身に纏わり付いたエネルギーを確認出来るようにはなっていた。

 全身を包むエネルギーは、私から数センチ外側を均等に覆っていて、体の動きに合わせて動く。

 軽く掴んで視界に入れた髪を包むエネルギーも、手や足と同様に数センチの距離を持っていた。

「これなら、エネルギーを纏っているのが、カメラでも撮影出来て、リンリン様達にも認識出来ますよね?」

 そう尋ねた私に、リンリン様は『うむ』と頷く。

 リンリン様の返しにやり遂げたことを実感しながらも、私の中には、色を付けるために集中が必要だったので、次に同じ事をしたら、集中が必要なのか、それとも自動で色が付くのかという疑問が、新たに浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ