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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
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拾伍之参拾陸 高性能

「凛花さん……君が日本人なのはわかるけど、そろそろ変えて貰わないと実験になら無いよ?」

 月子先生の笑顔に、私は「うぐっ」と抗議も出来ずに声を詰まらせることしか出来なかった。

 完全に遊ばれているけども、実験の最中ではあるので、文句を言うのも違う気がする。

 実際のところ、私がランダムに『日本人』以外を頭に浮かべないと、実験になら無いのは事実だ。

 そもそも何でこんなに追い詰められているんだろうと思うと、急に冷静になってくる。

 ともかく、実験を済ませてしまおうと考えたところで、電子音が鳴った。

「……え?」

 私がアラートが鳴った理由がわからずに困惑していると、月子先生が「どうも君が動揺からの混乱を経て、やる気になったことで、システムが意識の変化を感知したみたいだね」と笑いながら言う。

「想定した実験内容とはずれが生じてしまったけど、結果的には機能が優れていることが証明されたようだね」

 私にそう言った後で、月子先生は「日本人かどうかの実験はしなくて良いかもしれないね」と笑いながら言い加えた。


 カメラに切り替えられると判断した月子先生は、さっさとコンタクトレンズを外してしまった。

 大分疲れた顔で「ふぅ……これはなかなか精神的に疲れるね」と苦笑する。

「さて、これからのことなんだが……これはやっぱり電源供給は要らないのかな?」

 机の上に着陸した状態のドローンに触れながら、未だ私の頭の上から降りないリンリン様に、月子先生は問い掛けた。

 少し間を置いてから、月子先生にリンリン様から答えが齎される。

『一応、電力のぱらめーたは内蔵されておるようじゃ。カメラを起動し続けておるが、現状、百ぱーせんとから動いておらぬそうじゃ』

 リンリン様からの報告に、月子先生は「まあゲームの筐体どころか、巨大な実験施設……まあ、実寸大ではないけど……それでも相当の電力が必要そうなモノが、無給電で動いているわけだからね。当然と言えば、当然か……」と、ドローンのボディを撫でながら苦笑したままで頷いた。

 月子先生はドローンに向けていた視線を、私……の、頭の上のリンリン様に向け直すと「飛行プログラムは大丈夫だろうか?」と問う。

 また少し間を開けてから、リンリン様は『うむ。カメラで主様の状態を観測し、飛行状態と待機状態が切り替わるようになっておるようじゃ』と答えを返した。

 間を開けているとは言っても秒数にしても片手で足りる程度なので、それだけの短時間でオリジンとの通信と情報の確認やとりまとめをしているのだと思うと、普通にスゴイなと感心してしまう。

 すると、直後またもアラートが鳴った。

「ん?」

 何気なく視線をタブレットに向けると、私がこの次の実験に対して意識を向けていたところから、オリジンとリンリン様の通信速度や情報処理能力に感心に意識が向いたことが報告されているのが目に入る。

 本当に完成度の高いシステムだなと思うけど、完全に思考が読まれているというのは恥ずかしいかった。

 そう思った直後、オリジン達の連携から、自分の意識が読まれている事実へ意識が移ったので、またアラームが鳴るのだろうかと思ったのだけど、今度は反応しない。

 頭の中で『どういうこと!?』と、反応しない理由が気になったタイミングで、リンリン様から『主様』と頭をタシタシ叩かれながら声を掛けられた。

「は……い?」

 少し間延びした返事になってしまったが、リンリン様はそこには反応せずに『連想だからじゃ』と言う。

「れんそう?」

 耳にしたままの音を口から出すと、リンリン様は『わらわ達の情報の連携に対する感心から、システムの完成度の高さの認識、その後、心情を読み取られている事へ羞恥を感じるという主様の思考の流れは『連想』だと判断されたのじゃ……つまり、異常なしという事じゃな』と言い切った。

「な、なるほど」

 情報量の多いリンリン様の言葉に少し気圧されながらそう返すと、視界の隅で口を押さえて震えている月子先生が見える。

「な、なんですか!?」

 思わず声高になってしまった声で、月子先生に問うた。

 リンリン様に気圧されているのを笑われているんだろうと思っての強めの問い掛けだったのだけど、斬えんんあがら違ったらしい。

 想像通りお腹を抱えて笑っていた月子先生は「君、何も考えず反射で聞き返しただろう? テキストがひらがな四文字で『れんそう』って表記されていたよ」とタブレットを指さしながら言い放った。

 私としては想像もしなかった理由で笑われたのでキョトンとしてしまったが、時間がたつ毎に体が熱くなってくる。

 火を放ちそうな熱を頬や耳に感じながら「あ、頭が回ってなかったんだから仕方ないじゃないですか!」と私は吠えることしか出来なかった。

 それが切っ掛けになったのか、月子先生は声に出してケラケラと笑いながら「す、すまない。わ、笑うつもりはないんだが、壺に入ってしまって」と言う。

「全然笑うつもりがないように見えないんですけど!?」

 私の訴えに月子先生はより一層笑い声を上げ、私はぶつKぇどころないしゅうちの熱を持て余すことになった。

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