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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
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拾伍之参拾肆 テキスト化

「少なくとも、君は早口言葉を言わされるとは思っていなかっただろう?」

 月子先生の得意げな質問に、私は棘を含ませながら「ソウデスネ」と返した。

「つまり、少なくとも私は君が想定していなかった指示を出せていたということであり、同時に、私の思考をカメラがしっかりと読み取れており、君と私の間で意思疎通が成立したということだ」

「……そうですね」

 内容はともかく、検証目的は達成しているので、そこには不満も疑問もないのだけど、もの凄く引っかかるモノがある。

 その不満を解消する黄は無いらしい月子先生は、視線を私の頭上へと向け「オリジンはどのくらいでシステムを構築出来るか、教えてくれるかな?」とリンリン様に声を掛けた。

 リンリン様は『もうできあがったそうじゃ』と手短に答える。

 月子先生はそれに頷くと、視線を私の方に降ろしてから「では、軽い実験をしよう」と口にした。

 私が同意して頷くと、すぐにリンリン様に視線を戻して、月子先生は新たに「オリジンに『青』という色に関する単語をテキストから検出したら、私たちの端末にアラート付きでメッセージが届くようにして貰えるかな?」と指示を出す。

『伝えたのじゃ……』

 リンリン様がそう答えたすぐ後に、月子先生の持つタブレットから電子音が鳴った。

『準備完了じゃな』


 一応、文面の確認を三人でした後、出題者が私、回答者が月子先生という形で検証を始めた。

 私が色に関する問いを出して、月子先生がそのイメージを頭に浮かべる。

 カメラを通して、オリジンが組んだシステムがテキストを確認して、青色に関する単語を思い浮かべれば反応するという実験だ。

 早速私は「空の色といえば」と出題してみる。

 直後、検出を告げる電子音が鳴り、私はテキストに視線を向けた。

『時刻により変化はあるが、昼間時は基本青に見える。俗に朝焼け夕焼けの時刻は赤からオレンジ、場合によっては緑などに見られることもある。また、夜間時は光源である太陽光が月の反射光程度に限定されるため、黒から藍色に見える。また変化は天候にもより……』

 月子先生の吹き出しに並ぶ文字列の中で『青』と『藍色』が赤く着色されていて、緑には濃いめの茶色に代わっている。

 その事を月子先生に伝えると、テキストの表示が『了解した。次の質問を』に切り替わった。

 単純に、青が答えになる質問をしてもしょうがないなと思った私は、閃いた問いを口にしてみる。

「日本の道路信号で、進行を許可する色と言えば?」

 一般的に『青信号』だが、言葉としては『青』で、色は緑に近い為、結果がどうなるのかと、私は面白い問いじゃないかと考えた。

 それは月子先生も同様だったようで「それは面白い質問だね」と頷いてから「青信号」と答える。

 すると、検出を告げる電子音が鳴り、テキストは『青信号』の『青』の人文字だけが、赤く色づいていた。


 状況報告をした私の言葉に、月子先生は「ふむ。私は緑に輝く信号を思い浮かべて、青信号と考えていたんだが、テキスト化にはやはり頭で言語化した方が採用されるようだね」と口にして頷きを繰り返した。

「確かに、頭に浮かんだイメージを映像を抜き出しているならまだしも、思い浮かべた言葉を言語化しているわけですからね……安足間えっと言えば、当たり前ですね」

 私がそう言うと、月子先生は「となると、少し注意が必要だね。人間はよく誤認識する生き物だから、思い込みで言語化された考えが事実に即さない可能性がある」と口にする。

「それって……」

 私が軽く首を傾げると、月子先生は「例えば、頭は丸、体は三角で表現して、男性は三角形の頂点が下を向き、女性は上を向くというトイレのピクトサインを見たことはないかな?」と尋ねてきた。

 急な話の飛躍に少し驚きながらも、言っているモノはイメージ出来たので「それは、見たことあります」と返す。

「よりわかりやすくするために、これに男性であれば青、女性であれば赤と着色する場合があるだろ?」

「はい」

「この色を逆転すると、人間は混乱してしまう」

 そこで一拍を置いた月子先生にジッと見られたが、上手く頭に入ってこないのか、私はすぐに反応を返すことが出来なかった。

 そんな私に「つまり、ピクトグラムの形と色が入れ替わっただけで、正しい判断が出来なくなってしまうワケだが……理由は見た瞬間に、脳は色で男女を判断してしまい。そのご認識した形と言う情報で、違和感を覚えるからだ……まあ、そうじゃない事例もあるが今はいいだろう」と言い加える。

「今の事例では色と形という情報がある例だが、単純にトイレと書かれていて、看板が赤出着色されていたら、間違いなく女子トイレだと認識してしまうだろ?」

「そうですね」

「実際にその先が女子トイレなら問題ないが、男子トイレなら問題だ……という話だよ」

 そこまで聞いてなんとなく話を理解出来た私は「誤認識……思い込み……確かに、考慮すべきですね」と頷いた。

 が、月子先生は「まあ、気をつける点ではあるけど、監視するのは、思考の急激な切り替わりだからね。必要ないことかもしれないけどね」と苦笑する。

 苦笑を見せられたこともあって、私も釣られるように苦笑を浮かべ「それもそうですね」と同意した。

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