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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
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拾肆之弐拾陸 違い

 夕食後、結花ちゃんと舞花ちゃんには、一緒にいたいと粘られたものの、体に異常がないかの検査をしなければいけないと、雪子学校長が説得してくれたことで、私は別行動となった。

 保健室で、普通の学校にはあるはずない専門的な機器類の検査を受けた私は、そのまま保健室のベッドで横になって待つようにと言われ、少しうとうとし始めたところで、雪子学校長と月子先生が姿を見せる。

 目をこすって体を起こしたところで、クツクツと笑いながら歩み寄ってきた雪子学校長が「ご苦労様」と口にしながら、私の頭を手荒に撫でた。

「なかなか無い経験だっただろう?」

 月子先生も笑いながら言う。

 雪子学校長の手が離れたところで「確かに、普通は経験出来ないでしょうけどね」と精一杯の棘を込めて返すが、二人には効果はなさそうだった。

「それで、凛花君としてはどうするつもりなのかね?」

 私の対面に座りながら、雪子学校長はそう尋ねてくる。

 正確に答えた方が良いなと考えた私は「どう、とは?」と聞き返した。

「簡単に言えば、元の姿に戻るか、今の姿を継続するかということだね」

 雪子学校長の言葉に、私は敢えて「元の姿っていうのは?」と尋ねる。

「卯木凛花の姿、小学五年生の少女の姿だね」

 まあ、林田京一の姿では無いことは予測していたので、ほんの少し落胆はあるものの、次の質問に手早く進むことが出来た。

「もう一つの選択肢はこの姿のままということですよね」

「そうなるね」

 雪子学校長の頷きを見た上で、私は「この姿のままでいて問題は無いんですか?」と聞いてみる。

 すると、雪子学校長に代わって、月子先生が「先ほどまでの検査結果を基にした結論だが」と話を切り出した。

 視線を向けると、月子先生は話の続きを口にする。

「君のその姿は、雪姉の術とは原理が違うことが分かった」

「原理が……ですか?」

 聞き返した私に頷きつつ、月子先生は雪子学校長を振り返った。

「まず、雪子学校長の年齢変化は、実際に肉体が若返り、あるいは成長しているのに対して、君の年齢変化は君自身に変化は起きていない」

「変化が起きていない?」

 完全に身長は縮んでいるし、体自体もかなり軽くなっているのにという思いで返すと、月子先生には苦笑いをされてしまう。

 その反応から、早まったなと思ったところで、月子先生から追加の説明がなされた。

「もちろん見た目の話じゃ無く、内面的な話だよ。主に血液などの成分だね」

 月子先生の説明では、上手く理解出来ない。

 戸惑ってしまった私に対して、月子先生は「簡単に言うと、雪姉の変化の場合には成分に変化が起こるんだが、君の場合はそれが無い。逆説的になってしまうが、君の変化は雪姉と違い、肉体を内面から作り替えるのでは無いと考えられるわけだ」と言って笑んだ。

「なるほど……」

 私がゆっくりと頷くと、月子先生ははっきりとした口調で「というわけで、私の結論としては、すぐにでも元に戻った方が良いね」と言い切る。

 月子先生の結論になるほどと思っていた私だけど、時間の経過と共に、雪子学校長の問い掛けに疑問が湧いてきた。

 思わず興奮気味に「じゃあ、選択する必要無いんじゃ無いですか!」と雪子学校長に言ってしまったのは、揶揄われたと感じたからだったんだけど、本人にはその意図は無かったらしい。

 雪子先生は表情を変えずに「凛花君。私の能力なら、今の姿まで若返らせることが出来る……だから、どうするか聞いたんだよ」と落ち着いた口調で尋ねてきた。

 私としては何故そんな質問をするのかと思ったが、そこについては月子先生が言葉を添えてくれる。

「君も鏑木姉妹の燥ぎ様を見ただろう? 今回その姿になったのは事故のようなものだが、彼女らにとっては天恵のような出来事だっただろうと容易に想像が付く……まあ、花子や志緒君もそうかもしれないが……」

 月子先生は苦笑しながら後頭部を掻いて、一端底で言葉を止める。

 代わりに雪子学校長が「まあ、この隔離された環境で、子供達それぞれがストレスを感じている。君のその幼い姿は、少なくとも解消の一助になっているわけだから、君ならしばらくの間、自分では無く皆のために、その姿を継続する可能性もあるかなと思ってね」と続けた。

 私と雪子学校長の能力の違いも諸々含めた上で、質問の意図を理解した私は、だが、逆に結論が出せなくなってしまう。

 楽しそうな舞花ちゃんや結花ちゃんの姿を思い出すと、この姿でいてあげた方が良いのかとも思うけど、一方であまり依存させるのも良くないし、まあ、私自身も決して居心地が良いわけじゃ無いので、出来れば、幼くなる前の距離感に戻りたいところだ。

 とりあえずすぐに結論を出せそうになかったので、一端そこは保留することにする。

「月子先生、つまり、この姿のままでは負担が掛かるってことですよね?」

 私の問いは話の流れからはかなり飛躍していたと思うのだけど、月子先生は平然とした態度で「数値に出ているわけでは無いが、五年生相当がベースになっている君の体が、幼稚園児程度の体になっているんだから、長くその姿でいれば歪みが生じる可能性が高いだろうね」と的確な答えを返してきた。

 それを聞いた私は「それなら、まずは元の姿に戻ろうと思います」と意思を伝える。

 対して、月子先生は「それは良いが、まずは服を脱ぎたまえ、いくら君が小柄でも、小学生が幼稚園児の服を着たら、裂いてしまうと思うよ」と口にして、ニヤリと笑った。

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