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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
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拾肆之弐拾伍 お世話

「凛花君、随分とかわ……って、身長が縮んだようだね」

 いつもの月子先生なら確実に『可愛くなった』と言っていたのだろうけど、私の左右にがっちりと陣取って離れない舞花ちゃんと結花ちゃんを見て、無理に口にする言葉を変えたようだ。

 その上で、挨拶をしただけと言わんばかりのすまし態度で、そのまま距離を取って空いている……私たちから遠い席に着く。

 その一部始終を見ていた私に横に座る結花ちゃんから声が掛かった。

「どうしたの、凛花、月ちゃん先生が気になるの?」

「特に気になるわけじゃ無いよ」

 ふるふると頭を振って、別に気にしていないということを伝える。

 結花ちゃんは「凛華がそう言うならそうなのね」と私の答えに頷いた。

 ちなみに、私のことが呼び捨てになっているのは、舞花ちゃんと同列というか、同様に妹扱いになっているかららしい。

「凛花ちゃん! お姉ちゃんとばっかり離さないで、舞花とも話そう?」

 急に頬に手を当てられて、自分の方を向かせる舞花ちゃんに驚いたものの、どうにか「うん」と頷く事には成功した。

 見た目的には最年少の私の世話を焼くのが二人とも楽しいらしく、こうして夕食のために食堂にやってきても、私を挟み込んで陣取っている。

 あの志緒ちゃんや、花ちゃんが、先ほどの月子先生のように、私たちを遠巻きにしているくらいなので、双子の壁はかなり厚いみたいだ。


「待たせたね」

 最後に、食堂に姿を見せたのは雪子学校長だった。

 そのまま空いている席に着くことで、夕食が始まる。

「凛花は座って待ってなさい」

「舞……お姉ちゃん達が持ってきてあげるからね」

 食事の開始に伴っては以前が始まるのだけど、結花ちゃんと舞花ちゃんはそう宣言して席を立った。

 任せるのは忍びないので、自分でやりたいところだけど、今座っている食堂の椅子ですら今の私には高いので、降りたり移動したりが迷惑になるかも知れないと考えると、黙って座っているのが最良な気がする。

 というわけで、私は申し訳なく思いながらも、二人の帰りを待つことにした。


 食事が始まっても、二人からのお世話は止まらなかった。

 普段は箸なのだけど、スプーンやフォークを用意してくれたりと、とても甲斐甲斐しい。

 正直なところ、過剰だなとは感じるものの、雪子学校長や月子先生の目が付き合うようにと促していたのもあって、そのまま受け入れることにした。

 これまで最年少という立場だった二人、特に妹の舞花ちゃんはかなり張り切っている。

 そんな二人は、私に負担が掛からないように、お互いにお互いの行動を確認し合いながら行動してくれていて、私が本当の幼い女の子だったとしても、お世話を任せられそうだなと思えた。

 自分より幼い子の面倒を見ることで、精神的に急激に成長するという事例を学ぶことはあったものの、まさかこんな形で体験するとは思っていなかったので、学びの機会は意外なとこにあるなぁと思ったところで「凛花ちゃん」と舞花ちゃんから声を掛けられる。

 呼ばれて視線を向けると、そこには笑顔で左手にシチューの入った器、右手にそれを救った舞花ちゃんが待ち受けていて、思わず「は……い?」とぎこちない返事になってしまった。

 が、舞花ちゃんはそれに反応せず、笑顔のままで「あーん」と口を開けるのを強要してくる。

 流石にそこまではという思いが私の動きを完全停止させた。

 一方で、舞花ちゃんは「遠慮しないで、食べさせてあげる」とほんの少しスプーンを私の口に近づけてくる。

 助けを求めた方が良さそうだと、視線を巡らせれば、花ちゃんや志緒ちゃんはよくわからない情念の籠もったもの凄い目でこちらを見ているし、雪子学校長と東雲先輩は、敢えてこちらを見ないようにしているのか黙々と食事を続けていた。

 那美ちゃんと月子先生は面白そうにこちらを見ていて、結花ちゃんに至っては舞花ちゃんと同じくシチューの更をスプーンを準備し始めている。

 ほんの少し視線を巡らせただけで、逃げ場が無いことを察した私は大人しく口を開くことにした。

 流石に直視するのは照れくさかったので、目を閉じていると、口の中にゆっくりとスプーンが入れられる。

 スプーンが入ってきたと感じた直後、舌の上にとろりとしたシチューが落とされ、柔らかく優しい塩味と甘さが口の中で広がった。

 スッと、歯に触れること無くスプーンが引き抜かれる。

 口を閉じて少し味わってから飲み込むと、目の前には結花ちゃんのスプーンが待ち受けていた。

「はい、凛花」

 笑顔なのに、有無を言わせない空気を纏った結花ちゃんを前に、私は考えることを放棄して差し出されていたスプーンにかぶり付く。

 スープだけだった舞花ちゃんのスプーンと違って、にんじんが主張していた結花ちゃんのスプーンから、乗せられていたものが零れないように口を閉じたままで頭を引いて引き抜いた。

 口の中に残ったにんじんを咀嚼しいていると、舞花ちゃんが「にんじん食べれて偉いね!」と頭を撫でてくる。

 結花ちゃんはそんな舞花ちゃんの発言に大きく頷いて「そりゃそうよ。私たちの妹なんだから、偉いに決まっているわ」と胸を張った。

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