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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
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拾伍之伍拾 発動条件

「確かに太さは丁度良いかもですね」

 月子先生が手にしたのは、スリムタイプの水筒だった。

 どうやら、水筒に封印のブレスレットを付けて、触ってみるということらしい。

「机の上にある状態では、机の天板越しに接触しても、君に封印の効果は現れなかったが、尻尾に装着されたブレスレットなら効果を発揮している。で、あるならば、水筒に巻いた状態で、封印のブレスレットそのものには触れずに、水筒を手にすれば封印の効果が発揮するのではないかという仮説を立てたわけだ」

 私の理解が正しかったことを示すように、月子先生は次の実験の意図を語ってくれた。

 月子先生の説明に、なるほどと思い「確かに、テーブル越しに触れた時に発動していなかった封印の機能が、リンリン様が尻尾に嵌めた状態なら発動するってよく考えたら不思議ですね」と同意する。

「当初は、君がヴァイアを生物と見做しているからかとも考えたが……私が嵌めた状態で、私が君に触れても効果は私に限定されて広がらなかった。一方で君の体にブレスレットを直接触れさせれば、私が腕に付けた状態でも発動する。知りたいのは、ヴァイアが装着している場合に限って封印効果が広がるのか、ブレスレットを筒状のモノに通しておけば、その筒状のモノに触れるだけで発動するのか、そこを確認しておきたい」

 改めて「わかりました」と納得したことを伝えつつ、私は封印のブレスレットを手に取って、水筒に通した。


 月子先生が触れれば、その時点で封印の能力が発揮されているかどうか目視出来るだろうけど、私の場合は見た目の変化は起きないので、封印の影響があるのかどうかはわからなかった。

 とはいえ、確認すればいい話なので、椅子に座りつつ封印のブレスレットを通した水筒を机にセットする。

「じゃあ、リンリン様、水筒を動かして貰っても良いですか?」

『任せておくが良いのじゃ』

 リンリン様はそう言って、快く引き受けてくれた。

 水筒の移動をリンリン様にお願いしたのは、単純に封印の効果が発揮されると、月子先生の変化が解けてしまう。

 現時点で、生徒達に自身の秘密を伝えないつもりのようなので、なるべくそうならないように配慮した方が良いだろうと考えたからだ。

 ただ、人間の手なら簡単に動かせる水筒も、リンリン様からすると身長はそれほど自分と変わらない。

 ひょっとしたら、リンリン様の方が、身長では負けているかもしれなかった。

 それ故に、大丈夫だろうかと、多少心配していたが、目の前で巧みに尻尾を操って、リンリン様は簡単に水筒を滑らせている。

 滑り止めが付いているタイプの水筒なので、何かしらの力を使っているのかもしれないが、少なくとも私の集中後の移動は任せられそうだ。


 準備も整ったので早速実験に移ることにした。

「それじゃあ、実験を恥じます」

 私の宣言に反応して、月子先生とリンリン様が頷いてくれる。

 それを見た直後、私は目を閉じて具現化に入った。

 具現化するのは出現し慣れたスマホで、それを示すようにスムーズに手足の甲の上に出現したいた四つの球は、私の体を通って、掌の間で一つになる。

 そこで具現化を一時中断して、リンリンに声を掛けた。

「リンリン様、お願いします」

『任せるのじゃ』

 脳内イメージの話なので、実際とはズレがあるかもしれないが、快諾してくれたリンリン様は、すぐに行動を起こしてくれる。

 尻尾を水筒に巻き付けると、じりじりと私の方へと押し出し始めた。

 ややあって、私の肘が膵島に触れそうになったタイミングで、リンリン様から『主様、これから肘に触れるようにもう一押しsるのじゃ!』と報告が来る。

「わかりました。お願いします」

 私がそう返事したすぐ後で、肘の先に冷たい感触が触れて、同時に頭の中のイメージが黒一色に塗り潰された。


「封印の効果が発揮されるモノにおおよその推測が付いてきたね」

 月子先生はそう言いながら、体育用具入れから持ち出してきたリレーバトンをクルクルと回転させながら笑みを浮かべた。

 実験結果だけ言うと、腕に嵌めるように筒状のモノに通すと、封印のブレスレットはそれに触れただけで封印の効果を発するらしい。

 筒状のモノと限定されるのは、形状が近いものとして、テニスボールで試した結果、封印の効果が発動せず、月子先生が手にしているリレーバトンの場合は発動したのが理由だ。

 ちなみに水筒の中身は液体が入っていてもいなくても効果が発揮されている。

 他にも、月子先生が用意した卒業証書入れである細長い直方体の筒でも効果は発揮された。

 巻き付けるのが大変だったけど、細い金属背の管の両端にゴム状の重しが付けられたリレー用ではなく、バトントワリング用のバトンでも効果が発動している。

 試してはいないけど、マネキンの手に装備させても効果が出そうだ。

 私がその事を伝えると、月子先生は「私もそう思うよ」と同意してくれる。

 その上で、月子先生は「おおよそ傾向も掴めたし、次は身体強化以外の能力も試して、ドローンの目を振り切るんだろ?」と不敵に笑ってみせた。

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