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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾伍章 受容真意
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拾伍之陸 具現化

「今、君自身の『魅了』を減衰させるために腕に付けている火行の数珠だが、君に作ってほしいのは、。その上位互換。君の能力を『封印』する道具だ」

 月子先生のヒントの答えに、私は素直になるほどと思った。

 手首を指し示したことで腕時計と思ってしまったが、確かに、私の腕には雪子学校長から借りている数珠が付けられている。

 私がそう考えて視線を手首に向けると、月子先生は「アプリという手段は面白いが、着脱で簡単に切り替えられる方が、緊急時に対応しやすい筈だ」と理由を追加で語ってくれた。

「確かに」

 納得と共に私が頷くと、月子先生は「では早速君にイメージを送るから、具現化して欲しい」とすぐ行動を起こすように促してくる。

 それだけで、慌てなければいけないのだと察した私は「わかりました」と頷いた。

 月子先生は「形状は君に任せる。数珠でも良いし、バングルのようなものでも、ミサンガのようなものでも構わない……というか、ペンダントでもネックレスでもいい。ともかく身に付けておきやすいもの、寝ている時に外れないものが理想だ」と口早に言う。

 私は月子先生の言葉に頷きながら、ふと浮かんだアイデアを口にしてみた。

「えっと、腕に巻いたら、命令しないと外れないブレスレットにしたらどうでしょうか」

 こちらを見る月子先生とバッチリ視線が交わる。

 ややあって、突然月子先生は自分の頭を掻き出した。

 想像もしていなかった行動に、私は思わず「え? えぇ!?」と声を上げてしまう。

 一方、月子先生は「それはそうだ」と声を上げた。

「え!? それはそう?」

 全く意味がわからない私に、月子先生は頭を掻くのを辞め「君の具現化なら、腕から外れず、かといって血流を阻害しない。外し時は簡単に外れる。そんなものを出現させられてもおかしくなかった」と興奮気味に言う。

「状況に呑まれすぎていたらしい。これは恥ずかしいな」

 月子先生は興奮気味に言いながら苦笑を浮かべると、私の目に視線を合わせた。

「いいぞ、それで行こう。まずは能力を封じられるようにしよう!」

 勢いよく言葉を重ねられた私は、気圧されつつも「は、はい」とどうにか返事をする。

 満足そうに頷いた月子先生は「では、早速具現化してみてくれ」と私の肩に手を置いた。

 私が視線を置かれた手に置くと、月子先生は手を置いた理由の説明を科兼ねた問いを口にする。

「こうして触れていればイメージを送る条件は見たいしている……で、あっているかな?」

 月子先生が手を置いた理由に納得しつつ、私は「はい。そうですね」と頷いた。

 私の返答に笑顔で頷くと、月子先生は期待に満ちた目をこちらに向けて口を真一文字に結ぶ。

 目が行動の開始を促していると感じ取った私は「始めます」と伝えて目を閉じた。


 これまで具現化を繰り返してきたのもあって、目を閉じるだけで、スムーズに具現化の準備状態に移ることが出来た。

 両手足の甲から具現化に必要なエネルギーが出現するのを感じる。

 出現させるのは、多少自動で伸縮して、体にフィットするブレスレット、金属は重そうなイメージがあるので、プラスチックのような軟質な環状のものをイメージした。

 出現したエネルギーは散ることなく、球体を保っている。

 それは私のイメージでの具現化が問題ない証拠なので、月子先生のイメージを受け取る前に、両掌の間へと両手足の甲の上に出現したエネルギーの塊を移動させることにした。

 腕や足を抜け、掌の中に集まってくる感覚は鮮明だけど、これまでの積み重ねの成果か、痛みが発したり、維持するのが困難ということはない。

 一気に全ての光球を掌の間に集めひとまとめにすると、月子先生に「イメージを送ってください」と声を掛けた。

 月子先生は「う、うむ、任せなさい」と口にした後で、私の肩に乗せた手に力を込める。

 痛みを感じる程ではないものの、しっかりと手に力がこもったのを感じ取った私は、一応「イメージを送るのに手に力は込めなくて大丈夫ですよ」と伝えた。

「そうか、少し緊張……嫌、興奮していたかもしれない。申し訳ない」

 そう言って肩を握るようにしていた月子先生の手から力が抜ける。

 直後、私の両手の甲から新たなエネルギーの球体が出現した。

 エネルギー球が出現したことで、イメージの伝達が問題なく進んでいると確信した私は、月子先生に「イメージが無事伝わってきてるみたいです」と伝える。

 私の報告に「そうか、ならば、私はどうしたら良い?」と月子先生は声を弾ませて尋ねてきた。

 これからのことを少し考えてから、私は「イメージの送り込みは十分だと思うので、少し離れて私の様子に変なところがないか確認して、貰って良いですか?」とお願いしてみる。

「了解した」

 月子先生はそう言うなり私の肩から手を離した。

 目を閉じているので、状況を目撃しているわけじゃないけど、どうも月子先生は興奮から科動きが少し大雑把になっているらしく、離れて行くのが容易に感じ取れる。

 思わず噴き出しそうになるのを堪え、表情を必死に保っていると、少し離れたところから月子先生の声が聞こえてきた。

「よし、いつでも具現化を進めてくれて良いぞ!」

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