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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
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拾伍之拾壱 真実

「一応、記録の残っている範囲の話だが、神様に至ると思われた人物と君にはいくつか共通点がある」

 真面目な顔で話を本筋に戻した月子先生の強引さに、少し呆れに似たものを感じはしたものの、ここは茶化す場面ではないなと考えた私は、そのまま流れに乗ることにした。

「共通点ですか……」

 能力的なことだろうかと考えつつ、月子先生からの答えを待つ。

「まず、記録にある人物は、君と同じように『神格姿』を得ることで、男性から女性に変わった人物だったようだ」

「そ、そう、ですか」

 月子先生は過去にあった出来事を、自分が知り得たまま伝えてくれただけなのに、何故か私はその言葉を素直に受け止めることが出来なかった。

 いつの間にかモヤモヤしたものが胸の内に湧いてきている。

 敢えてか、それとも単純に気付かなかったのかはわからないけど、月子先生はそんな私をスルーして話を進めた。

「私が君との共通点を強く感じて居るのは、その人物も、君も『神格姿』を得る直前まで、緋馬織とは無関係だったという点だね」

 月子先生の言葉に引っかかりを覚えた私は、少しむっとしながら「……無関係ですか?」と聞き返す。

 すると、月子先生は「言い方が悪かったね。何か別の意図があるわけじゃ無いんだ。許して欲しい」と軽く頭を下げてから「少し説明を足させて欲しい」と言い、私は頷きで応えた。

 月子先生は、そこで少し間を開けてから、一気に最後まで言い切る。

「例えば、東雲雅人君のように、幼い……第二次性徴を迎える前からこの地に来て『球魂』を『神格姿』として扱った者と、君のように第二次性徴を終えてから、この地で『神格姿』を得た……つまり、肉体を変質させた者、性別が変わる場合この二種類の人間が存在する」

「……つまり、私との共通点は、大人になってからこの地に来た人ってことですか……」

 私のまとめに、月子先生は「概ね、その通りだ」と頷いた。

 その上で、月子先生は「より明確に言うならば」と前置きをしてから「『神格姿』を得る前に『球魂』を体から切り離す経験をしているか、否かだね」と言う。

 私はその言い回しに疑問を覚えた。

 流してもいい程度のことかもしれないけど、不明点は減らした方が良いと思ったので、一応、確認をしてみる。

「月子先生の言い回しだと、緋馬織との関係性が抜けてませんか?」

 少し棘のある言い方になってしまったことで、私はようやく自分が『緋馬織』と『無関係』と線を引かれることに、引っかかりを覚えていたことに気が付いた。

 自分が話の上でのちょっとした疎外感を、敏感に感じ取って、反応していたことに驚く。

 だが、その驚愕に向き合う前に、私の疑問に対する答えが、月子先生から語られた。

「そもそも『神格姿』を得るのはこの『緋馬織』でしか出来ない事だからね。少し説明不足だったね」

 申し訳なさそうな顔で、そう言って頭を下げた月子先生に、私は少しぶっきらぼうになりながらも、どうにか「いえ」と二音だけ絞り出す。

 月子先生は更に「一方で、体から『球魂』が切り離される現象は、この緋馬織以外でも起こりうるんだ」と言い加えた。

 私の頭に、月子先生の説明で一つの単語が閃く。

「もしかして、幽体離脱?」

 月子先生は軽く頷きつつ「一般的にはそう呼ばれる現象だね」と頷いた。

 更に、月子先生は「説明が前後してしまうが、この地に招かれる一つの要素、それが一般的に『幽体離脱』と呼ばれる現象を引き起こした……つまり『球魂』を体から切り離せるかどうかが、この学校に転校してこれるかどうかの条件の一つということだ」と言う。

 私は思わず、なるほどと納得してしまった。

 ここで暮らす子供が『球魂』を切り離せるようになるのではなく、そもそも『球魂』を切り離せるからこの地で生活することになったのならば、とても合理的だと思う。

 だが、そうなると新たな疑問が生まれた。

「……それじゃあ、私は?」

 思わず発した疑問に、月子先生はわかりやすく体を震わせる。

 何もないとは言えないくらいの少し大袈裟な反応に、月子先生も苦笑を浮かべてから、どこか観念したような顔つきで「一つは教員免許を取得したからだね」と右手の人差し指を立てた。

 そこで動きを止めた月子先生をしばらく見詰めた後で、私は「次を……二つ目の理由を聞いてもいいですか?」と踏み込む。

 正直、状況やこれまでのことから、私の中にも一つの仮説があった。

 とはいえ、それはあくまで仮説にしか過ぎない。

 恐らく()()()()()()月子先生から聞かなければいけないと、私の中の何かが訴えていた。


 お互い口を開くことなく、視線を交わしたまま、しばらく、ようやく月子先生が動きを見せた。

「予測は立っているかもしれないが……君が私の本性を知ってしまったからだ」

 私は胸の内で『やっぱり』と思いながら、月子先生の言葉を待つ。

「君は覚えていないだろうが、君は私の催眠を踏み越えて、この体が子供のままであることを知った。だからこの緋馬織に招かれた」

 軽く唇を噛みながら視線を逸らした月子先生に、私は「それって後遺症とか大丈夫ですか?」と尋ねる。

 それに対して、月子先生は目を点にしてから、何度も目を瞬かせた。

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