表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
577/814

拾伍之弐拾肆 戯れ

「リンちゃん、ブラウスが濡れちゃったんだけど?」

 舞花ちゃんにそう揶揄われた私は、一瞬言葉に詰まってしまった。

 溢れ出した感情尼流されるまま、涙してしまったことで、抱き付いていた舞花ちゃんの制服のブラウスが、被害に遭ってしまったのである。

 自分がしでかした琴奈上に、原因が泣いた性ということがどうにも恥ずかしくて、まともな切り返しが私には出来なかった。

 舞花ちゃんはそんな私を面白がって「ん? ん?」と、反応を引き出すための挑発をしてくる。

 揶揄っているのは間違いないし、普通の返しでは舞花ちゃんも満足しないだろうと考えた私は、おもむろに封印のブレスレットに手を掛けた。

「わかりました。舞花ちゃんのブラウスを具現化します!」

 そう口走った私に、舞花ちゃんは慌てて「だ、ダメだよ、リンちゃん! 封印はとっちゃダメなんだよ!」と慌てた声で、私の手首のブレスレットが外れないように抑えに飛びついてきた。

 結果大接近することになった私と舞花ちゃんの視線が、目の前でバッチリと重なる。

 直後、私は噴き出してしまった。

 私の反応を見た舞花ちゃんは「あっ! 舞花をからかったな、リンちゃんめ!」と怒り出す。

 更に、舞花ちゃんは「泣き虫のくせにー」と言いながら、私の子pしに手を伸ばしてきた。

「ちょ! 舞花ちゃっ」

 そこまで口にしたところで頭が真っ白になる。

 思いっきりくすぐられたことで思考が飛んで、私はとにかく逃れようと、無心でもがくことになった。


「つ、つかれたね」

「……うん」

 廊下に二人でへたり込んだ私たちは、ぜぇぜぇとお互いに荒い息を吐き出していた。

 舞花ちゃんのくすぐりから、くすぐり愛に発展し、それなりに長い間戦いを続けたせいで、すぐに立ち上がれない程度に疲弊してしまっている。

 二人して両手を床に付いた姿勢で息を整えていると、不意に舞花ちゃんが「でも、楽しいね」と口にした。

 私はつっかえていたモノが全部消えてしまったことを実感しながら「うん。そうだね」と同意する。

 そうして、お互いに笑顔を交わし合った。

 少し前なら恥ずかしさで悶絶しそうな状況だけど、無心でくすぐり合った後だからか、二人きりだったお陰か、不思議な清々しさしかない。

 余韻に浸りながら、そろそろ立ち上がろうかとしたところで「あんた達、廊下で何してるのよ」と、問い掛ける声が飛んできた。

「あ、お姉ちゃん」

 声の主に私より先に反応した舞花ちゃんは、ヒラヒラと手を振って見せる。

 私は床に二人して座り込んでいる状況をどう説明したモノかと考えながら、上手く言葉が出てこずに」「えーと……」と口にすることしか出来なかった。

 素直にじゃれ合ってたと、参加者ではない結花ちゃんに明かすのは、未だハードルが高い。

 そんな私の気持ちなどお構いなしに「よいしょっ」と反動を付けて一気に立ち上がった舞花ちゃんが、結花ちゃんに「くすぐり合いっこしてた」とあっさり報告してしまった。

 結花ちゃんはそれを聞いて「廊下でやることじゃないでしょー」と腰に手を当てた姿勢で溜め息を吐き出す。

 そんな結花ちゃんに、舞花ちゃんは下から顔をのぞき込むようにして「お姉ちゃんも参加したかった?」と揶揄うように問い掛けた。

 結花ちゃんはチラリと私を見てから「ユイは廊下でくすぐり合いなんてしないわよ」と言い放つ。

「えーー」

 不満そうに唇を尖らせた舞花ちゃんに、結花ちゃんは「やるなら、体育館のマットの上とか、お部屋の中とか、汚れなくて安全なところでやるから」とチロリと下を出しながら言って見せた。

 結花ちゃんの切り返しに、舞花ちゃんはハッとした表情を見せてから、私の方へ駆け寄ってくる。

「リンちゃん、立って、早く!」

「え? は? えぇ?」

 突然の行動に動揺している間にも、引っ張られた私はよろよろしながらも、その場で立ち上がらさせられた。

 そのまま、私はその場で開店させられる。

 何が何やらわからない状態で、されるがまま動かされた後で、舞花ちゃんは「うん、よし、汚れなし! よかったー」と安堵の溜め息を漏らした。

 ようやく舞花ちゃんの行動の意図を理解した私は、思い切って「舞花ちゃんの服も確認しましょうか?」と尋ねてみる。

 舞花ちゃんはわかりやすく表情を明るくしてから、両手を水平方向に広が「お願い、リンちゃん!」と微笑んだ。

「じゃあ、確認しますね」

 そう伝えて、舞花ちゃんの周りを見ながら、ブラウスやスカート、露出している肌と、汚れがないか確認してから、私は「大丈夫そうです」と報告を上げる。

「よかったー」

 胸に手を当てて、改めてホッとした表情を見せる舞花ちゃんに、笑顔で頷いていると、結花ちゃんから「ちゃんと場所は考えなさいよ。防犯カメラの映像って、知らない人も見ることもあるんだから」と思わずゾクリという一言を放たれた。

 言われてみればそういう可能性もあるのかと思い体が硬直する私を他所に、舞花ちゃんは「次は場所を考えるよ!」と明るく応える。

 それに対して結花ちゃんは「次は私も混ぜなさいよ」と笑う一方で、急に放り込まれた第三者の視線が気になってしまった私は、一人表情を強張らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ