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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
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拾伍之参拾 進化

 今は月子先生が目を開け、私が目を閉じている直前と逆の状況となっていた。

 具現化の際に状況確認をしている脳内の映像は基本的に私と、私が出現挿せるモノしか表示することが出来ない。

 月子先生も表示出来るように変化させることも出来る気もするが、これまでやっていないことを試すのは危険なので自粛した。

 そんなわけで、月子先生の動きがどうなっているか、詳細はわからないのだけど、急に直近から「これは興味深いね」という溜め息交じりの声が聞こえてくる。

「つ、月子先生?」

 確認すると言っていたので、私のそばにいるのはなんとなく予測していたが、手のすぐ横にまで顔を持ってきているんじゃないかという近さに、心の底から驚いてしまった。

 一方、私が慌てた声を上げたからか、月子先生は「あ、すまない……今は具現化を進めるべきだね」と言う。

 徐々に声が近づいて離れたので、恐らく立ち上がって数歩退いたのだと、その行動を予測した。

 それを裏付けるように、月子先生は「今、距離を取った。いつでも再開して欲しい」と言う。

 私は「わかりました」と口にして頷くと、改めてドローンの具現化に挑むことにした。


 エネルギーの流れであるとか、エネルギーの出現時点であるとか、以前に比べて情報量が増えていることに多少の戸惑いはあったが、それでも流れに変化が合ったわけでは無いので、これまで通りということを言い聞かせるように頭の中で繰り返しながら、具現化を進めた。

 極論な気はするものの、他人の願いや願望に、私の精神が影響を受けるのであれば、自分への言い聞かせの影響も受けるのでないかと考えている。

 実際のところ、それが正しいかどうかは、後で月子先生に確認しなくてはとは思うが、心なしエネルギーの流れは安定しているし、伴う痛みもかなり減衰しているような気がした。

 あくまで気がしただけだけど、少なくとも影響は受けるのではないかと思っている。

 そんな考察をしながらでも、具現化への流れは滞ることなく進んでいた。

 具現化に必要なエネルギーの捻出は、手足の甲のやや上の空間から出現していたが、掌と掌の間に移動する際には体の中にしっかりと入り込む。

 痛みを強く感じるのは、この体を通すタイミングだったので、状況の把握がより繊細になった今、感じる痛みが増したりしないだろうかと、少し警戒していたが、逆に通りが良くなっているようで、引っかかりも痛みもほとんど感じなかった。


 体を通り抜けて掌と掌の間に、食い原価に必要なエネルギーが全て移動を終えた。

 両手足の甲の上ではそれなりの……エクササイズに使うバランスボール位の大きさだった四つの球体は、掌の間に集め終えた現時点ではソフトボール大になっている。

 おそらくはエネルギーが凝縮したのだと思うが、もしかしたら体の中を通り抜ける時点で、不要な分が削がれている可能性も考えられた。

 この考察は後ほど月子先生をしようと考え、この場での考察を止める。

 コンタクトレンズでこちらを監視してくれているので、月子先生には伝わっているとは思うけど、念のため口頭で「それじゃあ、具現化に移ります」と宣言をした。

 月子先生は「了解した」と短く返事をくれる。

 コンタクトの能力でこちらの考えは伝わっているだろうけど、こちらは目を閉じていることもあって、月子先生の状況や考えは読み取れないので、承諾の言葉からは想像以上の安心感を得ることが出来た。

 安心して次へ進められる状況というのは、今の私にとって、とても効果的なようで、私の中にアル具現化への手応えが、グンと増したように感じられる。

 掌を向け合ってエネルギー球を浮かせている自分の映像とは別に、脳内にドローンのイメージが浮き上がってきた。

 恐らく完成イメージであるそれは、映像で確認した動画と寸分違わぬ緻密さがある。

 これも、エネルギーを維持している私の映像と同じく、パソコン上の3Dモデルのように、イメージだけでぐりぐりと動かすことが出来た。

 これまで、最終工程は他の人のイメージに頼ることが多かったため、この完成形の確認機能自体がいつからあったのかはわからないけど、具現化物の精度を上げるのに確実にプラスになる機能だと思う。

 この新機能についての考察も、月子先生と後ほど話し合う項目に加え、先に進めることにした。

 オリジナル……参考にした動画のドローンとの変更点として、ペンライト程の小型カメラが、底部に装着されている。

 このカメラのレンズ部分に、月子先生に使って貰っているコンタクトと同じ能力を付与しているのだが、流石に外観からは付与出来ているのかどうかを判断することは出来なかった。

 どうしようかと思っていると、レンズ部分に矢印が向いたポップアップウィンドウが出現する。

 そこにはレンズに付与したいと考えていた項目が列挙されていた。

 エネルギーの可視化、対象人物の思考の文章化……付与項目としては十分だと思う。

 月子先生にはこちらの考えは全て伝わっているが、よく考えるとテキストで読めているだけなので、映像的なモノは説明が必要ではないかと気付いた私は、一応現状の新機能について伝えることにした。

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