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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
535/814

拾肆之拾玖 理由

「舞花お姉ちゃん」

 二人が出て行ってしまったので、苦笑しながら振り返ると、舞花ちゃんはもの凄き愛のは言った表情で「リンちゃんは舞花が……舞花お姉ちゃんが護ってあげるから、安心してね!」と胸を叩いた。

「う、うん……ありがとう」

 込められた気合に、気圧されつつも、どうにか頷く。

 正直何から護るのかと普段ならツッコんでいたところだけど、敢えて、盛り上がっているのに水を差す必要も無いかと思って足下に視線を向けた。

 足には少しぶかぶかになってしまったブーツが揺れている。

「舞花お姉ちゃん、ブーツを脱いだらダメかな?」

 相談を受けるとは思ってなかったからか、舞花ちゃんを「え? うん?」と戸惑わせてしまったようだ。

 とはいえ、ボールを投げてしまった以上、こちらからは動かずに、舞花ちゃんの反応を待つ。

 多少の混乱はあったようだけど、舞花ちゃんはそれでもちゃんと一人で結論を出したようで「裸足で歩かないなら良いよ」と条件付きの許可をくれた。

「わかりました。約束します」

 そう返すと、頭にポンと舞花ちゃんの手が置かれる。

「ちゃんとわかってくれるなんて、リンちゃんは偉いね!」

 舞花ちゃんはそう言いながら頭の上に置いた手を動かして私の頭をなで始めた。

 お姉さんぶりたい舞花ちゃんの行動に、ほんわかと胸が温かい気持ちになるのを感じつつ、されるがまま実を任せる。

 正直、流れに身を任せようと思っていたので、何でも受け入れるつもりだったんだけど、舞花ちゃんの「それじゃ、舞花お姉ちゃんが手伝ってあげるね!」という宣言には、一瞬どうしようかと思ってしまった。


「じゃあ、右足からね」

 喜々として私の右足のブーツに手を掛けた舞花ちゃんがせめて作業をしやすいようにと、足からつま先が一直線になるように、甲を伸ばした。、

 元々、それなりの余裕があったので、スポット勢いよくブーツが脱げる。

 右尼次いであっさり左も脱がしてくれた舞花ちゃんに「ありがとう、舞花お姉ちゃん」と感謝の言葉を伝えた。

 それだけで、本当に心から嬉しそうな表情を見せる舞花ちゃんは、やはりずっと妹ポジションだったことに、思うところがあったのだろう。

 決して嫌だというわけでは無いけど、自分も構ってみたいという願望は、精神的に成長の早い女の子なら当然の事だ。

 決して望んだわけでも、想定したわけでも無いけど、擬似的にでも舞花ちゃんに体験させられるなら、今の状況に甘んじるのも悪くないと思う。

 まあ、そう思っていないと私の精神的な安定が損なわれかねないというのも多分にあるわけだけど、今は那美ちゃんがいないので、気ままに頭の中ではいろいろと考えて気を紛らせておこうと思った。


「「リンちゃん、ただいまっ!」」

 志緒ちゃんと花ちゃんの声が重なり、直後、二人がそれぞれ段ボール箱を抱えて教室に飛び込んできた。

 その様子に、舞花ちゃんが呆れた様子で「しーちゃん、花ちゃん」と二人の名前を呼ぶ。

「なに? マイちゃん」

「どうかしましたか?」

 首を傾げる志緒ちゃんと花ちゃんのコンビに、私は悪戯心に背中を押されて「廊下を走るのは良くないんじゃないかなー」と振ってみた。

 すると舞花ちゃんが「一番小さなリンちゃんがわかってるのに、しーちゃんも花ちゃんも、お姉さんとしての自覚が足りないんじゃ無いの?」と言い放つ。

 完全な正論だけに、顔を見合わせた志緒ちゃんと花ちゃんは、二人揃って謝った。

 まあ、既に一番年下扱いになっている点については、流すことにする。

 舞花ちゃんも、滅多にないお姉さん振る機会だし、納得しているので別に気持ちもざわつくことは無かった。


「なんで、こんな衣装があるんですか?」

 水色のエプロンドレスを花ちゃん、志緒ちゃん、舞花ちゃんの三人掛かりで着せ付けられながらそう尋ねてみた。

 私の今の体にはピッタリと合ってはいるけど、流石に用意周到すぎると思う。

 すると、花ちゃんが「まあ、体の時間を巻き戻すのはとても繊細な能力だから、子供だとほんの数ヶ月のズレでも大きくなるからね」と説明してくれた。

 とはいえ、幼児サイズの服がある理由はともかく、なんで有名な英国の小説の主人公が着そうな衣装があるのかの説明にはなっていない。

 なので、そこを突いてみると、今度は志緒ちゃんが「リンちゃんは鋭いな~」と苦笑した。

「半分は私の趣味」

 そう告白したのは志緒ちゃんである。

「趣味ですか?」

「うん……で、もう半分は将来のためかな」

 志緒ちゃんはそう言って頷き「私はいろんなキャラクターの衣装を作りたいなって思ってて、その練習というか、実践を兼ねて作っているんだよ」と口にした。

 なるほどと思わなくは無いけど、それじゃあ、サイズの説明が出来ていない。

 私がそう考えたのを的確に読み取ったのであろう花ちゃんが「それじゃあ納得しないみたいよ、リンちゃん」と志緒ちゃんの肩を叩いた。

 バツの悪そうな顔をした志緒ちゃんに変わり花ちゃんが「実は」と切り出す。

「志緒ちゃんは、いろんな事情で、家族と暮らせない子供達に、贈ってるの。ハロウィン衣装としてね」

 花ちゃんの話を聞いた瞬間、私は気付くと「スゴイ」と呟いていた。

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