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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
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拾肆之弐拾参 宣言

「ちゃんと、思ったことが言えて偉いね、リンちゃん!」

 撫でられた理由はあっさりとわかったのだけど、舞花ちゃんは「あと、怖い想像をさせちゃってごめんね。大丈夫だからね!」と言って、今度は抱きしめてくた。

「あの……」

 抱き付かなくてもいいと伝えようと思ったのに、舞花ちゃんの体温と体を包み込むように回された腕の感触は、ホッと気持ちを緩ませるだけの魔力があって、私は声に出すのを辞めてしまう。

 私の勝手で言葉を止めたので、言い掛けで途切れてしまう形になってしまっている舞花ちゃんは、そこが引っかかったらしく、抱きしめていた腕を軽く解いて「どうしたの、リンちゃん? お姉ちゃんに言ってごらん」と笑みを浮かべた。

 完全にお姉ちゃん風を吹かせている舞花ちゃんの気持ちを考えると、抱き付くのをやめて欲しいというのは駄目な気がするので、懸命に問題の起こらなさそうな返答を考える。

 だが、問題が起きない答えと思えば思う程、考える時間が長くなってしまった。

 私からの返答が無いことで、舞花ちゃんの笑顔に曇りが出始めてしまう。

「えっと……凛花が嫌なことを言ったから、舞花ちゃ……舞花お姉ちゃんが嫌な思いしてないかと思って!」

 どうにか返答を絞り出した直後、私の視界は黒一色で埋まった。

 視界が黒一色になってしまったので、推測でしか無いけど、体から感じる感覚から考えて、舞花ちゃんが先ほどよりも強く私を抱きしめて、顔が光が漏れ込まない程、密着してしまったのだろう。

 そう状況を予測したところで頭の上から降り注ぐような舞花ちゃんの声が聞こえてきた。

「もう、リンちゃん良い子だ!」

 直後、頭に、撫でるのと似て非なる感覚が走る。

 指の感触ではなく、柔らかなボールが触れる感覚が何か考えていると、ふわふわとシャンプーの香りが、筆が当たるような感覚と共に伝わってきた。

 底からの連想は一瞬で、舞花ちゃんが私の頭に頬ずりをしているのだろうイメージが頭に浮かぶ。

 完全に、愛玩動物扱いになってしまったことに苦笑しながら、お姉ちゃん体験を楽しんでいる舞花ちゃんに付き合おうと決めて、解放の時を大人しく待つことにした。


「リンちゃん、ごめんね」

 舞花ちゃんがショックを受けた表情で謝って来たのは、単純に小さな子を抱きしめて頬ずりは危険だと花ちゃんと志緒ちゃんから指摘されたからだ。

 相手が私なら構わないけど、同じ調子で実際の幼い子に対応してしまったら確かに危ないので「わた……凛花は危なかったら、自分でアピール出来ますけど、小さい子だと泣き出せれば良いですが、ビックリしてしまって動けなくなってしまうこともあると思うので、気をつけてくださいね」と、皆から注意を受けた後でもあるので、少し可愛そうかなと思いながらも、釘だけは刺しておく。

 舞花ちゃんも「そうだね。可愛いって思いだけで、傷つけちゃうなんて、絶対ダメだもんね」と真面目な表情で頷いてくれた。

 思わず頭を撫でたくなって手を伸ばしたのだけど、今の私の体では、舞花ちゃんの頭ははるか上で、どうにか伸ばしても耳に触れられるかどうかまでしか届かない。

 そんな私の行動を見て、思惑を察したのであろう花ちゃんが、ニヤリと笑った。

 もの凄い嫌な予感がしたのだけど、止める間もなく花ちゃんは舞花ちゃんの耳に何事か囁く。

 対して、花ちゃんを振り返って首を傾げた舞花ちゃんが、首を傾げたままで私の前でしゃがんだ。

 結果、舞花ちゃんの頭に手が届く状況になったので、ここは花ちゃんのお膳立てに乗っておくことにする。

「舞花お姉ちゃん。ちゃんと反省出来て、謝れて凄く偉いですよ!」

 そう言って頭を撫でると、舞花ちゃんは最初目を丸くして、次に頬を赤らめて、最後に照れたようにはにかんだ。

 それから私を見て「舞花、お姉ちゃんだからね」と得意げに言う。

 ここで、今だけとか、余計な水を差すのは無粋なので、私はただ「そうですね。流石です」と同意して頷いた。

 それがよっぽど嬉しかったのか、舞花ちゃんはバッと手を広げて、私に抱き付く姿勢を取る。

 全く学習してないと思った私だけど、舞花ちゃんは底で踏み止まった。

 プルプルと震える腕を降ろしながら、少し震える声で「ほ、ほら、ね?」と言う。

 私は舞花ちゃんの頑張りに噴き出しそうになるのを堪えて、さっき不気味な笑みを浮かべてこちらを見た花ちゃんを見た。

 自分に視線が向いた理由がわからなかったのか、不思議そうな顔をする花ちゃんに向けて、私は悪戯を仕掛ける。

「少なくとも、舞花お姉ちゃんの方が、花お姉ちゃんより止まれるのは間違いないね!」

 私のセリフに、花ちゃんがあんぐりと口を開けて「なっ」と声を漏らした。

 直後、その一連を見ていた舞花ちゃんが大きな声で笑い出す。

 私もその雰囲気につられて笑ってしまった。


「もう、リンちゃん、私をオチに使うなんて酷いですよ」

 花ちゃんが唇を突き出して不満を言ってきた。

 それが冗談を多分に含んだ言葉だと感じ取った私は「舞花お姉ちゃんの方が、お姉ちゃんとしてお手本になりますね」と悪ノリしてみる。

「え~~、リンちゃんが酷いー」

 普段と違う砕けた口調で合わせてくれた花ちゃんだったけど、一方の舞花ちゃんは無反応だった。

 どうしたんだろうと様子を見てみると、舞花ちゃんはもじもじと自分の左右の指を突き合わせて動かした後で、その手を解いて気をつけの姿勢を取る。

「舞花、コレからもリンちゃんのお手本になるように、いいお姉ちゃんになるからね!」

 力のこもった舞花ちゃんの宣言に、私は勢いに飲まれ「うん」と頷くことしか出来なかった。

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