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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
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拾伍之捌 効果検証

 自分のした行動とは言え、月子先生の想像通りに動いたのは、私の意思で、たまたまイメージと合致しただけだと説明するのは恥ずかしくて仕方なかった。

 けど、月子先生はその話を聞いて笑うこと無く、逆に、私の無意識に影響を与えるかもしれないという仮説を切り出す。

 私は自分がやらかしたとだけしか考えなかったのに対して、月子先生は別の可能性を考えていた。

 考えすぎとも思えるけど、それほどに月子先生が危機感を抱いているとも言える。

 その事に気付いた私は、震える声を自覚しながら「どうしたら……いいでしょうか?」と縋るように問い掛けた。

 月子先生はそんな私の肩に優しく手を乗せてから「まずは他の能力が使えるかどうかを確かめよう。可能性として、君が感じているように、君自身が()()()()可愛く反応しようと思ったこともあり得るわけだからね」と言う。

 直前までであれば、そんな月子先生の言葉に過剰反応してしまったかもしれなかったけど、私の心はかなりさめざめとしてしまっていて、ともかく「わかりました」と頷くことしか出来なかった。

 私の反応に、月子先生は「ふむ」と呟いた後、急に私の頭を胸に押し当てるようにして抱きしめる。

「へっ」

 思わず声を漏らした私の頭を抱き寄せたまま「大丈夫だ。私が考えすぎていただけの可能性の方が高い。不安にさせてしまって申し訳なかった」と月子先生はゆっくりとした温かな声で囁いた。

 月子先生の声と熱がじわじわと私の中に染み込んでくる。

 それだけで、私の中で張り詰めていた何かが緩むのがわかった。

 体のこわばりだけならよかったのだけど、緩んだのは涙腺もらしく、鼻がツンと痛くなってくる。

 反射的に、泣きたくないと思った私は「だ、大丈夫です。実験出来ます!」とバカみたいな大声を張り上げていた。

 ゆっくりと私の頭を抱いていた腕を振りほどいた瞬間の月子先生は、驚いた表情を浮かべていたが、それがすぐに苦笑に変わる。

 私はなんだか恥ずかしくて「さ、さっさと、実験しましょう!」とすぐに視線を逸らしてしまった。


「とりあえずは、君が具現化出来るかどうかを確かめるのが手っ取り早いだろうね」

 月子先生の発言に「私もそう思います」と頷きで応えた。

「基本的に君の能力全般を封印するイメージを込めてあるが、どの程度まで効果があるかは検証しなければならない……といったところで、現時点で君が具現化してしまえるなら、それは大問題だ」

 確認するような月子先生の言葉に改めて首肯したところで、私は「早速始めますね」と宣言する。

「頼んだよ」

 短くそういった月子先生に、もう一度頷いてから私は意識を集中挿せるために目を閉じた。

「あ、そうだな。今出現挿せた封印のブレスレットをもう一組頼むよ」

 一瞬、何を言われたのか理解出来なかったものの、すぐに具現化を試す際に浮かべるイメージだと気付いた私は、少し遅れはしたものの「了解しました」と返事をする。

 月子先生に言われるまで、具現化するものをイメージしていなかった自分の間抜けさに、少し呆れつつ、改めて頭の中に目標とするブレスレットのイメージを描いた。

 だが、というか、やはりというか、エネルギーが集まったり放出する気配は全く起こらない。

 当然ながら、目を閉じた後の黒一色の視界に私のイメージが浮かび上がることも、エネルギー球が出現することもなかった。

 そこからしばらく、頭の中で強く具現化を開始するように念じてみても、変化は起こらない。

「月子先生」

 報告と共に目を開けようとしたタイミングで、月子先生はそれを遮るように「次は記憶レコーダーを試して欲しい」と新たなオーダーを出した。

 またも、一瞬で遅れることになってしまったものの、私は開き欠けた瞼に力を込めて、改めて目を閉じると「了解ですっ!」と返して、再度集中を開始する。

 ブレスレットの時と同じく、やはり目標を記憶レコーダーに変えても、能力が発動する気配はなかった。


 リンリン様の二号機、アイガルの三号機、二体目のアルと具現化を目標を変えつつ、いくつか試したものの、いずれのケースでも能力が発動することはなかった。

 結果、具現化は封じられているということが確認出来たので、月子先生の指示で次に写ることになる。

「次は変化か、狐雨や狐火……」

 月子先生は顎を手で触れながら候補を口にした後で、私に視線を向けて「変化だね」と言い切った。

 保健室ということもあって、妥当だなと思った私は「わかりました」と頷いて、ベッドから降りる。

 ブレスレットの効果で能力が封じられているなら、ベッドに座ったままでもよかったのだけど、今現在封じられてると確認が取れたのは具現化だけなので、念には念を入れて、私自身や月子先生の安全も考え、立った状態が良いと判断した。

 ベッドの横には上履きがきちんと揃えられておいてあったので、私はベッドを降りつつそれらを履く。

 床に立ったところで、月子先生は「翼を出せるかい?」と聞いてきたので、私は「試してみます」と応え、軽く肩幅に足を開いてお腹に力を込めた。

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